何年も何年も前に書いたことがあるのですが、資本主義経済国においては、国民は「直接」個人投資家か「間接」個人投資家かの違いこそあれ、なべて誰でも自国の株式市場へのエクスポージャーを持っているものです。即ち、直接株式を持っていなくても、巡り巡って株価が上がれば儲かるし、下がれば損をします。

 何故ならば公的年金から企業年金まで、なべて年金資産の中には株式が組み込まれていますから、株価の動向次第で年金価値も上下します。仮に株価が下がっても年金が予め約束した、或いは目標とした利回りで払い出しをすれば、それは例えば公的年金であれば政府の肩代わり・債務が増えることになり、それは即ち最終的には我々国民が税金で補うなどしなければ財政破綻を起こしてしまいますから、株価が下がれば国民の懐は寒くなります。繰り返しますが、これは直接株式投資をしていなくても、程度の差はあれ同じことです。

 我が国政府のバランスシートは債務超過状態になっていますが、資産の部は国有企業(或いは株式会社化はしたが株主が民間に移行していない会社など)の株や国有地などですから、一般に株価などの資産価値が上がれば資産は膨張し、債務超過状態を直すのに効果があります。直接・間接、影響の大小はあるものの、我が国国民は皆我が国の株式市場の価格が上がる方がいいのです。

 そういった理解が我が国の政治家、社会の間で低い気がします。このことが、我が国の株価低迷の根底にある問題ではないでしょうか。政府はこのような仕組みを、もっとくだいて説明すべきです。そもそもこのような理解が低いことに関して、私たち証券業界も、もっともっと啓蒙活動をしていかねばならないと思います。