
俺を創った元素は、一つ残らず死に絶えて、ただあの刻の美しい貴方に諂って形成した。
貴方を守れる強さと、せめてもの醜い自分を取り繕うように美しく見えるように。
ただ俺は知ったんだ。
兄さんは俺を最初から愛してくれた。
愛は最初から俺に向けられた。
知ることができた。
長い時の中 もう二度と失われることのない愛の記憶。
----------------
「ヘイシュイ、お前なんでこの町にいる?」
両手に紙袋
長身 長髪、不穏極まりない出で立ち、端整な顔、、、、、
「シュエンだ。」
真名を晒すこの男はかつての敵手。
「何、名乗っちゃってんの? 時の流れがお前をアホにしたの?」
両手の紙袋を背中に隠し、ギロリと俺に白眼をくれる。
「あの名は棄てた。」
横をすり抜け、これ以上の会話は無用とばかりにこちらを見ようともしない。
「待て、、、、、殿下、、、、、兄さんは今この町で人探しをしている。」
100年程前、重慶の田舎でその人に会った。
かつての親友だと改めて俺に紹介した。
山奥の古い家屋で、住み込みで働いていたある人と兄さんは、再会した。互いに喜び合い しばし屋敷での滞在を共にし、昔話に花を咲かせた。
かつて荘厳だったその人は、質素に暮らし、障害をもろともせずに溌剌とし、面影はそこそこに湛えつつもあの頃のような華やかさは微塵も感じなかった。
「だからどうした。俺には関係ない。」
黒髪ロング ピアス 胸元タトゥー。
こんな輩が、生活用品をたんまり買い込んで、日中歩いてるなんて 傍目に見ても異様だろう。
「俺はあると思うぜ。水の流れか、そよ風か?」
「水じゃない。」
「じゃあ 風か。」
「....」
トントンと自分の胸を叩いて見せると、シュエンは開いた襟を寄せる。
左手から買った品物がドサドサと落ちる。
「大飯喰らいのお前は食べ物を落とさず 懸命な判断なんだな。」
ぐぬぬって顔くらいすりゃあいいのに。。。。。
歯ブラシ 石鹸 その他諸々 それと、、、、おぉお、、、、、こんなものまで。。。。。
「血雨探花 貴様 何が知りたい!!」
「シャオホワって呼んでよ。あんたより年下なんだしさ。」
それにもう、俺は探し求める花も、ボロい小さな傘も必要ないんだ。
俺が兄さんのそばにいて永久に守れるんだから。
2人で住むアパートもある。不自由ない暮らしに贅沢だよと困惑する兄さんを抱きしめて、口づける事だって日常茶飯事なんだから。そうしたら兄さんは笑いながら頭を撫でてくれる。そんな幸福極まりない毎日なんだから。。。。。
道の真ん中で 俺たちは、互いの想い人に想いを馳せる。
車はクラクションを鳴らし、自転車は避けて、舌打ちをくれる。
そんな俺達は、迷惑な恋する鬼王。
誰一人だって この恋は止められない。
「情報が欲しいなら 俺の言う時間に来い。」
道の端に避けたシュエンは、スマホを取り出し、ライン画面を差し出す。
「追加OKだ はーごんず。」
「まったく 何百年経っても虫唾が走る。」
「ところで1日のうち好きな時間は何時だ。」
何いってんだこいつ?と 顔をしかめながら、両手にまた紙袋を抱え 思案する。
「朝の6時半から7時だ。」
「じゃあその時間に出向くとするよ。」
そうじゃない‼連絡を待てと怒るかつて最強の玄鬼。
「城主 貴様は本当に人の気を昂らせる達人だな。お前の太子殿下は嫌気がさそうものなのに.....」
続けて、シュエンは、吐き捨てるように言う。
「その時間は、朝食を作って食卓を囲む時間だ。」
邪魔したら、三界全て壊滅させるからなと息巻いて背を向け歩き去る。
手に持ったままのスマホに兄さんから着信がある。
「兄さん。どうしたの? 夕食? 良いの?嬉しいなあ 兄さんのご飯はどれも絶品だからね。春巻きをお土産に帰るよ 待っててね。」
幸せ。
最近出来たスーパーに寄ってみよう。
倹約家の兄さんが納得するような買い物をしなくちゃな。
それにしても ヘイシュイの奴、、、、、。
見掛けによらずちゃんとしてんだなあ。
ファーマシーにも寄るとしよう。
ストックが乏しかったはず。
兄さんは武神だから体力も天井知らずだからな♡
✡シェリエンの毒毒クッキンコラムは九龍地区の情報ペーパーに載ってるとか。
続く。