モンゴルだるま@モンゴルよろずコーディネータ―兼業遊牧民です。
1年の半分くらいは草原で家畜の世話をしながら乗馬ガイドをやるゲル暮らし。
1年の1/4くらいはモンゴルのどこかでプロジェクトのコーディネーターや通訳をやる旅暮らし。
そして残りが、ウランバートルにて、モンゴルにエコツアーや自分らしくのびのび生きるためのワークショップをやったり、野望や事業計画を練ったり、モンゴル語の通訳・翻訳やモンゴル情報提供などに費やすという、ノマドワーカーです。
モンゴルで旅と取材のコーディネート会社を起業して14年、家畜を飼いながらのゲル暮らしを初めて6年がたちました。
今、7回目の越冬にチャレンジ中。
今冬は寒さ厳しくゾドになる可能性が高い(申年は例年、ゾドになる傾向と言われています)ということで、馬はヘンティーの森と草原の豊かな地域に移動させました。
羊・山羊・牛はただいまテレルジの奥の秋営地にいます。
大分寒くなってきたので、今週末くらいに冬営地へのお引越しの準備を始める予定。
ゾドになって家畜被害が出る前に、屠畜して、肉や毛皮にして現金化、つまりは利益確定をしよう、と考える遊牧民さん達が、今年の7月のナーダム時期くらいから、大量に家畜を売却しているため、只今、肉の買い取り値段が急落中。
あまりに安くなりすぎているので、私たちも当初は、心を鬼にして「利益確定」作業に取り組むつもりだったのですが、生まれた頃から自分たちの手で育て、厳しい冬や出産の春を必死で乗り越えてきた家族ともいえる家畜たちを、二束三文で売るのはしのびない、という気持ちになってしまいました。
なので、越冬準備費を第一優先事項として資金繰りをする覚悟です。
さて、朝晩の冷え込みが―10℃前後になる日が続いてくると、
草原暮らしの私たちにとっての悩みは「家畜泥棒」です。
ウランバートル近郊で、近くに屠畜場がたくさんあるという地理的条件。
さらに、カザフ族、ドゥルブド族、ハルハ族、バヤド族など、様々な部族が混在しているため、自分たちと違う部族からの窃盗に対する罪の意識が薄い人たちも多いのが困り者。
先週、ウランバートルから家畜泥棒・サギ事件担当刑事・交通警察などの家畜盗難被害対策チームがゴルドックまで来まして、地元遊牧民さん対象に集会を開いてました。
行政説明とか住民会議とか保護者会といったイベント参加に積極的なガナー君(私の大切だけどちょっと情緒不安定なパートナー)は、もちろん張り切って参加してました。
数十人の警察関係者の対策チームに対し、出席した遊牧民さんは20人足らず。
家畜盗難被害届をだしていたご近所さん達は出席しておらず。
家畜窃盗団が見事に家族親戚で組織化されているのに対し、
マジメに家畜を飼ってる遊牧民たちはいかんせん人手不足。
家畜盗難対策の話を聞きに、町に出てきている間に、
主なく草原に放たれている家畜が盗まれる、という可能性大。
なんだかんだいっても「人は力」なのです。
モンゴル人の遊牧離れの要因には、ひとつには都市集中型の経済システムがあるけれど、
それ以外に「人手不足」という核家族化故の遊牧体制弱体化という現実があります。
悪者たちは、他人の肥えた家畜を盗んだら、すぐに屠畜して、肉や毛皮として売りさばいてしまうので、世話をする必要がない=身軽である。
私たち庶民は、どんな痩せ衰えた家畜でも、なんとか生かそうとつきっきりの看病や世話をしたり、家周りの修繕作業とか越冬準備とか、いろいろ忙しく働かなければいけないから、ついつい放牧中の家畜まで目配りができなくなってしまう。
そして、秋の家畜は、栄養価の高い草をもとめて、あっちふらふらこっちふらふら。
夜中になっても帰ってこないことも多々あるのです。
そして、「どこに行ったか」は神のみぞ知る、というリバティ状態。
だからこそ、地域住民が力を合わせて、見回りを強化し、家畜泥棒をさせる隙を見せないことが大事である、というのが警察組織のみなさんの説明。
地元有志でグループを作り、家畜を守るための見張り当番制を作りましょう、という提案です。
