「ポートフォリオ再考」「来年のリスク」と、年末の個人投資家心得みたいなつぶやきを連続で書きましたが、今日は投資に臨む際のそもそもの考え方について、ちょっと書きたいと思います。投資は安く買って高く売れば、その目的を果たしそうなので、マネーゲームとして捉えることも出来ます。そうでない考え方もありますが、先ずはマネーゲームとして捉えた場合から考えてみます。

 

 安く買って高く売る。書くのは簡単ですが、実践するのは簡単ではありません。勘や運動神経で上手く行く場合もありますが、そうした場合の結果は、リスク許容量が無限にあってもゼロ引く取引コスト。実際にはリスク許容量の限界に触れて都合の悪い時に強制退場させられたり、感情が行動の邪魔をするので、ゼロ引く取引コストよりも遙かに成績は悪くなります。

 

 単に安く買って高く売るのではなく、マーケットの文脈を理解して、しっかりとした仮説とシナリオを描き、そのシナリオの中で投資行動すべきです。そして仮説が崩れたら、投資内容を見直すべきです。マーケットの文脈を理解するとは、世界の政治経済情勢などを或る程度網羅的に把握・理解し、その中で、どうして今のマーケットが、今のマーケット状況になっているか、と云うことを逆算して理由付けを完成させることです。その上で仮説を立て、シナリオを描き、ポジションを作り、モニターする。これは中々大変な作業です。しかし、付随的に、とても多くのことを知り、考え、理解する機会となります。

 

 安く買って高く売る、のではない考え方、それは投資対象の企業や国・プロジェクト・物件などの未来や理念にかけると云う考え方です。仮に企業の株式を投資対象と限定すると、ひとつの分かりやすい考え方は、自分に20代の子供が(或いは分身が)10人居て、世界中のどの上場企業にも就職させることが出来るとしたら、どこに就職させるか?と云う考え方です。そうすると、一業態に集中就職させようとも思わないし、他人の言葉を鵜呑みにして就職先を決めることもしません。独りでに分散され、自ずと転職のタイミング(即ち入れ替えのタイミング)も分かるものです。

 

 ただ、過去数十年の、日本の新卒大学生の就職先人気ランキングの上位の企業の株式を、その時々買ったとすると、そのポートフォリオは、TOPIXのリターンを大幅に下回ることが計算して分かっています。そうです、高値掴みをしてしまうのです。特にこの例では、自分一人のたった一回の人生で、かつ若くして決断せねばならないので、勢い、間違いやすいのです。全く知らない他人ではないが、自分自身でもない、親戚の子供の就職先を考える程度の距離感がいいかも知れません。要は落ち着いて俯瞰することが肝要です。

 

 ひとつめの考え方の、マーケットの文脈を理解すると云うことも、全体を俯瞰することです。鳥の目、宇宙飛行士の目になることが、投資を楽しんでいくためには大切です。そんなことに役立つ本とかをこの年末年始に読むのもいいかも知れませんね。