10月2日   <オリンピック閉会>
今回のオリンピックを見て思ったことを一つ。(これはある読者の方の示唆に考えさせられた部分が多くあります。)南北朝鮮の同時行進など良い話題もある一方で、ラドゥカン選手の金メダル剥奪とか、篠原選手の決勝戦の判定を巡る問題であるとか、後味のスッキリしない問題もいくつか提起されました。思うにオリンピックは壮大な、「不完全」な世界的イベントなのではないでしょうか。審判団も、運営組織も、一時的に集められた或る意味での寄せ集めであり、その哲学、方針、規準などにつき十分な統一がなされていないのではないでしょうか。それは絶対的な記録を目標に努力し闘っている各選手にとっては、納得のいかない結果を招く遠因となり兼ねない一方で、ろくに泳いだことのないアフリカの水泳選手の泳ぎが世界じゅうに放映されたり、先に述べたような政治的解決を待たない事柄の前倒しの実施などを可能にしているのではないでしょうか。不完全であるが故に試され得る可能性というものもあるでしょう。しかしこれらのチャレンジを可能にしている大前提として、世界の比較的な平和(基本的に重大な戦争が行われていないこと)があることを忘れてはいけないでしょう。


10月3日      <選挙>
国会では非拘束名簿式の導入に関して与野党間で揉めているようですが、馬鹿らしくて詳細を知る気にもなりません。これは参議院の比例代表選挙についての暴挙ですが、憲政上最も重要な選挙と思われる衆議院の小選挙区においても、「私が当選した暁にはこの町に・・」などとやっています。代議士は国民の代表であって特定の利益を代表してはならない、と確か習ったと思うのですが、このような人達は全員憲法違反にあたらないのでしょうか?憲法の授業にしっかりと出なかったので私には良く分かりません。


10月4日     <国の貸借対照表>
本日の日経新聞のトップ記事によると、大蔵省が国の貸借対照表の試算を行い、最大で780兆円の債務超過があることが明らかになったということです。国が支払いを約束している公的年金の給付額を、加入者が今までに支払った積立額だけとすると債務超過額は130兆円、約束した通りの給付額とすると780兆円になるとのことです。その差は650兆円。計算の仕方によって変わるバランスシートのボトムラインとしては聞いたことのない巨大な額です。ところでこの2つの計算方法の違いは、まさに確定拠出型年金(日本版401Kなど)と確定給付型年金(今までの年金)の違いに等しいものです。650兆円の責任の所在を明らかにしないまま、それどころか650兆円の差の存在自体を明らかにしないまま、日本版401Kの導入の議論を進めてきた各関係者の責任は重大ですよね。


10月5日       <ガウス>
1、2、3と順に整数を10まで足すといくつになるか。これは有名な問題ですが、フランスの数学者ガウスは何と小学校1年生の時にこの種類の問題の極めて簡単な解法に気付きました。俵を積むように三角形に1つの○、2つの○と並べて行き、その三角形をもう一つ逆向きに足して四角形を作り、その中の○の数を掛け算で計算して2で割るという、あの方法です。昔似たような問題を一つ考えたことがあります。奇数を1から順に足して行くと、その和は常に整数の二乗になります。1+3=4、1+3+5=9といった具合です。これもオセロのように○をまず一つ置いて、その回りに新たな正方形ができるように○を並べて行くことをイメージすると簡単に説明できます。このように純粋な数字の問題を図形に換えて解くというのはなかなか楽しいものですね。


10月6日      <フランス>
昨日のつぶやきでガウスのことを誤ってフランスの数学者と書いてしまいましたが、正しくはドイツの数学者でした。失礼致しました。同時期のフランスの天才数学者はガロアです。私にはさっぱり分かりませんが、「群論」という理論を学会に提出したあとに自分はピストルによる決闘に行き、21歳の若さで死んだそうです。「群論」は死語数十年してから証明されました。史上最大の難問と言われ、証明されるのに数世紀も掛かった「フェルマーの最終定理」のフェルマーもやはりフランス人です。明らかにフランスには天才数学者が多いようなのですがどうしてでしょう?文化的なものでしょうか?考え方のロジックは言語に大きく依存するでしょうからフランス語のせいでしょうか?或いは逆に数学的な考え方に強い民族だったので、それが言語にも反映されたのでしょうか?コンピュータの言語は基本的に米語です。所謂IT革命が進めば進むほど、世界全体の得意分野もアメリカ的なものに偏って行ってしまうのでしょうか?ちょっと怖いですね。


