「今日は、どのようなご用件ですか?」

私と相対して窓口の前に立った、50歳くらいの年金事務所の男性職員が私に尋ねる。

 

 

 

彼と私の間にはコロナ対策なのだろう、透明のシートがかけられている。私は、そのシート越しでも声が通るようにと少し顔をシートに近づけて、

「国民付加年金への加入を考えてまして、申請用の用紙があるかと思いますが、その用紙をいただけますか」

と伝えた。

 

「国民付加年金ですね」

男性職員が用紙を取りに後ろに引っ込もうとしたので、私は、

「あ、すみません」

と声をかけた。

 

「あと、国民年金をクレジットカードで支払うことも考えていて、それも申請用の用紙があると思うのでその用紙も頂けますか」

 

「クレジットカード・・・。今日申請しますか?」

 

「いえ、今日は用紙だけもらって家でそれに記入しようと思います」

 

「そうですか。少し、お待ちください」

 

 

 

男性職員は職員用スペースの片隅に置かれている用紙入れのような場所の前に行って、そこの中をしばらく漁っていた。二、三分して、再び窓口の前に戻ってきた。

 

「国民付加年金はこの用紙に記入してください」

そう言って、私の前に一枚の紙を置く。

 

「国民年金基金やiDeCoには加入してますか?」

 

「いえ、加入していないです」

 

「それでは、この備考欄に国民年金基金、iDeCoには未加入と記載してください」

 

「はい、わかりました」

 

私はそう答えながら、頭の中では、

 

“あれ、国民付加年金とiDeCoって併用不可なんだっけ?”

 

と考えていた。国民付加年金と国民年金基金が併用不可というのは事前に調べて知っていたのだけど、iDeCoとの併用の件は調べていなかった。

 

“将来的にはiDeCoもやることを考えているので、その併用については後で調べてみよう”

 

そう自分の中で簡単に結論を出して、男性職員の言葉に意識を戻す。

 

「クレジットカード申請用の用紙はこれになります。記載方法を説明した資料も一緒につけておくので参考にしてください」

 

「はい」

 

「あと、返送用の封筒をお渡しするので、用紙はこの封筒に入れて投函してください」

 

「二つの用紙を一緒にこの封筒に入れても大丈夫ですか?」

 

「はい、大丈夫です」

 

私は返送用の封筒を受け取った。

家で用紙に記載した後は、再び提出のために年金事務所に来ることを想定していたので、その封筒の申し出は純粋に嬉しかった。

 

 

 

正直言って、年金事務所は大昔の年金問題の件もあってあまりいいイメージをもっていなかった。だけど、平日午後ということもあってそれほど待たされることもなかったし、返信用の封筒も貰うことができた。

 

 

 

特にストレスなく用事が済んだことに満足しながら、私は年金事務所を後にした。