「通信と放送の融合」のこれから コンテンツ本位の時代を迎えて法制度が変わる/中村 伊知哉

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【1・2章】
この本は文章もくだけた感じで、ポップな例が数多くあげられておりとても読みやすかった。課題や問題点、対策などもも踏み込んだ提示がしてあったのでよかったと思う。
まずこの本を読んで感じたのが、先週の輪読の課題である「パラダイス鎖国」とは違う視点で書かれているということだ。(私のあさはかな読みによるものなのでもし違っていたらご指摘願いたい)
パラダイス鎖国においては日本の世界における存在感は薄れてきているということが全体として論じられていたが、この本を読んで受ける印象は「日本」という国への興味は深まっているということである。それをよく表しているのが「日本を目指して捕まったフランス娘たち」の例であろう。90年前の萩原朔太郎の言葉にあるように、日本はフランスなどの「文化の中心」を目指し、「憧れる」存在であったが、今は「文化の中心」になり、「憧れられる」存在になったのである。それは「世界コスプレサミット2007」において8万人を勝ち抜いた優勝賞品が日本旅行であることだったり、ポケモンなどのジャパニメーションの人気など本書においても数え切れないほどの例があげられている。余談であるが、文化と関係がないかもしれないが、つい最近イチローの活躍によって日本の野球に憧れを抱いたメジャーリーグでドラフト1位指名を受けた選手がメジャーの誘いを断って当時のオリックスブルーウェーブの入団テストを受けに来たということもあった(結局オリックスは採らなかったのだが)。
しかし、「フランス娘~」と同じ項目にあったように「日本にはその自覚が足りない」のである。確かに日本のポップカルチャーは人気がある。世界でもそのクオリティは群を抜いていると言って過言ではないだろう。しかし、データを見る限りその人気をビジネスに結びつけられていない。ソフトパワーにしきれていないのだ。世界に誇るクオリティを持ちながらも市場レベルでは影響力をなくしている。これは「パラダイス鎖国」で述べられているところと共通している。
コンテンツ産業のみならず、他の産業にもいえることであるが、日本は「もったいない」のである。クオリティの高さや需要の高さはトップクラスなのである。それをもっと自覚し、ビジネスにつなげる、つまり国力につなげられるよう積極的にアプローチすべきである。
【3章】
テレビ局の著作権を侵害した違法コンテンツを流しているyoutubeに削除要請を出し続けている日本に対し、youtubeとの共存を目指した形での新たなビジネスを模索しようとするアメリカ…この例を見るだけでも日本のコンテンツに対する考えの硬さが伺える。
音楽業界においてもそうである。日本の音楽業界は、今までCCCD(コピーコントロールCD)の開発や、違法ダウンロードサイトの利用者も有罪にするなど、違法ダウンロードサイトの動きを封じようとやっきになっているが、あるサイトを封じたとしてもまた新しい技術が生まれさらに著作権を侵害される…このいたちごっこである。
ではアメリカのテレビ業界がyoutubeと提携した話ではないが、音楽業界も抜本的な考えの見直しが必要なのではないだろうか。例えば、こうした違法ダウンロードサイトと対立するのはあきらめるのである。レーベル側が公式に無料でダウンロードできるようにしてしまうのはどうだろうか?違法ダウンロードサイトでダウンロードされたものは音質が劣悪で、アーティスト側の意向にそぐわない。しかし、公式に配信した物であれば音質がいい、アーティストが意図した形でリスナーに届けられるうえ、今まで音質の悪い違法ダウンロードサイトを利用していたリスナーが公式のダウンロードサイトを利用しない理由はない。
確かにこの方法だと、パッケージコンテンツや有料のダウンロードの売り上げはなくなるかもしれない。しかし、今まで以上にレーベルのサイトには多くの人が注目することは間違いない。ここをビジネスにしていくのである。おそらく多くの人が注目するサイトとなれば多くの広告収入が見込めるだろうし、アーティストのグッズやライブなどのコンテンツを充実させ、そこから収益を得ていくことも今まで以上に活発になるだろう。いくら曲が無料でダウンロードできるからといって、ライブで得られる一体感というのはライブに行かなければ体験することはできないわけで、多くの人に無料で曲を聴いてもらうことで逆にライブの集客につながるかもしれない。無料で聞いてみて好きになったアーティストのグッズがほしくなるかもしれない。
テレビにおいてもそうであろう。無料で見せてしまえばいいのだ。テレビはスポンサーからの広告収入で運営されている。しかしネットの広告費は年々増加しており、いつかテレビを抜くのではないかとも言われている。テレビの広告費にこだわる必要はないのである。テレビを軸としながらも、そのフォロー(再放送など)をネットですることによってそのテレビ局のサイトはかなりの注目を集めかなりの広告収入を見込めるはずである。グッズなどの話は先ほど触れたことと同じなので省略する。
通信と放送やコンテンツ産業は目まぐるしい変化の時を迎えており、テレビや音楽に限らず今までの運営方法に縛られていては対応できないのである。しかしこういった業界に動きがでてきたとしても行政やシステムが整っていなければ何も始まらない。情報通信行政組織をこの枠にいれればこの理念に反するだとか、この理念と齟齬しているなどと論理を述べる時間はないのである。業界ごとの柔軟な対応とそのような動きをサポートするべく行政の素早い対応が求められるであろう。