10月10日     <銭湯の日>
今日は元来体育の日ですが、10月10日なので、1010、千と十で「せんとう」の日でもあるそうです。銭湯はもう何年も行っていませんが、サウナは度々行きます。特に普通の駅の前にあるような、何の変哲もなく、大して綺麗でもない、5、6階建てのビル一棟が全てサウナの「駅前サウナ」が最高です。この週末にも一回行ったのですが、マッサージあり、休憩室もうるさくもなく、そして静か過ぎもなく、衛生的ですが神経質にピカピカにしている訳でもなく、それはとても心地よい空間がそこにあります。電車やバスの中だと、そのノイズが却ってより深い睡眠を誘うような、そんな作用があるのでしょう。私は大好きです。サウナの日というのもあるのでしょうか。


10月11日      <F1>
今年のF1は先週末に鈴鹿サーキットでフェラーリを駆るシューマッハがハッキネンを押さえて総合優勝を決めました。私はF1が大好きなのですが、F1にまつわるいろいろな知識とか憧れの多くの部分は、実は小学生か中学生の頃に読んだ少年サンデーに連載されていた「赤いペガサス」によっています。Rh-、ボンベイブラッドという極めて珍しい血の主人公、赤馬研が、無二の妹をあたかも事故の時のための輸血タンクのように携えながら世界中のF1サーカスを巡り、ついに日本人として初めて総合優勝する物語です。スリップ・ストリームや、サージング、レースの駆け引き、F1の裏舞台、著名なレーサーの名前。全部あの漫画で覚えました。あのようなリアルティーを持った漫画って、今もあるのでしょうか。


10月12日    <商法改正>
森首相の諮問機関である産業新生会議において、商法改正の一部前倒しなどが決められました。電子メールによる株主総会への参加と、ストックオプションの付与範囲の拡大の二点につき、2001年中の商法の改正が決められたようです。これは大変喜ばしいことです。然しながら日本の資本市場の活性化のため、ひいては日本経済の活性化のための喫緊の問題として今本当に必要な商法関係の手当は、目立たないかも知れませんがもっとベーシックな問題ではないでしょうか。電子メールによる総会は素晴らしいことですが、その前にまず株主にならなくては意味がありません。成長企業の経営を助けるオプション制度の充実よりも、まずこの国の普通の人達が、手軽に優良企業、例えばトヨタとかソニーとか、の株を買えるようにすることではないでしょうか?50万円、100万円でしか株が買えないのと、アメリカのように超有名優良企業の株でも数千円から買えるのでは天と地ほどの差があります。いわゆる単位株制度の改革の問題は、地味なテーマですが我が国の資本市場の根底を左右する問題です。流通市場の整備なくして、資本市場は成り立ち得ません。


10月13日   <個人投資家と機関投資家>
トレーディングに於いて、個人がプロに勝てるでしょうか?プロに対する個人の優位性ってあるのでしょうか?どんなにお金を掛けても、情報の量とスピードでは勝ち目はありません。勿論資金量では勝負になりません。しかし一つとても大きな優位性があります。それはトレーディングの期間を長く取れることです。プロのトレーダーはポジションを毎日評価しなければいけませんし、毎月利益の目標や損のリミットがあったりします。要は日々の値動きにある意味で振り回される訳です。個人は数日間、或いは一ヶ月以上でもじっくり待つ、或いは知らんぷりすることができます。株価はある意味で経済規模の表象ですから、長い目で見るとリターンはかなり高いことが知られています。リスクの期間を長く取れることは、極めて大きいメリットです。しかしメリットは活用しなければメリットにならないことをお忘れなく。


10月16日      <田中康夫さん>
皆さん御存知のように作家の田中康夫さんが長野県知事に当選されました。政治ネタはあまり興味もないので、しっかりと報道も追っていなかったのですが、当初より隠し事をしない態度、純粋な民主的な政治を追い求める態度が好感されたように伝え聞いています。私は田中さんと直接お話しさせて頂いた機会も何回かあるのですが、表に出てくる行動とは違って、実はシャイで理想を持った教養人と言った感じです。理想と現実には大きなギャップがあるかも知れませんし、人は常に不完全ですし、これから御苦労が多いとは思いますが、是非頑張って頂いてこの国の政治に一石を投じて欲しいと思います。


