BLKというのは、blow-backのことですが、ずいぶん昔にはblankやblackという意味で使われていることもありました。

1977年以前の月刊ガンには、読者交換コーナーというのがあって、読者同士が自分のコレクションを売買しあってたんですが、文字数制限もあって、略字がよく使われていました。
例えば、M&PとかDT、GMなんですが、これはミリタリー&ポリス、ディティクティブ、ガバメントを略したもので、コレクター同士では意味が伝わっていたんですね。
今見ると、ずいぶん大雑把で不安を感じてしまいそうですが、当時はこれで通じていたようです。

ところが、BLKについては、本来のblow-backではない使われ方をしているのが散見されました。
通常なら、『MGC GM BLK 7年前のもの。程度良し』という風に使われるんですが、たまに『CMC PM BLK』とか、『マルゴーDT BLK』なんてのがあるんですよ。
この場合のBLKというのは、そう、Blackという意味なんですね。

法律で黒いままのモデルガンの所持が禁じられたあと、コレクターは隠語のようにBLKを使って取り引きをしていたんですね。
もっとも、規制前のガス抜けタイプで黒いモデルガンなのか、ユーザーが金メッキを雑に落として黒く染め直したものなのかまでは分かりませんので、手元に届くまではハラハラドキドキしてたんじゃないでしょうか。
金色状態のモデルガンが届いて期待はずれに立腹し、文句を言ったら『誰もblackなんて書いてないだろ。それはblankという意味だ。MGCの箱にもblankって書いてるだろ』と切り返されてぐうの音も出せなかった。ということもあったのではないでしょうか。

今や、BLKという言葉も死語になっているのかなあ。
セミオートピストルのトイガンは撃てばスライドが前後するのが当たり前。『ブローバックする』という表現は使われていますが、『ブローバックタイプ』なんて表現はもう使われなくなったんじゃないでしょうか。

70年代のモデルガンは、手動アクションが主流でブローバックはいわば特別仕様という感じでしたからね。

ごく初期のモデルガンは手動でカートリッジの装填排出を楽しむ遊び方でした。
鬼印平玉という玩具火薬の粒をカートリッジ先端に仕込んでパチンという音を発する遊び方も出来るようになると、この火薬粒を増量して銃口から火焔と煙が噴き出す迫力のある遊び方が一般的になっていきます。

モデルガンが世に出て数年後にはMGCがこの平玉火薬の燃焼ガスを利用したブローバックを発明し、モデルガンの楽しみ方も幅が広がっていきます。
それまで手動アクションしか出来なかったオートタイプのモデルガンにブローバック機能が搭載されたものは『ブローバックタイプ』と冠されて、その頃からBLKという略称が使われるようになったんですねえ。

1971年の10月にモデルガンは大きな規制を受けて、けん銃型は銃腔が塞がれて表面の色も指定された色以外は禁じられてしまいます。

この窮地を救ったのがブローバックシステムで、売れなくなったけん銃型に代わり、フルオートのサブマシンガンタイプが数多く登場するのです。

ブローバックシステムが既存のけん銃型にも採用されていく中で、ブローバックに特化したモデルガンS&Wコンバットオートが登場したのが1970年。
しかし、その翌年に規制が発効してしまい、銃腔が塞がれて燃焼ガスの逃げ場がなくなり、バックファイアの危険を孕むことになって、けん銃型ブローバックの新製品開発は見送られることになります。

代わりにプラスチック製モデルガンの開発が進み、キャップ火薬が生まれ、閉鎖式カートリッジへと進化していき、手軽にブローバックが楽しめるようになりました。

しかし、時代の流れは思わぬ岐路を迎え、エアソフトガンが席巻するようになり、ガスブローバックの出現でモデルガンは急速に衰退してゆくのです。



9mmルガーの薬莢によく似たMGCのオープンカートリッジに平玉粒を落とし、台紙で蓋をする。
1個ずつ時間をかけて火薬を仕込んだそのカートリッジをマガジンに詰めて、グリップの底から叩き込み、スライドを引いて離すときの緊張感。
さらに引き金を絞るときの期待と不安に満ちた思い。
ボンとくぐもった音を発し弾き出されるカートリッジと、うっすら立ち込める白煙。硫黄とオイルの焼けた臭い。
平玉は燃焼後の残渣物が残りやすく、台紙がデトネーターに貼り付くと閉鎖不良を起こすので、出来るだけカスが残らないように工夫していましたよね。
チョコレートの箱を包んでるセロハンを丸く切り抜いて台紙代わりの蓋にして、その上から接着剤代わりに叔母のマニキュアを数滴垂らしてみたり。それがバレて叔母がヒステリー起こしたことも青春の思い出です。