2000年1月4日     <謹賀新年>
あけましておめでとうございます。
Y2Kもつつがなく迎えられました。
本年も毎日マネックス・メールもつぶやきもお届け致しますので、何卒宜しくお願い申し上げます。


1月5日      <豆腐と納豆>
多勢の方から年賀状を頂きまして、ありがとうございました。いつもインターネットとかEメールばかり読んでいるので、久しぶりに日本古来からのいろいろな表現や漢字をいっぱい読みました。元旦という字がありますが、「旦」は地平線の上に日が出ている図ですから、元旦は元日の朝のことです。このように見るからに納得できるものもあるのですが、どうも腑に落ちない熟語が以前から1組あることを思い出しました。それは「豆腐」と「納豆」です。豆が腐っているのはナットウのような気がしますし、一方豆を(箱に)納めているのはトウフのような気がします。普段使い慣れている言葉も、こうやってみると中々面白いですね。


1月6日    <アメリカの市場>
年明け早々世界中の市場が荒れ気味ですが、今年のアメリカの市場についてちょっと考えてみました。株高はバブルではないか?長期金利は上昇するのではないか?などと最近良く耳にしますが、私は個人的にはその考え方に否定的です。グリーンスパンも再選されることになりましたし、何より今年は大統領選の年です。アメリカ政府はきちんと株式市場と金利をコントロールしようとするでしょうし、恐らく実現するのではないでしょうか?為替も、強いドルとは言わないまでも、弱いドルにはしない気がします。如何でしょう?

1月7日    <DWDM>
光は白色ですが、それはいろいろな色、波長の光が集まって、結果として白色に見える訳です。光ファイバーを使って通信する技術の分野において、1本のファイバーの中を何種類かの違う波長の光に分割して利用する技術、即ちあたかも何本ものファイバーを使うのと同じ容量の通信を1本のファイバーで行なってしまう技術をDWDMと言います。まるで錬金術のような技術ですね。一言でインターネット関連分野と言う時に、このように本当に生産効率を上げるような技術革新の起きている部分と、従来からの技術の利用であるとか、技術革新とは関係ないコンテンツ開発の部分とかが混ざっています。技術革新によって生産性が爆発的に上がる部分とそうでない部分とでは、当然経済的な価値も随分異なってきます。ネット関連株は玉石混淆とも言われますが、このような技術の査定を丁寧に行なって行くべきだと思います。


1月11日     <AOLとタイム・ワーナー>
今朝のニュースは何と言ってもこの2社の合併の話でしょう。2000万人の会員を持つAOLが、タイム・ワーナーの膨大なコンテンツと通信網を手に入れたことは極めて価値の高い出来事だと思います。日本ではいまだインターネット自体が注目の対象となっていて、ネット関連株と言うとインターネットに直接関係した会社だけが取り上げられがちですが、実はネットはあくまでも電話と同じようなインフラであり、実際の大きなビジネスはそれを利用してその上に建てられて行くべきものであるということを鮮明に表現していると思います。今後このような動き、即ちネットをインフラとして利用して行く形の合併など、は急速にアメリカにおいては進んで行くでしょうし、数あるネット関連株のヴァリュエーションもこのような将来の展開を見越してなされるでしょう(もっともアメリカにおいては既にそのような値付けがされているとも思われますが)。日本においてもこのような視点がもっと必要になってくると思われます。


1月12日    <知的好奇心と精神力>
実は最近LTCMのジョン・メリウェザーと食事をしました。ここで前にも書いたように3000億円の緊急借入を全て返済し、昨月新しいファンドを立ち上げたばかりです。1年前はさすがに若干疲れが見えましたが、今回はとても元気で前向きで機知に富み、安心致しました。以前ソロモン・ブラザーズの屋台骨を不正入札事件によって揺るがせたポール・モーザーはかつての私の上司ですが、メディアによる強烈な批判と無数の訴訟の山を丁度越えた頃に彼と食事をしたこともあるのですが、その時彼はかつての上司としての毅然とした態度で、相変わらずの好奇心をもって金融市場のことやかつての同僚のことを私に聞いたものでした。ウォール・ストリートの英雄達の知的好奇心と精神力は、本当に感嘆するものがあります。


1月13日    <ペイオフ延期>
今朝の日経新聞のトップは、「ペイオフ解禁」という見出しの、実質上ペイオフ延期の記事でした。預金者保護、中小金融機関保護の観点からの措置ということでしょう。私は必ずしも改革は何でも早くやるべきだとは思っていません。事情によっては経過措置を取るのは当然だと思います。しかしペイオフの延期が果たして上に挙げたような配慮に本当になるかは疑問です。問題なのは銀行界が需要以上に混み合っているということと、銀行の資産内容の情報開示が未だ満足できるレベルにないということではないでしょうか?ペイオフが解禁されることになれば、預金者は当然そのことを認識します。告知を徹底させるために延期するというのは理由にならないでしょう。延期が事実上決定した以上、ディスクロージャーを徹底すべきではないでしょうか?


