10月1日    <初日を終えて>
マネックスにとって記念すべき第一日目を終えました。丸二日間ほど一睡もできませんでしたが、これから経験を積み重ね、皆様のお役に立てるような会社になりたいと強く思っております。開業にこぎつけたのは、皆様の御意見・御応援の賜物です。今後ともマネックスを宜しくお願い申し上げます。


10月4日  <二日目>
第二日目が終わりました。初日は一部地域で中々新画面が見えないというインターネット特有の問題もありましたので、本格開業は本日といった感じでした。初日の5倍の注文を処理し、システム・トラブルもなく、つつがなく一日を終えました。いよいよ本格的に始動したという興奮と共に、皆様の御要望を見極わめ、皆様の期待に応え、皆様に御迷惑をかけないようにしなければいけない、という責任感と緊張感を強く感じています。今後とも御指導のほど宜しくお願い申し上げます。


10月5日    <人間とコンピュータ>
私はパソコンのヘビー・ユーザーで一時たりともパソコンがないと機能できません。毎日Eメールも500通ぐらいと格闘しています。でも500本の電話と格闘することを考えるとゾッとしますから、やはりパソコンは便利です。コンピュータによって私たちの生活はとても効率的になったと思いますが、うっかりすると逆にコンピュータに使われてしまいます。コンピュータがなかったらできなかったようなこともできるようになりましたが、一方本来人の脳のブレーカーが働いて忘れるべきだったことも無理やり思い出させられたりします。インターネットも同じですが、機械に使われるのではなく、機械を使いこなして効率良くしなければいけないことをこなし、その結果新しい創造に余計に脳を使えるような、そんな形があるべき姿だと思っています。中々難しいのですが・…。皆様は如何でしょうか? 


10月6日    <13兆円>
本日の日本経済新聞の一面に二つの「13兆円」がありました。一方は99年度第二次補正予算の額。もう一方は米ワールドコムによるスプリントの買収額。経済大国と言われた日本の景気回復の為の金額と、一私企業による買収額が奇しくも同じとは…。無論、買収は現金ではなく、株の交換によるものですが、アメリカの資本市場の大きさを感じさせます。日本も個人が主役として有価証券売買に参加して行くことによって、資本市場が育っていくと良いと思います。そしてマネックスがその一助になれればと願っています。


10月7日      <ちょっと一息>
今日はアメリカのトレーダーが若い研修生に出す簡単なクイズをご披露します。
コップが3つ伏せてテーブルの上にあります。中は見えません。その内の1つの内側、コップの底に“当り”と書いてあります。あなたは3つのコップのうちの1つを伏せたまま手元に持って来ます。相手の人が伏せてある2つのコップの内側を、あなたに見えないように覗いて、(必ず1つは外れですから)外れのコップの底をあなたに見せて、「これは外れですね」と言って捨てます。さて、今コップはあなたの前に1つと、相手の前に1つあります。2つのコップのうち、1つが“当り”です。もし取り替えることができるのなら、あなたは取り替えますか?それとも2つのうちの1つが“当り”ですから、確率は2分の1だから敢えて取り替えませんか?


10月8日    <昨日の答え>
昨日のコップの問題は、相手の人がコップの底を見せて“外れ”であることをあなたに見せてから捨てた訳ですが、底を見ないでコップ1つを捨てた場合とでは答えが違います。前者(昨日の問題)の場合は、あなたのコップが“当り”の確率は3分の1、相手のコップは3分の2、底を見ない場合は、どちらも3分の1になります。アメリカのトレーダーは、このような確率のトリックの話が好きでよく考えています。また何か面白い例を思い出したらご披露いたします。


10月12日    <新聞休刊日>
今日は新聞休刊日。
世界広しといえども、しかもこのような文明大国において、ジャーナリズムが自ら報道の自由を放棄している国なんて恐らく日本だけでしょう。しかもお互いに仲良く手を取り合って各紙一斉にお休みです。まぁ、インターネット版の方はちゃんとアップ・デートされているみたいだし、いずれ新聞“紙”なんて減って、多くの人がインターネット上で見るようになるのだから構わないのでしょうか?