この会合出席者のなかで若手(といってもすでに40歳)のガナー君が、なんと「ボランティアパトロール長」に任命されたと、鼻息荒く帰ってまいりました。
「ボランティアパトロール長」なるものは、何をするのか、といえば、家畜盗難対策として、夜間放牧の際には近隣世帯をとりまとめて、見張り当番をつける、随時、ご近所さんの家畜盗難被害の有無・状況などをリサーチする、盗難被害が発覚したら、その情報をまとめて警察に通報し、捜査・捜索に協力する、んだそうです。
その役割を聞いたとき、私はすかさず「うっわー。めんどくせー」と思ってしまったのですが、「任命」されたり、「頼られたり」するのが大好きなガナー君は、もう得意顔。
家畜被害にあっても「犯人特定」が難しい。
みなさん大体「あいつが犯人」っていうのはわかってるけれど、証拠がないから警察に訴えることもできず、警察に通報・被害届を提出しに行ってる間に、さらなる盗難被害にあったりする恐れもあるから、泣き寝入りということも多いのです。
だから、家畜盗難・横領被害を受けながら、警察沙汰にしたうえで、全犯行を認めさせ、弁償させたという「実績」があるガナー君が任命されたことは、地元の牧民爺さん連中にとっては、納得の人選(PTAの委員選出と一緒。無償でそんなめんどくさい仕事やりたくない人ばかり)だったようです。
正義感の塊みたいなところがあって、理屈っぽく、かなりしつこく追及するタイプのガナー君は確かに刑事さんとか捜査官とか向いてるかも。
ただ、会議の流れを逐一説明するガナー君の話をきいていると、警察としては、自分たちが人員さいて捜査するのも捜索するのもめんどくさいから、地元の人間同士でなんとか調整つけろよ、ってことなんじゃないかなぁ・・・
とはいえ、なんだかんだと今の場所で遊牧暮らしを始めて5年目、ようやく地元に溶け込んだ感じがしてきましたよ。
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1年の半分くらいは草原で家畜の世話をしながら乗馬ガイドをやるゲル暮らし。
1年の1/4くらいはモンゴルのどこかでプロジェクトのコーディネーターや通訳をやる旅暮らし。
そして残りが、ウランバートルにて、モンゴルにエコツアーや自分らしくのびのび生きるためのワークショップをやったり、野望や事業計画を練ったり、モンゴル語の通訳・翻訳やモンゴル情報提供などに費やすという、ノマドワーカーです。
モンゴルで旅と取材のコーディネート会社を起業して14年、家畜を飼いながらのゲル暮らしを初めて6年がたちました。
今、7回目の越冬にチャレンジ中。
今冬は寒さ厳しくゾドになる可能性が高い(申年は例年、ゾドになる傾向と言われています)ということで、馬はヘンティーの森と草原の豊かな地域に移動させました。
羊・山羊・牛はただいまテレルジの奥の秋営地にいます。
大分寒くなってきたので、今週末くらいに冬営地へのお引越しの準備を始める予定。
ゾドになって家畜被害が出る前に、屠畜して、肉や毛皮にして現金化、つまりは利益確定をしよう、と考える遊牧民さん達が、今年の7月のナーダム時期くらいから、大量に家畜を売却しているため、只今、肉の買い取り値段が急落中。
あまりに安くなりすぎているので、私たちも当初は、心を鬼にして「利益確定」作業に取り組むつもりだったのですが、生まれた頃から自分たちの手で育て、厳しい冬や出産の春を必死で乗り越えてきた家族ともいえる家畜たちを、二束三文で売るのはしのびない、という気持ちになってしまいました。
なので、越冬準備費を第一優先事項として資金繰りをする覚悟です。
さて、朝晩の冷え込みが―10℃前後になる日が続いてくると、
草原暮らしの私たちにとっての悩みは「家畜泥棒」です。
ウランバートル近郊で、近くに屠畜場がたくさんあるという地理的条件。
さらに、カザフ族、ドゥルブド族、ハルハ族、バヤド族など、様々な部族が混在しているため、自分たちと違う部族からの窃盗に対する罪の意識が薄い人たちも多いのが困り者。
先週、ウランバートルから家畜泥棒・サギ事件担当刑事・交通警察などの家畜盗難被害対策チームがゴルドックまで来まして、地元遊牧民さん対象に集会を開いてました。
