.22のモデルガンに接し続けていると、大口径が恋しくなり、手に取ったのがCMC44マグナムでした。



僕がCMCのM29を最初に買ったのは、昭和53年の3月。
中学3年に上がる前の春休みでした。
母方の叔父を見舞うために、母の生まれ故郷である大分県豊後高田市に家族で出掛けたとき、祖母にもらった小遣いで親には内緒で買いました。

そのM29は鉄の焼き色を着けようとガスレンジで炙って溶かしてしまい、もうこの世にはありません。

写真のモデルガンは、CMCが活動停止した直後に買ったもので、僕が買ったCMCM29はこれで3挺目になります。


サイドプレートが3本ネジ固定になったS&Wリボルバーは、このモデルガンが初めてでしたから、最初に見たときはネジの省略に違和感を持ったものです。
そのサイドプレートは本体にかっちり設置されていて、外すのに手間がかかるのですが、組み込むときにはその倍以上の手間がかかるんですよねえ。
特に微妙に位置を変えるトリガーピンとハンマーブロックを納めるのは難儀でした。


幅広のハンマースパーが如何にもマグナムハンドガンであることを主張しているようです。
この指掛け部分の面積を大きくすることの意味が分かりませんが、デッカイ白人の親指だと扱いやすいのでしょうね。


フルワイドのトリガーもムダにゴージャスな気がして良いですね。
このワイドトリガーをはじめてモデルガンで再現したのもCMCM29でした。
ワイドトリガー付だとダブルアクションよりも、シングルアクションで1発ずつ慎重に狙って撃つのに適しているようです。
モデルガンはタマが出ないので、ワイドなゴージャスさと、それが人差し指に触れる感触を楽しむだけで充分です。


ハンティング用に開発された44マグナムとそれを撃てる拳銃が生まれたのが1955年。
和暦に直すと昭和30年です。
44マグナムは、ハンドガンハンティングを楽しむ人には歓迎されたのかも知れませんが、一般的ユーザーでは使い途がないことで流通量は少なかったようです。近所のガンショップでいつでも買える商品ではなく受注生産に近かったようですね。
1977年8月号の月刊ガンにM29の特集記事が載っていますが、ダーティハリー人気でM29が売れ過ぎて品質が落ち、仕上げの良い時代の中古品が高値で取引されているのだと書かれていました。
それでも、お金さえ出せばホンモノのマグナムが買えるアメリカという国に大きな憧れを抱いたものです。


ダーティハリーで有名になったM29ですが、日本のモデルガンファンにとっては、ダーティハリーの影響と言うよりも世界一強力なハンドガンという銃そのものの魅力に惹かれたのではないかと思っています。
M29の6.5インチ。この銃の黄金比とも言えるバランスの良さは大きな魅力ですからね。
それを損なってしまったのがコクサイのニューM29でした。
M29は6.5インチ銃身付が最も美しいことに気付かせてくれたという意味では、コクサイニューM29の存在意義はあるのでしょうけれど。



そして日本人ガンマニアが好むのは、M29でも初期に近いダッシュ3くらいまでで、その後の改良版はトイガン化されることもなく、フレーム側にファイアリングピンが移されたものやセイフティロックが搭載されたタイプは同じM29でも興味の対象外になってしまいます。
とは言え、本場アメリカでも70年代に製造された製品は既にクラシックガンになるそうなので、渡米したとしても容易にお目にかかることすら難しいようですね。

円安が続く今、海外旅行も行きにくい状態ですので、せめて家の中で往年の名機であるCMCM29を手にして思い出に浸るのを良しとしましょう。