スウェーデンは現金のない世界、キャッシュレス・エコノミーに移行することを表明している国です。実際現金を使う場面はほとんどなくて、全てクレジット・カードで支払えます。日本は未だに磁気テープをスワイプする方式が多いですが、当然スウェーデンではEMVと呼ばれるICチップを入れたカードをカードリーダーに挿して、利用者が自分で暗証番号を入力して決済する方式が使われています。日本もオリンピックまでには、ほとんどがこの方式に替わっていくでしょう。そうでないと外国からの旅行者は、クレジットカード番号が盗まれないか心配でしょうがないでしょうから。

 

 スウェーデンでは、現金が必要なのは、教会で寄付のためにろうそくを買う時と、有料公衆トイレを使う時ぐらいしかないようです。驚くべき事に、ストックホルムの街中にある多くの銀行は、「現金ありません」と云う貼り紙がしてあって、現金の取扱いをしていません。凄いですね。しかし、キャッシュレス・エコノミーへの移行は、小さい国、もしくは通貨(紙幣)に対する信認が低い国(偽札が造られやすい国)では進むでしょうが、アメリカや日本のような大国では、先ず起き得ないと私は考えています。

 

 紙幣はウルトラ分散型台帳による価値交換システムのようなものであり、ネット接続や電気がない状況でも常に使えることが出来る便利なものですし、何よりも紙幣発行大国にとっては、紙幣発行は“儲かる”からです。紙幣は、国にとっての借金証書のようなものです。しかしひとたびその紙幣が武器売買や麻薬売買のようなブラックな世界で使われたりすると、或いはなくなったり、完全に燃えたりすると、二度と銀行を通して国庫には価値との交換証書として戻って来ません。ですから国からすると借金が棒引きになるような形になります。金融的に云うと、デット・エクイティ・スワップが起きるのです。借金のつもりで発行した紙幣が、返さなくていい株に替わるのです。

 

 このようなメリットを享受出来る国は、安定した通貨・紙幣供給をしてきた、そして偽札も造られにくい、大きな主権国家しかありません。それはアメリカと日本、あとはこの二国に比べると規模が小さいですが、ブレグジットを果たしたイギリスくらいしかないでしょう。だから、テクノロジーとイノベーションの大国であるアメリカは、変な話ですが、日本と共に、いつまでも現金が残る国となるでしょう。いや、もしかしたらテクノロジー好きが過ぎて、アメリカではキャッシュレス化が進むかも知れません。そうすると日本だけが現金大国として残るかも知れませんね。そうなったらそれはきちんと残した方が、“独特唯一の需要”に応えられるので、そして“儲かる”ので、きっと日本にとっていいでしょう。

 

 そんなことを思った、今回のスウェーデン行でした。明日には日本に戻ります!