10月13日    <一人当たりGDP>
日本の一人当たりGDPが、12年ぶりにアメリカの一人当たりGDPを下回ったということです。ちょうど私が社会人になった頃からずっと日本人の方が生産性が高かった訳ですが、ついにまた元に戻りました。人口も減りながら、生産性も落ちてきている訳ですが、政府は相変わらず国民総生産自体のプラス成長をうたっています。そんなことが果たして可能でしょうか?もっとしっかりと現実を注視し、合理的なゴール・セッティングをすることが必要なのではないでしょうか?元々人口密度が高過ぎて、“兎小屋”などと言われてきた訳ですから、一人当たりGDPを世界一として、各個人の生活水準を高めることをゴールとするという選択肢があってもいいと思います。実は、私は個人的にはこのような選択肢には反対ですが、少なくともそのような選択肢も提示されて議論されるべきだと思います。“所与”のものが多過ぎると思いませんか?


10月14日     <今朝のニュース>
今朝のニュースに銀行の全面提携の記事と、商社の特損記事がありました。これらの銀行の株価は11%上昇し、この商社の株価は11%下落しました。提携によるメリットがどれだけあるのか?特損によりどれだけ株主資本は減少したのか。それらの大きさと、株価の変動幅との関係は、中々興味深いものがあります。一つ言えることは、この国の企業会計は、まだまだ中々外からは見えにくいものが多そうだということです。


10月15日    <オリエンテーション・コミティー>
以前から発表して参りましたオリエンテーション・コミティーの計画をいよいよ稼働させようと思います。お客様の中から20人の方に特別委員という形でマネックスの商品・サービス・経営の方向などにつき代表取締役に対する諮問機関という位置づけで御意見を頂くというものです。「顧客主義、ただそれだけ」とうたっているマネックスの理念の実現を担保するための仕組みです。コミティーの内容や、コミティー・メンバーへの応募のページを、今晩HP上にアップ致しますので、宜しくお願い致します。


10月18日    <グリーンスパン>
グリーンスパン議長の発言は大きな影響が出ましたが、その中で、「投資家はいざという時にはその損失を最小限に食い止めるために全ての資産の売却を考えるので、どの金融資産であれば安全だと言うことはできない」とも言ったそうです。いわゆるパニック・セールによるバブルの崩壊の問題ですが、流動性のプレミアムというものがどれだけ大きいかを良く表しています。全ての資産は「自分」がいくらで売れるか、買えるかが重要であって、「評価」額が最後はそれほど重要でない訳です。いろいろな投資をする時に、その資産がどれだけ流動性があるか?市場価格から見てどれだけの下げ幅でお持ちのポジション全てを売れるか?などを常に気にかけておくべきでしょう。


10月19日      <世界最大債権国>
日本は世界最大の債権国です。世界中に“債権”という形で、ある意味でアップ・サイドの無い、良くて元本を返してもらえ、下手をすると取りっぱぐれてしまうお金を供給しています。そういう“債権”型のお金が、廻り廻って“エクイティー”型のお金に変わって、“資本”という形になって日本に入って来たりします。一年ほど前までは、よく、「どうしたら外資を導入できるか」という議論がなされていました。これってちょっと変じゃないですか?日本の生産性が戻って来たら、片やアップサイドの無いお金を出して、片やアップサイドはみんな持って行かれてしまいます。“国”の資本政策といったものがもっとあってもいいと思うのは、私だけでしょうか?


10月20日    <史上最大、世界最大の経済的出来事>
日本におけるインターネット人口は1500万人ぐらいと言われていますが、これから5年間で5000万人にまで増えると言われています。増加分の3500万人というと、日本の人口の約30%に当たります。インターネットを使う人の多くは労働可能人口でしょうから、これは労働可能人口の50%ぐらいになるでしょうか。5年間で、日本のGDPの担い手の50%近くに対して新しく普及するインフラ。これって、やはり史上最大、世界最大の経済的出来事ではないでしょうか?


