今回はCMCのピースメーカー。
同社2代目となるこのモデルガンは本体に1968年の刻印があることから68型とも呼ばれています。
CMCのピーメは、その前身である江原商店の時代(1960年代初め)にアメリカ製のキャップガンを参考にして作った自社製ピースメーカーが初代機となります。
この初代機は亜鉛合金を素材としたシングルアクションで、当時としては抜群のスタイルを持っていました。
その当時は、イタリア製ウェスタンの影響で日本にウェスタンブームが起きていて、ファストドロウシューターはアメリカ製キャップガンをカスタムして使っていましたが、そのキャップガンが製造中止となるなど供給元を失っていましたので江原商店のピーメが救世主となりました。

アメリカ製キャップガンはピーメの形をしていてもダブルアクション機能が付いていて、これをわざわざ外してシングルオンリーにカスタムして使っていたそうですから、最初からシングルアクションだった江原ピーメはシューター達に大いに歓迎されたようです。

しかし、江原のピーメは、左右張り合わせのいわゆるモナカ構造で、内部構造はあくまでもキャップガンの踏襲でしかなく、後に登場する『モデルガン』と言うには程遠い代物でした。

そんな中、1967年にMGCが出したピースメーカーシリーズは実物と同じソリッドフレーム、インサート入りながらも独立したチャンバーを持つ重いシリンダー、高いバネレートで確実な作動性を持つメカニズムを備えた本格的なモデルガンでした。


これを見て、その翌年に大慌てでCMCが作り直したのが2代目ピースメーカーでした。



この当時のモデルガンには個別の製造番号が打たれていますので、生産数を知ることが出来ます。
数字が4桁で頭に付いてるアルファベットがAとEだということは、5万挺以上は作られたことが想像出来ます。


1977年9月号の月刊ガン『モデルガンダイジェスト』でジャック天野ことネモ忠先生がCMC68を取り上げています。
ピーメが大好きなネモ忠さんは、ピーメの記事になると誌面が足りず、同年8月号との2部構成になっています。


8月号では、実物のことで誌面の半分を割き、残りの半分はMGCピーメについて書かれていましたので、9月号は冒頭からCMCピーメでスタートダッシュしていますね。
CMCに深く肩入れしてたネモ忠さんらしく、その取り上げ方に不公平感は否めませんが、このモデルガンが本来の楽しみ方で遊べてた時代を生きた方の証言でその良き時代を知ることが出来ます。

ピカドンについてもサラリと触れていますね。
記事にあるように、MGCがシリンダー内の前撃針で発火させていたのに対し、CMCは貫通シリンダーとバネ仕掛けのロングカートリッジの組み合わせで、フォーシングコーンに設置された前撃針で火薬を発火させるシステムでした。


これがそうですね。
カートリッジが異様に長く見えるでしょ。

シリンダーの長さとほぼ等しい長さがあります。

これは、当時から80年頃まで販売されていたCMCのダミーカートリッジ(当時は飾り玉という商品名)との比較。

飾り玉は銅の弾丸を圧入して薬莢本体にカミュラー溝を入れています。

ヘッドスタンプの文字入りが飾り玉です。

発火用カートリッジはお尻を押すとこんな感じで頭を伸ばします。

先端に火薬を詰める穴があいてるのが発火用カートリッジ。


かつては火を吹いてた銃口も完全閉塞状態です。



久しぶりに分解してみました。
MGCのピーメがスターム・ルガーのブラックホークによく似た独自メカニズムであるのに対し、CMC68は実物メカニズムにずいぶん近付いています。
MGCの登場後わずか1年程の短期間で作り替えたモデルガンですが、資料の収集と実現性に驚くべき能力の高さを感じます。


実物と同じく2分割になったグリップフレームですが、バックストラップにはウェイトを兼ねた補強が施されています。

グリップフレームをとめるネジもMGCに比べると実物に似た形になっています。
トリガーガードを下からとめる2本のネジが長いということを覚えていないと、誤って違うネジ穴に長いネジをムリにねじ込もうとしてネジ山を傷めることになります。

シリンダーハンドも実物に似たリーフスプリングタイプです。

ハンマーのシアノッチはハーフとフルの2段階だけで、セイフティノッチは省かれています。

トリガーは亜鉛合金です。
オプションでスチールトリガーが準備されていたかどうかは分かりません。
ボルト(シリンダーストッパー)はスチールプレスです。
このボルトも初期のタイプはハンマーにブラックホークとよく似たプランジャーが付いていて、それで可動していましたが、中期以降はこのプレスタイプに改められました。

CMC68のベースピンも特徴的な形をしています。
ピンヘッドのツマミ部分が一回り太く、お尻には一時固定用の溝が彫られています。


ローディングゲートスプリングを押し込んでとめるネジが付いているのもCMC68の特徴ですね。


オマケ
CMC初代ピーメです。