首都ウランバートルからおよそ3時間のフライト。
午後4時。西モンゴル、オブス県、オラーンゴムの空港に到着。

草原に囲まれて、いかにも「地方の空港」というこじんまり具合だ。
飛行機に横付けされたステップから地面に降り立ち、空港へとてくてく歩く。

オラーンゴム空港


う~ん。いい感じ。
さあ、ここから西モンゴルの旅が始まる!

空港の建物に入ると、しゃきっとした印象の女性が私を見つけてにこやかに近づいてきた。
「ユミ?」
「はい。アムラー?」
「こんにちは。無事に着いたね。よかった」
「こんにちは。はじめまして」
「こっちは夫のチンバット」
「こんにちは」

アムラーさんは、モンゴル到着初日に空港に迎えに来てくれたTさんの夫、Aさんの同級生だ。

西モンゴルに行きたいとAさんに話したとき、オブス出身のAさんはたいそう喜んで、アムラーさんに頼んで、私を2週間泊めてくれる遊牧民を探すよう手配してくれた。

アムラーさんは元地方議員で、オブス県ではかなり顔が広いのだそうだ。
ちなみにアムラーさんとチンバットさんも同い年、Aさんと私も同い年。
「おおー、みんな同い年かー!」とわかった途端に友だちモード。

ところで、TさんとかAさんとか、友人を匿名で書いているのは、日本に住んでいる(または住んでいた)友人の名前を勝手に書いては、プライベートにも関わり、悪いと思ったから。

過去2回のモンゴル旅の記録には、知り合った人の実名を、ためらうことなく書いてきた。
遠くの国で出会った人、次にまた会えるかわからない人たちのこと、まあ書いても問題ないだろう、という思いがあった。
それに、外国語の名前が持つ音の響きもまた、その国らしさを感じられるという思いも。

けれど、今回の旅日記では、正直言って迷った。
このモンゴル旅で、今までの旅と一番違うと感じたところ。
それは、出会った人たちがよその国の人、というのではなく、もっともっと身近な存在に感じられたということ。
旅人としてというより、友人として心ひらいて知り合った感じが強い。
そういう人たちの日常を、名前を出して書いてもよいものか。

似た名前の多いモンゴル。
すべてを頭文字だけにしてしまうと、誰が誰だかわからなくなってしまうし、会話を書くにも不都合だ。
それにモンゴルの名前には、やっぱりモンゴルらしさがいっぱい詰まっている。
そういうひとり悩みを経て、結局名前を書くことにした。

さて、アムラーさん、チンバットさん夫妻と挨拶の握手を交わし、無事に会えてほっとしたのも束の間、「西の方言は難しい」ということを身を持って知る。
しかも二人共けっこう早口なのだ。
「ゆっくり話してくださ~い。もう一回言ってくださ~い」と何度も言いながらの会話。
そう。もうこれから当分はモンゴル語しか話せない。

(あるがまま舎通信2013年8月号掲載、一部修正・加筆)