転職のための企業への応募は、基本的には二つのルートを使用した。

 

 

 

一つは転職サービスDの中での求人への応募。

 

転職サービスDのサイト内に様々な企業からの求人募集案内が掲載されていたので、そこで少しでも「コンシューマー製品を作る」という目的に沿った企業を見繕って私の方から応募した。

また、私の担当としてついてくれることになった転職サービスDのキャリアカウンセラーSさんから、私宛に幾つかの企業求人を紹介してくれるようになったので、その中から応募を希望するものについてはSさんにその旨を連絡したりもしていた。

 

 

 

そしてもう一つは、企業HPからの直接の応募。

 

興味のあるメーカーのHPを片っ端から見ていって、そのHPに掲載されている求人内容を確認する。

新卒採用向けのページの横に経験者採用向けのページが併設されていることが多く、そこから、私のこれまでの職歴(製品の機械設計)にかぶるもの、そしてその募集している製品群が私自身が「作ってみたいと思えるもの」、それらに少しでも引っかかるものがあればそれを全てリストアップしていった。

 

 

 

ただ、それらの企業に応募する際に、二つの書類が必要だった。

 

履歴書と職務経歴書。

 

履歴書はまだしも、今回の転職が私にとって初めての転職でもあったので「職務経歴書」なるものを今まで一度も作ったことはなかった。

 

まず、情報収集からだ、と思い、職務経歴書について色々と調べる。

ネットで検索すると、転職サイトが載せている「職務経歴書の書き方」や「職務経歴書のフォーマット」などが色々と出てきた。私はそれをブックマークし一つずつ目を通した。そしてどのようなことを書けばいいのかある程度頭の中に入れてから、その「フォーマット」をダウンロードして、書類を作成していった。

 

 

 

履歴書は作成するのにそれほど時間はかからなかった。

住所氏名、学歴、職歴、そして保有資格などを箇条書きで書けばいいだけであり、職歴も今まで一社しか経験していないので、それほど多くの記載が必要なわけでもなかった。

 

ただ、最後に「志望動機、特技、好きな学科、アピールポイントなど」という欄があり、そこに何を書くかは少し考える必要があった。

 

 

 

私は数日考えて、次のような文章を記載した。

 

「今まで◯◯の設計開発に従事してきたのですが、◯◯以外の製品開発に携わりたいという思いがあり、また、新しい製品を作り出すのであれば世の中にインパクトを与えられるようなものを作り出したいと考えております」

 

もし本当に「企業」という道具を使ってこれが実現できるのであれば、私には向いていない場所だとしても、やりがいの欠片は見出すことができるかもしない。

 

そんなことを思ったりもした。

 

 

 

「コンシューマー製品を作る」

 

その言葉を自分に何度も何度も言い聞かせるうちに、いつの間にか私自身がその言葉に暗示をかけられていた。