6月11日の記事で言及した書籍の注記が引用していたのは、1975年にスタンフォード大学のラファエル・フィンケルが製作を開始した「ジャーゴンファイル」と呼ばれるもの。

Wikipediaの"Booting"によると、bootingという用語は1958年には使用されていたとのこと("The term "boot" has been used in this sense since at least 1958")(*1)。

さて、コンピュータ用語の「ブートストラップ」とは別に、統計学でも「ブートストラップ法」と呼ばれる手法がある。これは、1979年にスタンフォード大学のブラッドリー・エフロンという教授が提唱した手法で、エフロンもほら吹き男爵の物語からこの表現を借用したとのこと。ちなみにエフロンが引用しているのは1988年のラスペ本とのこと(*2)。つまり、この表現は、当時相当広く使われている表現だと推測されますね。

時系列で考えると、次のようになります。

1941年10月 ロバート・A・ハインラインの"By His Bootstraps"(『時の門』)初版
1958年頃  コンピュータ業界で"booting"という用語が使用されるようになる。
1975年   R. フィンケル氏がジャーゴンファイルの編纂を開始。
1979年   B. エフロン氏が同氏の統計手法を「ブートストラップ法」と命名。

それにしても、日本語版の「ほら吹き男爵」で、「bootstrap」という表現を使用しているものはあるのでしょうか・・・ちらほらと見かけるのはビュルガー本で、ラスペ本の訳はほとんど無い。このあたりの歴史も気になりますね。


(*1) http://en.wikipedia.org/wiki/Booting
(*2)http://suzuki-tokuhisa.com/ushigome/6_naming.html

【参考】bootstrapの誤訳例
http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/150780/3/D_Tanaka_Hiroto.pdf