1930年代に生まれた357マグナムは、当初、法執行機関に優先的に販売されていました。資料によっては、悪人の手に渡らないように警察関係者だけに特別な契約で販売されたと書かれているものもあります。
357マグナム誕生の逸話によれば、装甲車やボディーアーマーで身を守るギャングを相手に強力な拳銃弾が求められ、エルマー・キース等の協力を得て開発されたそうですが、警察用の執行実包としては、いささか強力過ぎるのではないかと思います。
エルマー・キースは狩猟家で、ハンドガンハンティングでの可能性を追求し続けて、38splをよりパワフルにしようと研究を重ねた人です。
野生動物を撃つための研究成果が基になって生まれたのが357マグナムと言えるでしょう。
357マグナム開発のエピソードとして通説となっている、『武装したギャングを相手にするため』というのは、その強力なタマを対人用に使う大義名分を築くためなのではないか等と考えてみますが、とても高価な357マグナムでも当時かなりの数の警察署が発注し、採用しているところを見ると、需要は確かにあったのでしょうね。
レジスタードマグナムの時代に、仕上げを落として廉価にしたタイプが求められたというのも、警察は本当にマグナムを欲していたということなのでしょう。
昔の海外ドラマで、『ポリスストーリー』というのがありましたが、射撃訓練場でルーキーがベテラン警官に『なぜマグナムを使わないのか』というようなことを尋ねるんですが、ベテラン曰く、『通常のタマなら腕に穴があくだけで済むが、マグナムだと腕がちぎれてしまう。常識ある警官はそんなものは使わないのさ』と答えるシーンがあって、50年近く経った今でも覚えています。
こちらは実話ですが、ある警察署で357マグナムを署員に配備していたけれど、タマが高価なので射撃訓練は38splだけで行わせて任務の時だけ357マグナムを装填させていた。
強盗事件が発生したときに357マグナムを装填した銃で撃ったら、慣れてないので殆んどの署員が犯人の車に命中させることが出来ずに取り逃がしたというエピソードがあるのだとか。
銃は廉価版が出たけれど、タマはそうはいかなかった。という例ですかね。