転職サービスDのキャリアカウンセリングを受ける二日前、私の担当になるという転職サービスDのSさんから「事前アンケートのお願い」という一通のメールが届いた。

 

 

 

“現在カウンセリングに向けて準備をしておりますので、

よろしければ以下のアンケートにお答えいただけますでしょうか。

 

◆1:転職をお考えになったきっかけ・理由を共有ください(前向きなもの・後ろ向きなものどちらでも構いません)

◆2:今回の転職にあたっての希望条件について
(具体的なイメージのないところ、当日相談の上決定したいとこは空欄で問題ございません)

◆3:これまでのご経験の中でご自身の強みとして考えていらっしゃる点、また今回のご転職で活かしていきたい、伸ばしていきたい部分がございましたら教えてください。

◆4:現在の転職活動の状況を差支えない程度で共有ください(応募先を伺うことで、ご意向のヒントとなります)

 

◆5:想定されている転職の時期について

◆6:転職・退職理由について“

 

 

 

転職を考えたきっかけか・・・。

 

私自身が転職を考えた本当のきっかけは、その当時勤めていた企業Aで製品C開発で追い詰められていて、自分自身に逃げ道を作る必要があると考えたからだった。

だけど、そのようなネガティブなことは当然書くわけにはいかなかった。いくらメールには「後ろ向きなものどちらでも構いません」と書かれていたとしても、その本当のきっかけは書くわけにはいかない、そのくらいの分別は持っていた。

 

 

 

だから、私は転職に際して設定した3つの目的の一つ、

「一般家庭で使われるようなコンシューマー製品を作ること」

その理由だけで押し通すしかないと思った。

 

その思い自体は偽りではなかった。

別に嘘を書くわけではない。ただ、外に出す情報と出さない情報とで私の意思で取捨選択をするというだけの話だ。みんなそのようにして生きているのだから、私自身は別にそこに罪悪感を抱くこともなかった。

 

結局、事前アンケートにはそのような「きっかけ」を書いて返信した。

 

 

 

そしてカウンセリングの当日。

 

土曜日の午後6時から転職サービスDのリモートシステムを通してSさんと面談をし、私が事前に送ったアンケートに沿って話は進められた。

 

「転職を考えたきっかけはなんでしょうか?」

 

「私は今、企業Aで製品開発をしているのですが、企業Aでは企業向けの製品がメインとなっていて、私も企業向け製品の開発に携わっています。ですが、私自身としては一般家庭で使用されるようなコンシューマー製品の開発を行いたいと思い、そこで転職を考えるようになりました」

 

私は事前に準備した「きっかけ」を話す。

 

 

 

Sさんは、その点について色々と質問してきた。

 

だけど、私は、

「コンシューマー製品をつくりたい」

その一点だけで押し通した。

 

Sさんは最後には、

「◯◯さん(私)の希望はわかりました」

と言った。

 

 

 

転職のキャリアカウンセリングとして多くの転職者と接してきたはずのSさんには、私の薄っぺらい理由の裏側なんて本当は見透かされていたのかもしれない。

 

それでも私は、

「コンシューマー製品をつくりたい」

という理由で押し通すしかなかった。