私の物件探しはスタート地点に戻ってしまったのだけど、親に対して私が一人暮らしを始めようとしていることは伝えることができた。
それは一つの壁を乗り越えたということでもあったので、私は継続して物件探しを続けていた。平日は企業Aにおける仕事で精神的に追い詰められ、夜は現実逃避をするようにひたすら賃貸サイトで手頃な物件を探す。
そのような毎日をしばらく続けていた。
その中で、厚木に一つの物件を見つけ内見の予約を入れた。
本厚木駅からは3、4kmくらいの位置に、海老名駅からも同じく3、4kmくらいの位置にその物件はあった。歩けない距離ではなかったけど、流石に歩くとなると一時間近くはかかってしまう距離だった。駅に出るにはバスが必要だった。
できれば駅の近くがよかったのだけど、ただそうなってしまうと家賃が大きく上がってしまう。
日常生活ではそんなに便がいい場所では無かったのだけど、私の頭の中では、
「自転車を買えばいいか」
くらいに考えていた。
自転車を買えば、自転車で通勤できる位置にその当時私が勤めていた事業所があるということも大きかった。自転車通勤をすれば、通勤時間を大きく抑えることができる。通勤時間を無駄と考えていた私にはその点でも魅力的だった。
その次の休日、不動産会社に赴き、その物件を担当者と一緒に内見した。
築4、5年くらいでそれほど古くはないマンションで、交通の便が悪いということもあり家賃は低く抑えられている。
その物件の部屋に初めて入った時に、その部屋の明るさにまず驚いた。
大きな窓が一つあり、そしてその窓は南向きということもあり、日が部屋に差していたのだ。夏は暑そうだな、そんなことも思ったのだけど、ただ、部屋の日当たりは気持ちを盛り上げてくれるような感覚も覚えていた。
それ以外にも幾つかの物件を内見していたのだけど、その部屋の明るさの印象が最後まで強く残った。
ここにするか。
不動産屋に戻り、担当者と話す機会があった。
私は、
「〇〇(日当たりのいい物件)にしようと思います。予約は可能ですか?」
と彼に話した。
担当者は色々と書類を用意し、私に説明する。
私はようやく一人暮らし、そしてその先の「セミリタイア」に向けて第一歩を踏み出したのだ。