10月17日     <匂いと音>
今日の東京は明らかに冬が近づいていると知らされる重い曇天でした。「秋きぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」というのは藤原敏行の歌ですが、以前にも書いたことがあるように、古今集の中には微妙な匂いや音で季節の変化をいち早く知ったり、ある人を思い出したりする歌がよくあります。新しく生まれるものから発せられる匂いによって春を感じ、どこか侘びしい風の音によって秋の到来を知る。このような感性はデジタル映像や信号が反乱する現代に於いては徐々に廃れて行くのでしょうか。今日のように明らかな状況で冬を感じる、しかも秋をしっかりと認識する間もなく・・。鈍感になるとどんどん鈍感になってしまう一方のような気がするので、もっと意識的に匂いや音を探したいと思います。


10月18日    <ファンド・マネージャー>
最近マネックスで販売を開始したウェルズリー・インカム・ファンド。先日そのファンド・マネージャー達を国際電話でインタヴューしました。これは皆様にこのファンドをより良く知って頂くために、まず私が直接ファンド・マネージャー本人達に根掘り葉掘り聞いてみてから、マネックス・メールやHP上で御案内していこうという企画の為です。バランス・ファンドなので債券と株式それぞれのファンド・マネージャーがいるのですが、どんな質問にもそれはとても誠実に答えてくれました。二人の職歴を聞いてまたビックリ。二人の平均で、ファンド・マネージャーとしての経験が24年、現在の運用会社に21年、そして何よりも凄いのは、このウェルズリー・ファンドの運用に16年も携わっているというのです。う~む、日本の投信はまだまだ学ぶべきことが多くありますね。


10月19日   <弁慶の仁王立ち>
とても忙しくてかつ寝不足だったりすると、体がだるいように感じることがあります。私はそういう時に「体が乳酸化した」と言います。義経と一緒に追われて闘った弁慶の最期は、戦闘中に立ったまま死んだと言われます。これは必ずしも全くの作り話ではありません。弁慶はそのスタミナも力も異常でしたから、継続した長い時間に亘って極度の運動量を発揮しました。激し過ぎる運動によって呼吸による酸素の供給が間に合わないと、体内の糖は分解されて乳酸になります。弁慶は激しく闘いながら徐々に体中がヨーグルトのように固まって行き、ついに目をカッと開けたまま仁王立ちして死んでしまった訳です。確かに疲労時のだるいという感覚は、体の一部がヨーグルトのように固まって来ているという気がします。そういう時は大きく深呼吸して酸素を供給するようにしましょう。


10月20日      <見えにくいリスク>
金融機関のリスクにはいろいろあります。株式の値段の上下、金利の上下、年限を横軸とした金利カーブの形状の変化、不動産価格の上下、貸出先の信用力の変化等々。しかしもう1つ大きなリスクがあります。年金や、生命保険のリスクを考える時に、平均寿命の変化というのは恐らく巨大なリスクの筈です。日本に於いては平均寿命はちょっとずつ延び続いているので、年金にとってはマイナス、生命保険にとってはプラスの筈です。その感応度たるや恐らくとんでもなく巨大な額でしょう。私にはプラスの影響とマイナスの影響とどちらの方が大きいかも皆目見当がつきませんが。


10月23日      <符帳>
通信をするためのプロトコールは符帳の一種ですが、目に見える色とかもある意味では符帳の一種なのでしょうか?目の前にあるバラを「赤色」と言い、話している相手も「このバラ赤いね」と言ったときに、果たして二人の人は本当に同じ色に見えているのでしょうか?それとも全然違う色だけれど、「赤色」という言葉に紐付けをして互いに交信しているだけなのでしょうか?証明する手段は恐らく無いと思われますが、何か不思議ですね。

10月24日      <簡易トレーディング・ゲーム>
トレーディングは心理戦です。(投資は違います。)トレーディングの心理のあやを簡単に、そして面白く経験できる遊びがあります。じゃんけんです。但し、何で勝ったかによって得られる点数が違います。パーなら5点、チョキなら2点、そしてグーなら1点です。単純にじゃんけんをして、単純に点数を貯めて競います。しかし負け始めるとパーで一気に勝とうとして、チョキに連敗したりします。益のあるトレーダーの余裕と、損のあるトレーダーの焦りと計算が微妙に絡み合うマーケットとそっくりです。皆さんも試されては如何ですか?なかなか勉強になります。


