名越切通の周辺には、鎌倉の防衛にも関係すると考えられる平場や切岸、やぐらや火葬場など多く分布していて、中世鎌都市鎌倉の周縁の歴史的景観を良く残しています。
名越切通のピークに差し掛かるところに細い階段上の脇道があります。
イメージ 1

そこを上がると「まんだら堂やぐら群」に出ます。まんだら堂やぐら群は期間限定の公開となっています。
初夏、秋、春の概ね60日間に限られています。今日は「本日、公開中」の看板が建てられています。
イメージ 2

まんだら堂やぐら群は、一つひとつは2m四方程度と小規模で構造も単純なものが多いですが、150穴以上の存在が確認されている有数のやぐら群で、これだけまとまったやぐらを良い状態で見ることのできる遺跡は鎌倉市内にも少なく、たいへん貴重です。
イメージ 3

やぐらとは、崖に四角い横穴を掘り、主として内部に石塔を建て納骨・供養する施設です。13世紀後半頃から16世紀頃まで使われ、鎌倉及び鎌倉と縁の深い地域や寺院などにのみ分布する特殊な遺構と言われています。
イメージ 4

やぐらの中に並ぶ五輪塔は、後の時代に動かされているものが多いので、中世の姿そのままとは言えませんが、主に火葬した骨を納めるなどして供養するために建てられたものです。葬られたのは、武士や僧侶が多かったと考えられています。
イメージ 5
やぐらの中に並ぶ五輪塔は、供養塔・墓塔として使われる仏塔の一種で、主に火葬した骨を納める際に供養のため建てられたものです。五輪塔は、上から「空輪」「風輪」「火輪」「水輪」「地輪」とされています。

イメージ 6

イメージ 7

この場所の70cmほどの地下に火葬のための遺構があります。今は埋め戻されています。
イメージ 8

平成17年度の発掘調査の時の写真です。平場の地下から岩盤を四角く掘った穴が2基発見されました。穴の内部は黒く焼け焦げており、ここで遺体を火葬したと考えられています。やぐら群の前の平場では、火葬の痕跡が多く見つかっていますが、その多くは楕円形で浅い皿型をしていて、このような四角い形の火葬跡は比較的珍しいとされています。(写真:逗子市教育委員会)
イメージ 14

平成17年度の発掘調査で、正面尾根上の小さな平場に、大小10個の切石を敷き並べた遺構が発見されました。東半分が崩れて原型をとどめていませんが、その西側からは斬首されたと考えられる人の頭蓋骨1個が埋められた穴も見つかっています。
この遺構の性格は不明ですが、五輪塔などを据えて亡くなった方を供養する施設だった可能性があると考えられます。(14世紀代)
イメージ 9

この写真は、平成17年度の発掘調査で発見された遺構(上の写真)にあった斬首された頭蓋骨です。(逗子市教育委員会)
イメージ 12

再び、名越切通に戻り鎌倉方面に歩いていきます。前方に平場が広がっていたので、上がってみることにしました。
イメージ 10

この場所も、鎌倉を防御するための役割を果たしていたのでしょうか。
前方に白い煙を出している煙突が気になり、後で地図をみたところ民間の火葬場でした。
名越切通を挟み、まんだら堂やぐら群の前に、今も火葬場があることが偶然のことなのかどうか不思議な気持ちになりました。
イメージ 11
名越切通を抜け、鎌倉駅に向かうことにしました。(続く)
逗子駅から歩きはじめ、岩殿寺、法性寺、大切岸、まんだら堂やぐら群を通ったルートです。
イメージ 13