モンゴルだるま@モンゴル語通訳・エコツアーガイド&オペレーター兼業遊牧民です。
旅行だけでなく取材やODA・学術調査等のプロジェクトコーディネートも得意です。
さて、連載物にしてみたものの、次から次へと押し寄せる「日々の用事」と「ブログネタ」にかまけてすっかり怠けているうちに、今週も半分過ぎちゃいました。
ごめんなさい。
小出しにしながら継続することにします。

にほんブログ村弟「兄ちゃん、再開らしいよ」兄「どうせ、今日も「続く」で終わりだよ。」ポチッとな!
書いてた本人も忘れちゃってた前回記事はコチラ「今シーズン最後の狩りに行く その1」
さて、前回のおさらい。
雪解け・ツララの崩落などウランバートルはすっかり春の気配。
ドライバーのガナー君はこの冬最後の狩りをするために草原に行くことに。
深夜、「お前は連れてかない」と意地悪メールをよこしたものの、燃料代を捻出するため、夜明け前の私の寝込みを襲いに来た。
伝統的な巻き狩りをするため、狩猟仲間でもある近所の軍隊の将校さんを誘うと、なんと10名以上の兵隊さんが集まった。ぎゅうぎゅうづめでジープで移動。
ベースキャンプの冬営地に無事到着。
そして、今シーズン最後の狩りが始まる・・・
スタートが早かったことと、ベースキャンプでいつもあったかく迎えてくれる遊牧民の若奥さんが不在であるため、ゲルのなかはむっちゃ寒い。
お茶もぬるくて、オラーナ君が一人ぼっちで1人で朝起きてからつけたのであろうわずかな薪で暖をとったストーブの残り火は消えかかっていました。
草原の暮らしで、朝1番に起きるのは、女性の役目。
外気温とほとんど変わらなくなっている屋内を温めるのは、モーニングティーを作るために焚くストーブです。
オラーナ君、どうやら、ご近所さんのところで朝のお茶をお呼ばれしていたみたい。
羊とヤギは放牧に出る前で、家畜小屋の中にぎゅうぎゅう詰めでした。
「家畜の世話があるから、今日は一緒にはいけないよ」とオラーナ君は、わりとあっさり狩猟部隊を見送りました。
それから、子羊たちを家畜小屋に残しながら、羊とヤギを小屋から追い出す作業。
右往左往する羊やヤギがまきあげる土埃にむせ返る、毎朝のお仕事であります。
子羊に心を残していた母羊たちを追い立てていくと、ある程度まで小屋から離れると、今度は、空腹を感じ始めるのか、急に、足取り軽く放牧地へと向かっていきます。
オラーナ君のところに馬に乗ったお客さんが来ました。
近所に住んでいる遊牧民のバターさんです。
バターさんところは、一山超えたところにベースキャンプがあるのですが、この冬はとにかくオオカミに家畜を襲われることが多く、10頭余りの馬を失っています。
10頭余りの馬といえば、ひと財産です。夜に放牧する馬を狙うオオカミの群は、ほんとにバターさんのところの馬群をターゲットにしぼったかのように、オオカミ被害のほとんどを彼が引き受けてくれた形になっていますが、「ほかにやることないからさ」と落ち込んだ様子も見せずにたんたんとしたものです。
3月4日の日曜日。雪がずいぶん融けてきたということで、大型家畜がメインのバターさんは、春営地への引っ越しを決めたので、引っ越しの手伝いを頼みに来たのでした。
年に2-4回(あるいはそれ以上)の引っ越しを繰り返す遊牧生活では、お互いに引っ越しの手伝いを協力しあうのです。
オラーナ君は、街の病院にいった奥さんがいつ戻ってくるかわからないため、「家を離れるわけにはいかないよ。申し訳ないけど、今回は手伝いにいけないや」と断っていました。
「しょうがねーなー」といった感じで、バターさんは帰っていきました。
1時間ぐらいしたところで見慣れぬ牛の群が現れました。
遊牧民は、自分たちの家畜だけでなく、ご近所さんの家畜、まったくよそ者の家畜などを認識しています。
1日中、放牧に人がつきっきりになるのは、家畜の出産期ぐらいで、時々、見回りする、といった感じなので、お互いに自分の家畜がどこにいるかの情報交換をするためです。
群がだんだん近づいてきました。
牛、羊・山羊・馬が小さくまとまった群です。
日帰り乗馬で時々手伝ってくれるバギおじさんが見えてきました。
バターさんの家畜の引っ越しをお手伝いしているのです。
家畜は山を越えられますが、ゲルや家財道具を積んだトラックは山を迂回する平地ルートを通ります。