1月14日     <光通信>
昨晩ある大学教授の先生と食事をしたのですがとても興味深い話をお聞きしました。世界中の先物取引の発祥は、江戸時代中期、我が国堂島の米の先物市場であったということは現在に於ける通説ですが、驚くべきことにその堂島で付いた値段で、翌日には博多でも市場が開かれていたというのです。毎日飛脚を飛ばしたのかと考えましたが、駅伝の選手でも1時間で20キロぐらいですから、午後に付いた値段を毎日翌朝までに博多まで走って知らせに行くのはどうも無理そうです。第一かなりコストがかかるでしょう。馬なら尚更高そうです。答えは、なんと、のしろを炊いて連繋していたそうです。これって、一種の光通信ですね。しかも速くて安い。300年前には金融でも通信でも世界の最先端を行っていた日本。ここはひとつ踏ん張って頑張りたいものですね。


1月17日   <プライベート・エクイティ・ファンド>
最近ファンドの設立が盛んです。ファンドといっても投信ではなく、日本の未公開のハイテク企業などに投資するファンドです。資本市場が未整備な部分が多い中で、未公開企業に対する資本流動性の供給として良いことだとは思いますが、ひとつだけ気になることがあります。外国資本が多いことです。日本は世界最大の債権国といわれ、世界中に流動性を供給していますが、これらは債権ですからアップ・サイドはありません。利息以外は元本が戻ってくるか、デフォルトするかです。一方そのような流動性が回り廻って資本となって日本に還流し、未公開企業というもっともアップ・サイドのあり得る分野に投資されて行きます。これではどこか損な気がするのは私だけでしょうか?


1月18日    <ファンドの規模>
ヘッジ・ファンド或いは昨日書いたプライベート・エクイティ・ファンドのようなファンドに適正規模というものはあるでしょうか?以前から何度も書いているジョン・メリウェザー氏の新しいファンドはまずはスタートの12月をいい成績で終えたようです。このファンドのサイズは2億5000万ドル(約260億円)です。私の個人的な感覚ですと、ヘッジ・ファンドの適正規模はこの250億円からせいぜい500億円程度ではないでしょうか?大きければいいというものではありません。大き過ぎると、資金に対するリターンを実現するために無理をして投資先を求めるようになります。結果、投資の選定基準が甘くなって、或いは敢えてリスクを取りに行くようになって、良くない成績を生むことがママあります。投資主体の資本に対する適正リスク・マネー額というものがあるべきだということは以前に書きましたが、投資対象であるマーケットに対してもやはり適正投資額というものがあります。適正規模を越えた投資は、いずれその投資自体が傷むことがありますが、それと同時にその投資対象に対して同時期に投資したその他の投資家もその煽りを受けることがあることを憶えておきましょう。


1月19日     <お金以外の投資>
お金以外の投資といったものがあるでしょうか?昨晩、伊藤穣一氏が新しく立ち上げたインキュベーション・ビジネスのお披露目パーティーに出席させて頂きましたが、伊藤氏曰く日本のベンチャーに対する資本投資の用意は既に十分あり、今不足しているのは実際に経営して会社を成長させて行く上での経験とか知識の部分であるので、その部分の投資をして行きたいとのことでした。私はこの考えに大いに共鳴したいと思います。思えばかつての不動産バブルの時に、お金だけを追い求めて、その他の例えば教育とか技術に対する投資を怠ったつけが大きく日本にはのしかかっています。その反省に立って、投資先だけでなく、投資するもの自体もお金だけでないものに拡げて行くことは大変有意義なことだと私は思います。日本にある最大の資産はやはり人なのですから。


1月20日     <ダボス>
年1回ダボスで大きな経済人会議が開かれます(世界経済フォーラム年次総会、通称ダボス会議)が、今年はクリントン大統領も参加し29日に演説をするそうです。例のシアトルでのWTO会議以来の世界的に大きな会議で、また通商のグローバリゼーションが討議される可能性もあり、シアトルと同じような暴動が起きるのではないかという懸念が出ているそうです。南と北、多国籍大企業、少数民族など、古くて新しい問題の目をまた起こすようなことがないといいのですが、要注目です。分からないこと、違うことをクリントン氏がをそのまま受け止めてくれるといいのですが、今回はどうでしょうか。


1月21日       <米国市場>
今年の米国の金利と株式市場について年明け早々楽観的な見通しを書きましたが、若干修正したいと思います。グリーンスパンへの信認は極めて高く、現在の大統領候補と比べるとかなり格が違うように見えます。今までは大統領選の年は選挙を有利に運ぶために市場はきちんとコントロールされて来たのが通例ですが、再選の決まっている連銀議長と大統領候補の格がこれほど大きいという状況は恐らく今回が初めてでしょう。そうなると、グリーンスパンは選挙よりも彼の最後の任期の間の米国経済をどうガイドするかという、より長期的な視点を優先できるかも知れません。そうすると案外早目に金融引き締めをするということも可能ではないかと思い始めています。今年は日本の市場も、米国の市場も政治絡みで中々目が離せませんね。