10月21日    <開業からのこの半月に起きたこと>
開業以来、既にいろいろなことが起きました。今日はその内容につき、HP上で公開することと致しましたので、「つぶやき」に代えて、是非そちらを御覧になって下さい。


10月22日    <生活のバランス・シート>
今100万円を持っていたとして、ある人はこの低金利で預金し、ある人は株式投資しました。3年経って景気が回復し、消費性向も向上し、車を買おうと思いましたが、景気の回復と共に物価も上昇し、100万円だった車が150万円になっていました。預金を取り崩しても100万円と数千円、一方株式はいくらになっているでしょうか?過去50年とかの長いデータで見ると、世界各国の株式市場の上昇率は少なくとも物価指数の上昇率と等しいものです。買いたい車の値段が上がっている時には、手持ちの株式ポートフォリオの値段も上がっている蓋然性が高い訳です。こちらの方が、金融資産を預金で持つよりも生活のバランス・シートとしてはバランスが取れていますよね。少なくとももう少し株式的な金融資産を日本人は増やすべきでしょう。


10月25日      <チャート分析>
マネックスメールの編集長は、中々のチャート分析通ですが、私も実は昔はチャート分析を毎日しておりました。いろいろな手法も一応勉強しました。罫線とか、フィボナッチとか、いろいろです。チャートが果たして有効かという議論はママありますが、私は実は有効なものと考えています。無数の投資家が、各種の情報にアクセスしながら、それぞれの判断で市場に参加し、その結果が市場の動きとして記録されて行きます。その動きには、「神の見えざる手」とは言い過ぎかも知れませんが、何かしらの真実がある筈です。その動きを良く分析して、市場の状態を判断する一材料とすることには意味があると思っています。(あくまでも一材料ですが)


10月26日     <オークション・サイト>
アメリカに eBAY というオークション・サイトがあります。世界で初めてこのコンセプトを導入し、もっとも成功しているサイトです。このサイトを使って、違法に架空の会社の株券とか、売却制限のある株券を競売にかけようとした人たちに対して、米国証券取引委員会(SEC)から取引中止命令が出されました。(日経マネー情報より) 興味深いのは、オークションの仕組みを提供している eBAY 自体に対してはお咎めが無かったということです。インフラの提供とか、自己責任とかに関して、日米の考え方の違いを感じます。アメリカはこの辺りがとてもシンプルで、必要以上の規制とか消費者保護をせず、結果的にとても効率的な社会インフラを作ろうとしているように見えます。


10月27日     <素朴な疑問>
今日は金融とは全然関係ないのですが、私が小さい時から抱いている素朴な疑問について書きます。このメールをお読みになられている方の中には科学者の方もいらっしゃるでしょうから、どなたか私の疑問を払拭して頂けないでしょうか?
温度には下限があります。いわゆる「絶対零度」(摂氏マイナス273度)で、温度は原子が運動するために発生するので、原子が完全に静止状態になった点であるといいます。しかし温度に上限はあるとは聞きません。でも、速さには光速という上限がある筈ですから、原子も光速より速くは運動でいでしょう。そうすると温度にも上限がある筈のように思えるのですが、どうなんでしょうか?


10月28日      <数式>
昨日の私の疑問については多くの御解答を頂きありがとうございました。決定的にクリアな御解答は残念ながら頂けなかったのですが、どうやら光速に近づくと、特殊相対性理論によると質量が増大して行くので、その結果、運動エネルギーは限りなく増大して行き、温度にも上限は無いようです。このようなことは数式で説明されるととってもクリアになります。本日の経済紙のニュースで、邦銀がコーヒー豆の輸入価格(当然原価はドル建て)の円建て価格に対するデリバティブを開発したというニュースがありました。こう書かれるとやたら難しそうですが、これは二つの物にそれぞれの価格変動率があり、その二物の価格間に相関関係がある時に、二物を掛合わせたものの価格変動率はいくらかという数式を知っていると簡単なものです。二物の価格変動性をV1、V2、相関係数をC、とすると、二物をかけあわせたものの価格変動率Vは、
VxV=V1xV1+V2xV2+2CxV1xV2
と表せます。(文字化け防止のために、見にくい数式で恐縮です)
V1とV2の大きさが同じで、完全に逆相関(C=-1)していると、Vはゼロになる訳です。数式って、面白いですね。


10月29日       <バランス>
兵庫県の信用組合が、例のP債で損失を出し、破綻申請しました。99年3月末の預金残高が445億円、購入したP債が約40億円と報道されています。預金額の10%をひとつの仕組み債に投資していた訳です。これは明らかにバランスが悪いと思います。そもそも個人金融資産の90%が預貯金、生命保険などに在るのもバランスが悪いと思いますし、一方その資金を運用している銀行・生命保険などの資産の在り場所もかなり偏っています。このような偏りが大きく是正して行く過程がこれから始まるべきですし、始まるのでしょう。微力ながら、その動きの推進力に僅かでもなりたいというのがマネックスの考えです。