10月25日    <ときメモ・ファンド>
本日コナミさんと一緒に新しいファンドの発表を行いました。人気ゲーム「ときめきメモリアル」のPS2版の開発費を小口のファンドで公募調達し、その販売実績に応じて償還金が変わるという仕組みです。商品の詳しい内容はHP等を御覧頂きたいのですが、いわゆるコンテンツを証券化して小口公募するというのは、恐らく本邦初どころか世界初だと思われます。ある意味での直接投資に対して小口で参加する機会を設定・提供することは、マネックスも大変興味を持っている領域です。これからもいろいろと資本市場の新しいチャレンジして行きたいと思います。


10月26日     <米債>
お金という「流動性」は世界中のいろいろな資産を循環物色していきます。そのようなマクロ的な観点から投資対象を考えるのもたまにはいいものです。私が気になる「資産」の1つはアメリカの債券です。米債投資のリスク(或いはリターン)は為替と米国金利です。要はドルが売られなくて(より正確に言うと日米金利差から生ずるフォーワード・ドロップ(現在ドル・円だと1年間で6円ぐらいだと思いますが)よりもドルが弱くならなければ、即ち1年後でドルが102円よりも強ければ)、また米国金利が上昇しなければ、日本からの投資としては成功する訳です。アメリカは世界のGDPの40%程度を産んでいます。かつ所謂IT革命の仕掛け人はアメリカであって、世界のどこでITが普及しても何らかの形で利益がアメリカにある程度還元されると思われます。そう考えると世界の基軸通貨としてのドルは今後も安定もしくは強含むのでないでしょうか。一方現在の米国株式市場のあやふやさや今の高レベルを考えると、サイクル的には米国金利は安定もしくは下がり気味になるように思われます。そう考えると、米債と言うのは魅力的な投資対象に見えてきます。あくまでも部分的にですが、このようなエクスポージャーを検討されるのもいいかなと思います。(ウェルズリー・ファンドは基本的に米債の性格の極めて強いファンドです。)


10月27日    <国会>
言った、言わない、でこの国の国会は何時間でも費やします。しかし日本は世界のGDPの25%程度を担っている経済大国です。そんなことを国会で言い合っていていいのでしょうか?東証上場企業の時価総額の和も大体我が国のGDP位の額があります。それが刻一刻と数%と言う規模で動いています。国会ではもっと真剣に議論すべきことがあると思うのですが・・。


10月30日     <先輩と後輩>
私は中高一貫教育の男子校に行ったのですが、現役の生徒に対して先輩として話をする機会があり、土曜日に久しぶりに母校を訪れました。話し手は他にも数人いて、私が中1の時に高3で他の組の応援団長をしていた弁護士のHさんに講演後声を掛けて頂き、同じく講演したナノテクノロジーの最先端を行く研究者のS君(中高のうち確か3年間同級だったと思います)と一緒に夕方から呑みに出掛けました。突然誘われて、そのまま9時間呑んで語りました。Hさんとは口をきくのも生まれて2度目でしたし、S君とも会うのは10年ぶりぐらいでしたが、とにかく楽しい時間を過ごせました。この行為自体の妥当性はちょっと置いておくとして、もろもろの背景を全て超えて時間を共有できる喜びと、その人の命令に絶対服従できる先輩を持った幸せがありました。心のある上下間の付き合いや、気の置けない仲間というのは本当にいいものですね。


10月31日       <IT革命>
IT革命と世間は騒がしいですが、IT革命の本質とはなんでしょうか?不可能だったことを可能にする技術でしょうか?いつでもどこでもという利便性でしょうか?私は究極的には「効率性の向上とコストの削減」だと考えています。一番高いコストは「人」ですから、それは即ち「必要な人手が少なくて済む」ということです。逆に言うと人員整理を伴わないIT革命は、うわべだけのお祭りになってしまう危険性があると思います。IT革命が正しく行われると、この意味で当初はデフレ圧力の方が大きいと思います。その次のステップとして整理された人員が付加価値のある新しいビジネスを興すことにより、ボトム・アップ型で経済全体の規模が大きくなって行く、それが理想型だと思います。90年代初頭にホワイト・カラーのリストラが進んだアメリカにおいて、人員整理の対象となった多くの人がシリコン・バレーなどに行き全く新しいビジネスを興して現在の底堅いアメリカ経済の基礎を創ったのと同じです。この問題はタブーなのか、あまり議論されません。しかしちゃんと正視して前向きに取り組むべきだと私は思います。