モンゴルのしきたりで、移動するときは、必ずゲルの前を通過します。
そして、一言、二言、その地の人と言葉を交わしてから立ち去るのが礼儀です。
オラーナ君のご近所さんは、3年前のゾド(2009年から2010年にかけての寒波と大雪が続いて観測調査史上最悪の家畜被害となった)のあとに、ゴビアルタイというモンゴル国の西南端から移動してきた家族と、地元のカザフ人一家とです。
小型家畜がいるのは、我が家だけなので、残りの2軒は、数日前から、「そろそろ引っ越そう」と話始めていました。
オラーナ君も、3月10日過ぎたら、夏営地の近くに引っ越そう、と持ちかけてきました。
雪解けが思っていたよりも早くて、3本の谷筋が合わさったあたりに拠点がある私たちの冬営地は、雪解け水の洪水で家畜小屋やゲルが浸水する可能性があるというのです。
牛や馬のように大型家畜だけならば、引っ越しも大したことがありません。
そして私たち3軒は、今年の冬は一緒に越冬しましたが、その後はバラバラのベースキャンプに別れていきます。
いつ、どのような形で引っ越すかは、それぞれの家庭の問題です。
我が家の羊の出産は、予定外の種付け事件が起きてしまったため、ほぼ終わっています。
でも、そろそろ山羊の出産が始まるということで、臨月になったメス山羊が、山の斜面での放牧を嫌がるようになってきています。
春の吹雪がない、って確実な予報をきいてからでないと、移動中に山羊の出産が多発したら大変です。
羊に比べて、山羊は、カシミアもっこもこのわりに寒さや風に弱いので、引っ越し時期は慎重に選ばないといけません。ぐずぐずしていると、雪解けの洪水が始まってしまいます。
オラーナ君が狩猟に行かなかったのは、この辺の引っ越しにかかる費用や時期の相談を私とする、という目的と、奥さんがいつ戻ってくるのかを携帯電話の電波圏内にいたいということなども要因だったようです。
それに、友人の引っ越しを手伝わずに狩りに行った、なんて噂が広まったら、自分たちの引っ越しの時の手伝いも頼みづらくなりますもん。
まぁ、そんなこんなで、午前中もベースキャンプではいろいろやることが多いのでした。
なんだか長い一日になりそうです。
<つづく>

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旅行だけでなく取材やODA・学術調査等のプロジェクトコーディネートも得意です。
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ごめんなさい。
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さて、前回のおさらい。
雪解け・ツララの崩落などウランバートルはすっかり春の気配。
ドライバーのガナー君はこの冬最後の狩りをするために草原に行くことに。
深夜、「お前は連れてかない」と意地悪メールをよこしたものの、燃料代を捻出するため、夜明け前の私の寝込みを襲いに来た。
伝統的な巻き狩りをするため、狩猟仲間でもある近所の軍隊の将校さんを誘うと、なんと10名以上の兵隊さんが集まった。ぎゅうぎゅうづめでジープで移動。
ベースキャンプの冬営地に無事到着。
そして、今シーズン最後の狩りが始まる・・・
スタートが早かったことと、ベースキャンプでいつもあったかく迎えてくれる遊牧民の若奥さんが不在であるため、ゲルのなかはむっちゃ寒い。
お茶もぬるくて、オラーナ君が一人ぼっちで1人で朝起きてからつけたのであろうわずかな薪で暖をとったストーブの残り火は消えかかっていました。
草原の暮らしで、朝1番に起きるのは、女性の役目。
外気温とほとんど変わらなくなっている屋内を温めるのは、モーニングティーを作るために焚くストーブです。
オラーナ君、どうやら、ご近所さんのところで朝のお茶をお呼ばれしていたみたい。
羊とヤギは放牧に出る前で、家畜小屋の中にぎゅうぎゅう詰めでした。
「家畜の世話があるから、今日は一緒にはいけないよ」とオラーナ君は、わりとあっさり狩猟部隊を見送りました。
それから、子羊たちを家畜小屋に残しながら、羊とヤギを小屋から追い出す作業。
右往左往する羊やヤギがまきあげる土埃にむせ返る、毎朝のお仕事であります。