1月24日      <マザーズなど>
マザーズが過熱しているのではないかという話があります。アメリカと日本のネット関連株の値段(正しくはネット会社の時価総額)を比べて、現在の日本の値段は高過ぎるのではないかという声も聞かれます。果たしてそうでしょうか?売買が成立している以上、それは神聖なるマーケットの値段であり、正しいか否かを問うことには意味がありません。但し売買している人は皆自己責任を取り、売られようが買われようが恨みっこなしです。日米の値段の差などはそれこそ議論する必要もありません。いずれナスダック・ジャパンも始動し、アメリカの企業も日本にも上場するでしょう。日本の企業でアメリカに上場する企業も増えるかも知れません。このようにデュアル・リ
スティングが増えてくれば、当然裁定が働きます。金融のように基本的に流動性の高い分野では、そもそも価値の歪みは長くは続かないものです。


1月25日    <鉄腕アトム>
皆さん良く御存じの鉄腕アトムによると、確か西暦2000年頃には大体の仕事はロボットがしてくれていて、人間は創作活動とかに多くの時間を割き、余裕のある生活を送っている筈でした。ところが現状はそうではありませんね。コンピュータ技術は大きく進歩しましたが、必ずしもそれが人間に余裕を余分に与えるために使われているとは限らない気がします。効率は明らかに向上しているのでしょうが、それが人間の脳をより休ませず、余裕のない形で働かせる方向に振れている気がします。効率が2倍になった時に、2倍の仕事をするのか、2分の1で仕事を終えて、残りの2分の1で新しい創作活動をするのか。IT技術の使い方の方向性は、このいずれかの間にあるのでしょう。コンピュータにのまれないように気をつけたいと思います。


1月26日    <地動説>
仕事もマーケットもそうですが、何かにどっぷりとつかってしまうと回りが見えなくなり、客観的な状況を判断しにくくなります。そして大抵の場合は、そのような時は悪い結果が待っているものです。プロのトレーダーもママこの罠にはまってしまいます。大きなポジションを取る権限のある経験豊富なトレーダーも、「策士、策に溺れると」いう言葉がありますが、ポジションの組み立て方の巧妙さと大きさに錯覚を起こし、やはり自分の居場所を見失うことがあります。そのようなことがないように気を付けたいものです。地球の上に立っていると、この地面が動いていることには通常気付きません。しかし、例えば排水口に流れ落ちて行く水の渦の巻き方によって、地球が回っていること、更に自分が北半球にいるか、南半球にいるかを知ることができます(ちなみに北半球では時計回り)。視点を変えてみることはいつも大切ですね。


1月27日   <世銀債>
世界的に見ても極めて大型、かつ頻繁な債券の発行体である世界銀行が、今回インターネット上で30億円の資金調達を行ないました。これはただ単にネット上で注文を受付けるだけでなく、起債内容の説明から、起債後の流通市場におけるトレーディングまで、全てネット上でも行なうという初めての完全な形での「ネット起債」でした。興味深いのは、個人投資家の参加が通常に比べて多かったのは言うまでもありませんが、北米、ヨーロッパ、アジアとで、ネット注文の利用率が大きく違うことです。通常の形での注文も含めた全体に占めるネット注文の比率が、それぞれ82%、47%、1%でした。インターネットは利用して初めて価値があります。いまどきの機関投資家でインターネットに接続されていない会社があるとは思えませんから、各国におけるインターネットを利用しようという意識の違いが表われていると思います。まだまだ道のりは遠いのでしょうか。


1月28日    <ネット・ヘルス・ケア>
アメリカにヤヌスという大きな老舗の投信会社があります。昨日「ヘルシオン」というネット上でヘルス・ケアを展開する会社(具体的には保険の請求をネット上でサービスする会社のようですが)の株式の約10%を9億3000万ドル払って購入したそうです。約1000億円です。ヤヌスというととてもしっかりとした実績のある一流の会社です。この投資がいい結果を生むかどうかは別としても、それなりに確信をもってのことに違いありません。日本においては、ヘルス・ケアとネットの融合はまだまだですが、これからの新しい分野として注目して行きたいと思います。


1月31日       <わさび>
徳川家の葵の御紋は皆さん御存じだと思いますが、あれがワサビの葉っぱだったって知っていましたか?松平家は奥三河の清流のほとりにあり、そこで採れるワサビを怪我から病気にいたるまで全てに効く万能薬として重宝していたそうです。そのため何よりも大事にしていたワサビのその葉っぱを紋所にしたらしいのです。(ちなみにこれは山田風太郎さんの説です。)私は鮨が大好物なのですが、そんなことを思いながら食べてみるのもまた楽しいものです。