愛のバカ The Nuts
韓国ドラマのストップモーションのように…
『嘘だ…嘘だといってくれ…!』
そう思いながら、自分の頭の血が
少しずつ…少しずつ引いていく感覚を覚えた。
それは韓国ドラマによくある『次回に続く…』の瞬間にストップモーション画面とともに流れる、激しいバイオリンの音が響く衝撃の瞬間のようだった。
こんなにも暑いのに、体の熱さえ冷えていく…
自分自身、なぜこんな体の反応があるのか理解できなかった
それなのに…それは本当だった。
『ぼく…実はかなり前から結婚してまして…』
そういう彼の横には、大人しそうで、少々地味に見える女性が映りこんだ。
二人が手をつなぐ様子さえ映らない。
だが二人は、新婚というよりも更に、長い時間を過ごしてきた香りが映像から漂ってきた。
動画が半分に差し掛かる前に、私は動画のバツ印に指を伸ばした。
絶えられなかったのだ。
初めての…〇〇ロス。
『そんなはずはない…』
今まで生きてきた中で、夢中になった俳優や歌手は星の数ほどいた。しかし、熱愛報道が出ようが、いわゆる『なんたらロス』になった経験が一度もないのだ。
それ故、彼の結婚のショックとともに、自分の体や心に起こった反応そのものを理解するのに大変な時間を要する事となった。
私には歌えない歌
あのショックから、まず彼を連想するようなモノさえ見れなくなった。
彼の好きな電車や旅行、線路でさえ、眼をそらしてしまう。
胸の奥の…奥の方にある傷んだ部分に触れないように、体が勝手に傷をかばうように、そこから離れるように自然に体が動くのだ。
その度、彼が知らぬ間に私の心を蝕んでいた事にまた…気付かされる。
会ったこともなく、もちろん相手は私の存在さえ知らないのに、裏切られたような気持ちになった自分がいたのだ。
それは想定外で…予想外で…不愉快で…
とにかくあり得なかった。
一ヶ月以上もたったのに、その繰り返しの日々が未だに続いている。
手の届かない相手に恋をする時、叶わなかった気持ちから相手に憎悪を抱くより、相手の幸せだけを願える人などいるのだろうか…?
今回取り上げた曲は、叶わない恋であっても、いつまでも相手を大切に思わずにいられないという半ばあり得ない?男性の気持ちを表現している。
無論…私には歌えない歌詞である
사랑의바보 더 넛츠
愛のバカ The Nuts
그렇게 말하지 마
そんな風に言うなよ
제발 그녈 욕하지 말아줘
おねがいだから彼女を悪く言わないでくれ
그 누구보다도 내겐 좋은 여자니까
誰よりも俺が好きな女なんだから
내가 하고 싶어 잘해준걸
俺がしたくてよくしてあげた事に
고맙다 말 못 들어도
ありがとうの言葉がきけなくても
잠시나마 웃어주면 난 행복해
しばらく笑ってくれたら 俺は幸せ
원하는 좋은 사람 나타날 때 까지
彼女に相応しいいい人が現れるまで
난 잠시 그녈 지켜줄 뿐야
俺はしばらく彼女を守ってやるのさ
아무것도 바라는 것 없기에
何も望んでないから
그걸로도 감사해 워
それさえも感謝するよ
언제든 필요할 땐 편히 날 쓰도록
いつでも必要な時 気軽に俺を呼んでくれ
늘 닿는 곳에 있어 줄 거야
いつも近くにいてあげる
어느 날 말없이 떠나간대도
いつか 無言で去っていっても
그 뒷모습까지도 사랑 할래
その後ろ姿さえも 愛してしまう
原曲は日本のあのヒット曲
この曲…聴き覚えがある方も多いはずだ。
それもそのはず、原曲はWANDSと中山美穂の歌った名曲『世界中の誰よりきっと』なのだ。
日本の歌詞では、男女の恋を爽やかに歌い上げる内容だが、韓国でカバーされた歌詞は、ただ…ただ…切なく…そして限りなく優しい。
日本が誇る作曲の織田哲郎氏の奇跡のメロディは、どんな言語で歌われていても、どこにいても、変わらず心を鷲掴みにして感情の海に誘われてしまう。
しかし、歌詞とボーカルの世界観は個人的にこちらの韓国語バージョンの方が私はずっと好きだ。
このバンドは、残念ながらこの曲以外のヒット曲をほとんど残さなかったが、メンバーの一人、チ・ヒョヌは現在、俳優としてドラマの主演を数多く演じる売れっ子俳優となっている。
バカだったのは愛ではなく…私
「なんでそんなにショックうけてんの?」
とツレに笑われる。
半ば呆れながら、笑うツレと自分をあざ笑うしかない。
知らぬうちに私の心を蝕んでいたのは、Youtuberのスーツという鉄道ヲタクの青年だった。
顔がカッコイイなんてお世辞にも言えないような、痩せたヲタク青年である。
しかも職業をYoutuberとし、時たま、その人格を疑うような発言や、動画も投稿する。
なのに…なのに…私はこの青年の影響で、鉄道ヲタクに足を突っ込むことになった。
もともとツレも鉄道好きだったのに、ツレの影響は全く受けず、この青年のすごい引力で、鉄道の世界の魅力に誘われてしまったのだ。
気がつけば鉄道に乗る度、五感で、全身で鉄道を味わうようになり、駅員を子供のように凝視するようになった。
アナログ人間で、SNSを苦手としている私が、気がつけばYoutuberに心を奪われていたことに大きなショックをうけた。
そのショックの先に、彼の伴侶の女性を憎く感じ、強い嫉妬の感情が生まれていた自分にも気づき、何よりそんな狭い心を持った自分自身がショックである。