子羊に心を残していた母羊たちを追い立てていくと、ある程度まで小屋から離れると、今度は、空腹を感じ始めるのか、急に、足取り軽く放牧地へと向かっていきます。
オラーナ君のところに馬に乗ったお客さんが来ました。
近所に住んでいる遊牧民のバターさんです。
バターさんところは、一山超えたところにベースキャンプがあるのですが、この冬はとにかくオオカミに家畜を襲われることが多く、10頭余りの馬を失っています。
10頭余りの馬といえば、ひと財産です。夜に放牧する馬を狙うオオカミの群は、ほんとにバターさんのところの馬群をターゲットにしぼったかのように、オオカミ被害のほとんどを彼が引き受けてくれた形になっていますが、「ほかにやることないからさ」と落ち込んだ様子も見せずにたんたんとしたものです。
3月4日の日曜日。雪がずいぶん融けてきたということで、大型家畜がメインのバターさんは、春営地への引っ越しを決めたので、引っ越しの手伝いを頼みに来たのでした。
年に2-4回(あるいはそれ以上)の引っ越しを繰り返す遊牧生活では、お互いに引っ越しの手伝いを協力しあうのです。
オラーナ君は、街の病院にいった奥さんがいつ戻ってくるかわからないため、「家を離れるわけにはいかないよ。申し訳ないけど、今回は手伝いにいけないや」と断っていました。
「しょうがねーなー」といった感じで、バターさんは帰っていきました。
1時間ぐらいしたところで見慣れぬ牛の群が現れました。
遊牧民は、自分たちの家畜だけでなく、ご近所さんの家畜、まったくよそ者の家畜などを認識しています。
1日中、放牧に人がつきっきりになるのは、家畜の出産期ぐらいで、時々、見回りする、といった感じなので、お互いに自分の家畜がどこにいるかの情報交換をするためです。
群がだんだん近づいてきました。
牛、羊・山羊・馬が小さくまとまった群です。
日帰り乗馬で時々手伝ってくれるバギおじさんが見えてきました。
バターさんの家畜の引っ越しをお手伝いしているのです。
家畜は山を越えられますが、ゲルや家財道具を積んだトラックは山を迂回する平地ルートを通ります。
モンゴルのしきたりで、移動するときは、必ずゲルの前を通過します。
そして、一言、二言、その地の人と言葉を交わしてから立ち去るのが礼儀です。
オラーナ君のご近所さんは、3年前のゾド(2009年から2010年にかけての寒波と大雪が続いて観測調査史上最悪の家畜被害となった)のあとに、ゴビアルタイというモンゴル国の西南端から移動してきた家族と、地元のカザフ人一家とです。
小型家畜がいるのは、我が家だけなので、残りの2軒は、数日前から、「そろそろ引っ越そう」と話始めていました。
オラーナ君も、3月10日過ぎたら、夏営地の近くに引っ越そう、と持ちかけてきました。
雪解けが思っていたよりも早くて、3本の谷筋が合わさったあたりに拠点がある私たちの冬営地は、雪解け水の洪水で家畜小屋やゲルが浸水する可能性があるというのです。
牛や馬のように大型家畜だけならば、引っ越しも大したことがありません。
そして私たち3軒は、今年の冬は一緒に越冬しましたが、その後はバラバラのベースキャンプに別れていきます。
いつ、どのような形で引っ越すかは、それぞれの家庭の問題です。
我が家の羊の出産は、予定外の種付け事件が起きてしまったため、ほぼ終わっています。
でも、そろそろ山羊の出産が始まるということで、臨月になったメス山羊が、山の斜面での放牧を嫌がるようになってきています。
春の吹雪がない、って確実な予報をきいてからでないと、移動中に山羊の出産が多発したら大変です。
羊に比べて、山羊は、カシミアもっこもこのわりに寒さや風に弱いので、引っ越し時期は慎重に選ばないといけません。ぐずぐずしていると、雪解けの洪水が始まってしまいます。
オラーナ君が狩猟に行かなかったのは、この辺の引っ越しにかかる費用や時期の相談を私とする、という目的と、奥さんがいつ戻ってくるのかを携帯電話の電波圏内にいたいということなども要因だったようです。
それに、友人の引っ越しを手伝わずに狩りに行った、なんて噂が広まったら、自分たちの引っ越しの時の手伝いも頼みづらくなりますもん。
まぁ、そんなこんなで、午前中もベースキャンプではいろいろやることが多いのでした。
なんだか長い一日になりそうです。
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