前回の続きです。

その前に、このパールグリップを加工してくれた螺鈿細工職人のことについて軽く触れておきます。
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螺鈿細工というのは、主に貝殻の裏側に見える、あの光沢のある真珠層を切り出して漆器や鼈甲、琥珀などと組み合わせて作る装飾品です。

塗り箸や硯箱、大きいもので言えば家具類などにも用いられているようです。

ふとしたことをきっかけに知り合った、この職人さんは僕とほぼ同年代。当時まだ40歳代でありながら、この螺鈿細工をかなり極めた腕の立つ職人さんでした。

この方、こういう仕事をしていながらモデルガンにも造詣が深く、サバイバルゲームなどにも時々参加しているらしく、ガスガンも数丁持っているという話しでした。

作業場には、このようにさまざまな素材となる貝が既に研磨されて待機していました。

螺鈿細工に使う貝は、星屑のようにちりばめて使われることから大きさにとらわれないのですが、このとき僕が持ち込んだ白蝶貝の大きな貝殻は、この職人さんを驚かせるには十分でした。

写真のデータを見ると、2013年の1月ですからもう6年近く前の冬だったんですねえ。


それでは、加工の過程をご紹介しましょう。

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まずは、この貝の真珠層がどの程度存在するかを確認するために、表面を研磨していきます。

最初はこのようにハンディタイプのディスクグラインダーを使って表面の石化部分を削り取っていきます。

水道水を流して粉塵の発生を抑えています。


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同じように裏側も研磨しているところです。

古い貝だからなのか、削っていくうちに層の継ぎ目からポロリと割れてしまうことがあって、緊張が走ります。

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これは研磨の途中で欠けた部分です。欠けた理由は、層の中に別の貝が寄生していたからです。もちろん、その貝も既に中身は空っぽでした。丸い穴は虫による蚕食の痕。

このように、大きな貝殻ですが、けっこう傷みもあって、使えない部分が露わになっていきます。


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7~8割研磨が進んだところです。

グラインダーの砥石を細かいものに順次変えて磨き上げていきます。


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1枚目の表側の状況。蚕食孔が無残です。


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その裏側です。

裏は割と綺麗です。一番厚みのある部分の表側に蚕食孔があるのが残念。


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こちらは2枚目の表側の状況。

こっちは大きな穴は開いていないようです。


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2枚目の裏側もまあまあと言う感じです。


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貝の厚みのある部分にオリジナルパネルをあてがって、どこをとるのが一番良いか確認してみます。

軽く鉛筆で印を付けているのがお分かりになるでしょうか。


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透明シートにオリジナルパネルの形状を写し取り、そのままカットしていきます。


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右側グリップ。


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左側グリップ。


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位置決めが終わったら、大き目に切り抜いて行きます。


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簡単そうに見えますが、かなり熟練していないと刃の角度がずれて欠けが生じてしまうので、ここも慎重にやってもらいました。

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これが切り抜いた一片です。

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これくらい余裕を持って切り抜かれています。



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一見、まっすぐに見えますが・・・。


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角度を変えると、このようにねじれているんです。

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平たい場所に置いてみると、素材のねじれが分かりやすいですね。


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出来るだけ平らになるよう、余分な部分を削り取っていきます。

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砥石でも磨き上げていきます。

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ある程度平らになったら、透明シートに沿って、素材に直接形状を写し取ります。



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形通りに切り抜きます。


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形を整え、最終研磨の段階まで進んだ状況。


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ネジ穴を空けている所。


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導き孔をあけたところ。

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太目のドリルでスクリューヘッドが収まるスペースを刳り貫きます。

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この加工がもっとも緊張する作業ではないでしょうか。

でも、やり遂げてくれました。


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完成です。

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六研後期型用なので、グリップスクリュースタッドがないぶん、スクリューホールは細くなっています。

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天然素材ですから、形は少々歪ですが、ホンモノのM.O.Pグリップ


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