行政説明とか住民会議とか保護者会といったイベント参加に積極的なガナー君(私の大切だけどちょっと情緒不安定なパートナー)は、もちろん張り切って参加してました。
数十人の警察関係者の対策チームに対し、出席した遊牧民さんは20人足らず。
家畜盗難被害届をだしていたご近所さん達は出席しておらず。
家畜窃盗団が見事に家族親戚で組織化されているのに対し、
マジメに家畜を飼ってる遊牧民たちはいかんせん人手不足。
家畜盗難対策の話を聞きに、町に出てきている間に、
主なく草原に放たれている家畜が盗まれる、という可能性大。
なんだかんだいっても「人は力」なのです。
モンゴル人の遊牧離れの要因には、ひとつには都市集中型の経済システムがあるけれど、
それ以外に「人手不足」という核家族化故の遊牧体制弱体化という現実があります。
悪者たちは、他人の肥えた家畜を盗んだら、すぐに屠畜して、肉や毛皮として売りさばいてしまうので、世話をする必要がない=身軽である。
私たち庶民は、どんな痩せ衰えた家畜でも、なんとか生かそうとつきっきりの看病や世話をしたり、家周りの修繕作業とか越冬準備とか、いろいろ忙しく働かなければいけないから、ついつい放牧中の家畜まで目配りができなくなってしまう。
そして、秋の家畜は、栄養価の高い草をもとめて、あっちふらふらこっちふらふら。
夜中になっても帰ってこないことも多々あるのです。
そして、「どこに行ったか」は神のみぞ知る、というリバティ状態。
だからこそ、地域住民が力を合わせて、見回りを強化し、家畜泥棒をさせる隙を見せないことが大事である、というのが警察組織のみなさんの説明。
地元有志でグループを作り、家畜を守るための見張り当番制を作りましょう、という提案です。
この会合出席者のなかで若手(といってもすでに40歳)のガナー君が、なんと「ボランティアパトロール長」に任命されたと、鼻息荒く帰ってまいりました。
「ボランティアパトロール長」なるものは、何をするのか、といえば、家畜盗難対策として、夜間放牧の際には近隣世帯をとりまとめて、見張り当番をつける、随時、ご近所さんの家畜盗難被害の有無・状況などをリサーチする、盗難被害が発覚したら、その情報をまとめて警察に通報し、捜査・捜索に協力する、んだそうです。
その役割を聞いたとき、私はすかさず「うっわー。めんどくせー」と思ってしまったのですが、「任命」されたり、「頼られたり」するのが大好きなガナー君は、もう得意顔。
家畜被害にあっても「犯人特定」が難しい。
みなさん大体「あいつが犯人」っていうのはわかってるけれど、証拠がないから警察に訴えることもできず、警察に通報・被害届を提出しに行ってる間に、さらなる盗難被害にあったりする恐れもあるから、泣き寝入りということも多いのです。
だから、家畜盗難・横領被害を受けながら、警察沙汰にしたうえで、全犯行を認めさせ、弁償させたという「実績」があるガナー君が任命されたことは、地元の牧民爺さん連中にとっては、納得の人選(PTAの委員選出と一緒。無償でそんなめんどくさい仕事やりたくない人ばかり)だったようです。
正義感の塊みたいなところがあって、理屈っぽく、かなりしつこく追及するタイプのガナー君は確かに刑事さんとか捜査官とか向いてるかも。
ただ、会議の流れを逐一説明するガナー君の話をきいていると、警察としては、自分たちが人員さいて捜査するのも捜索するのもめんどくさいから、地元の人間同士でなんとか調整つけろよ、ってことなんじゃないかなぁ・・・
とはいえ、なんだかんだと今の場所で遊牧暮らしを始めて5年目、ようやく地元に溶け込んだ感じがしてきましたよ。
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いただいたお客様の個人情報の保護は、最大限の注意を持って管理をいたします。当サービス運営上に必要なご連絡・ご案内の際に利用いたします。
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