空港への出発前日、タクシー会社に予約電話をした。
したといっても、自分ではできないので、宿泊先の人にお願いした。
そして、もちろん当日の朝にも再び電話してもらった。

日本ではお盆明けのうだる暑さだったが、
ウランバートルでは吐く息も白い朝である。

西モンゴルの宿泊先を探してくれたTさんからも電話があった。
私が一人で草原に行くことを、すごく心配してくれる。
草原生活は3食食べられないから、街にいるうちにビスケットとか買って持っていくようにとアドバイスしてくれた。
ん?3食食べられない?

アパートの窓から、すぐ近くにタクシーが止まったのが見えた。
いよいよである。
少々ぬくぬくと日本を抜けきらない環境にいたけれど、
いよいよどっぷりモンゴル一人旅の始まりである。

モリンホールとバックパックを後部座席に置いて、タクシーの助手席(右側)に乗り込んだ。
「空港までいくらですか?」
「1kmあたり700トゥグルク。メーターで計算する。で、何時までに空港に着けばいいの?」
初対面のモンゴルの人は表情が読めなくて、ちょっと怖い。

「飛行機が出るのが○時だから○時までに」
やや緊張して会話が始まる。
「じゃあ大丈夫だ。間に合うよ。どこに行くんだ?」
「オブス県」
「ええっ。僕オブスから来たんだよ。」

一気に車内の空気が一転した。
早くも旅のミラクルが始まっている!

「オブスに行くの?いいなあ。オブスはいいよ。なんでもあるんだ。」
「なんでも?」 田舎なのに?
「そう!山もある。草原もある。湖もある。全部あるよ。とても綺麗なところだよ。」

なんでもあるってそういうことか。
そういえばTさんが「西の男はとにかくアツイよ」と言ってたっけ。
なんかその片鱗がもう見えてきたような気がするなあ。

じんわりと思い起こしてしている隙もなく、運転手さんの話はひっきりなしに続く。
「だけど方言は難しいよ。発音がかなり違うからね。僕も久しぶりに村に帰りたいなあ。」
西の発音と方言が違うことは、いろいろな人から聞いている。
ウランバートルのモンゴル語も難しいのに。
いきなりハードルが高いのではないかとドキドキしてきた。
いやいや、高い山に登れたら他の山は楽になるのだ。

「音楽好きなの?オブスにはたくさん歌があるよ。『妬きもちな羊』とかね。」
(注:結局その歌はオブスに行ってもわかりませんでした。)

オブス情報満載の話を聞いているうちに空港へと到着。
運転手さんは荷物を出すのを手伝ってくれて、
「またこっちに戻ってきたら電話してよ。タクシー出すよ。」
と自分の携帯番号を教えてくれた。

↓チンギスハーン空港の正面入口からの風景

チンギスハーン空港前

(あるがまま舎通信2013年6月号掲載、一部修正・加筆)