モンゴル語では朝食と言わずに朝のお茶と言う。
煮出した発酵茶に岩塩と牛乳を入れて作ったお茶とドーナツのような揚げ菓子。
朝、一日に飲む分の乳茶を作って、やかんとポットに入れておくのだ。

お母さんのベッドには赤ちゃんが寝かされている。
バトカとアリマーの息子、ムンフバトだ。
「ユミ、ムンフバトを見ていて。蝿が来たら払って」
そういえば、ムンフバトの顔にはいくつも虫刺されの跡がある。
秋の始まりとはいえ、蝿も蚊もまだたくさん飛んでいる。

「ムンフバトは何才なの?」
「今6ヶ月」
「アリマーは?」
「27歳。夫も」
アリマーは口数少ない。
表情も固い。
まだ会ったばかりだからかな。

その夫バトカもゲルに入ってきた。
ムンフバトとそっくりの顔立ち。
27歳には見えないどっしりとした貫禄がある。

おやこ

「姉さん(私のこと)、さっき撮った写真見せてよ」
乳搾りの間、私がスマホで写真を撮っていたのを見ていたらしい。

しかし、やたらに声のでかい家族だ。
嫁のアリマーを除いては。
広いところで暮らすと自然と声が大きくなるんだろうか、それともこの家族の特徴だろうか。

都市部ではスマホも当たり前だが、まだ草原には普及していないらしい。
「これいいなあ。電話なのか。俺に売ってくれ」
「だめだよ。まだあと2年支払いあるし」
「ケチだな!」
「そうじゃなくて。えーと、電池なくなるからもういい?」
「ケチだな!」

このときの私は、草原でどの程度充電ができるのか、とても不安だったのだ。
ソーラー充電器と乾電池の予備は持ってきたが、充分とは言い難い。
そんな私の不安をよそに、朝食の間中、バトカはスマホに夢中になっていた。

(あるがまま舎通信2014年4月号掲載、一部修正・加筆)


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