ワルーイ ソンミンさんです^^;
雨の降りしきる昼近い 暗い午前中
ダウンライトだけでは、足りない採光
天窓は蒼白く 光を下ろし、スポットライトのように一席を照らす
「いらっしゃいませ。ご注文のコースで変更はありませんでしたか?」
それを頼む、コマウォと、ジョンウニヒョンは 一瞬だけ笑顔を作る。
異様な雰囲気の客に 厨房から覗くものもいる。
チラリと視線を遣ると、皆 そそくさと持ち場へと戻る。
「かしこまりました。しばらくお待ちください。」
一体 ヒチョルさんに何があったんだ?
恐ろしいほどのやつれ具合
「ああ、リョウギ! 僕ワイン欲しいな。見繕ってくれる?ヒョンたちもどう?」
ソンミンさんは、二人を端から見て 微笑む。
「ソンミナ、飲みたければ、頼んで構わないよ。」
どうでもいいのだろう。 殆ど上の空だ。
こんな調子で 食事が出来るのだろうか?
ヒョンたち以外の客は誰もいない。
月曜日の予約は、こんなもの。
ワインセラーに、ワインを探しに行く。
料理を邪魔せず、かつ ランチに合う軽めのもの。
「お待たせいたしました。コートロティ 2005年物です。お昼ですが、男性にはこのくらい強めでも良いかと。香りも豊かですが、肉料理の邪魔はしません。。。。」
ブルゴーニュ地方の当たり年ワイン。
ソンミンさんは口が肥えてそうだし、安物はご法度だろう。
それでいいよ、 とテイスティングする。
「・・・・美味しい。 キュヒョナも好みそうだ。」
彼の発した名前に反応する。
態度に表さぬよう、身体に力を込める。
ワイングラスを揺すりながら、ニコリと微笑むソンミンさんを視界から追い出す。
「お気に召されて幸いです。 ごゆっくりどうぞ・・・・・」
「・・・・・さ、前菜も来たことだし 頂こうか。」
わざと名前を出した
僕の反応を伺うように。
「ジョンス、、、、、眠りたい。。。。。 帰してくれ。」
「食事したら、連れて帰る。」
「ヒチョルヒョン、眠れてないの? 顔色最悪だよ。」
順に紡がれる、虚無な会話。
「ヒチョルヒョンが倒れる前に、僕に聞きたいことあるんでしょ?ジョンスヒョン。」
まだ前菜なのに。
こんな会話・・・・・
僕は、厨房の入り口近くで 聞き耳を立てた。
フロア中央までの距離は さほど遠くない。
「ソンミナ、ヒチョルを諦めてくれ。」
「ヒョンたち 食べないと、リョウギに失礼だよ。」
「ソンミナ、、、、お前さえ俺のもとに戻ればそれでいい。」
ヒチョルは苦しげに懇願する。
「率直に聞く。お前たちの間で何があったんだ。」
「素直じゃないね。 俺からヒョンを獲らないでって言いたいんでしょ?」
なんて会話だ。
こんなところでする話ではない。
ここを選んだのも、僕への当てつけとしか思えない。
「このままじゃ ヒチョルは駄目になる。離れて欲しい。」
「それはいいけど・・・・・。僕も簡単に返すと困ることになるんだ。」
ソンミンさんの言いたい事はアノ事だろう。
「ソンミナ 安心しろ。俺がいる。。。。。」
ヒチョルはソンミンの手を取る。
「ありがと ヒョン。 その時は連絡するから、ジョンスヒョンと居てあげてね。」
「おまえ! どこまで馬鹿にする気だ!!!」
激昂したジョンスヒョンが立ち上がる。
「ヒョン!落ち着いてください。・・・・・その・・・・料理を召し上がってください。」
これ以上の話し合いは無理だ。
話し合いにすらなっていない。
飛んできた僕に、ジョンスヒョンは、すまないと頭を垂れる。
コースには早いけれど、温かいバジルのクリームスープをサーブする。
一緒に、仔牛のカツレツも。
落ち着かさなければという思いで 僕は、僕の仕事をする。
「僕のビストロです。ですから・・・・・どうか 食事を楽しんでください。」
「勿論だよ。ありがとう リョウガ。」
ジョンスヒョンは力なく微笑む。
「ソンミナ、俺にもワインを注いでくれ。」
ヒチョルヒョンは、ソンミンの注いだワインを一気に飲み干す。
しばしの間 食事は静かに続く。
会話もなく。不気味なほど静かに、食器の音だけがフロアに響く。
「美味しいよリョウギ。君も聞いて、、、僕、ヒチョルヒョンのこと好きです。でも、もっと好きな人が出来たんです。」
「あの 僕次の皿を持ってくるんで・・・・」
いいから 聞いてと 僕をその場に留める。
「それに、ジョンスヒョンとヒチョルヒョンの関係も知ってます。だから清算出来るうちに、ヒョンたちは以前に戻ってください。」
「何を勝手なことを、、、、 ヒチョルをこんな風にしたのはお前だろう。」
「それは違いますよ。最終的に閉じ込めたのは貴方だ。」
「何が起きているのか話す気がないのなら 話はここまでだ。」
「僕の元から ヒョンを連れ去ったのはジョンスヒョンですよ。」
「そうでもしなければ、もっと衰弱するのは解りきっている。」
ヒチョルは、二人の話など耳に入っていないかのように覇気がない。
ヒョンはそれほどまでに、この人を・・・・・。
悠長にワインを煽りながら、言葉を返す。
まるで 全く自分に非が無い様に。。。。。
「話しても良いですよ。 その代り場所を移しましょう。僕のマンションに。」
「・・・・いいだろう。 リョウギ デザートは申し訳ないが遠慮するよ。」
ジョンスヒョンは早々と席を立つ。
「待って。今夜にしよう。 リョウギ 君も立ち会って。」
「!なぜ 僕が!」
「君も関係者だろう? それにデザートは食べたいし。」
不敵に笑うソンミン
行かなければ キュヒョンに降りかかる事は目に見えている。
「今夜 用事でもあれば、君と行動する人も一緒に、、、、」
「いえ、、、、、何も。 伺います。。。。。。」
この人は、容赦ない。
「じゃあ、もう少しワインを堪能しよう。ね ヒョンたち。」
「否、一旦 ヒチョルを休ませる。 お前は食事を続けろ。」
ソンミンは、立ち上がり、ヒチョルの傍に歩み寄る。
「ヒチョルヒョン 今晩僕の元へ。待ってるね。」
耳元で囁き、顔を覗き込む。
ヒチョルはやっと生体反応を示す。
大きな目は見開き、頬は薔薇色を点す。
ジョンスヒョンは、抱えるようにヒチョルを立ち上がらせ、カードを僕に渡す。
「リョウクが終わり次第連絡するね。 夜にね ヒョン。」
店のスタッフが、扉を開け、傘をさす。
降る雨は、滝のように地面に跳ね返り流れる。
「さてと、違うワイン頂こうかなぁ。 チーズの盛り合わせに合うやつでも。」
僕は鈍い鉄色のボルドーワインを選んだ。
渋みの増した ビンテージ。
軽やかさはないに等しい
ワインオープナーをポケットから出すと、
僕がやるからと 手の平を向ける。
「下がっていいよ。 リョウギの匂いがワインの邪魔になる。」
嗜好は似るとでも言うのか。
僕の血は滾っているんだ。
この人を嫌悪することで。