過去の話⑥ | 誰にも言えず綴る

誰にも言えず綴る

余命宣告された夫は2023年8月、逝ってしまいました。これからどう生きていこうか…。

2022年10月下旬からの定期検査は数日に分かれていた。


当然私は付き添いで同行していたのだが、
いきなりのコロナ感染。

発熱と喉の痛みで自宅待機。
がん患者の夫になるべく迷惑かけないように気を配っての隔離生活。
食事なんて最低限空腹を満たせればどうでもよかったし、
一週間ほど入浴できなくても死にはしない。

夫は残された検査は一人で行くしかなかったが、
こればかりは仕方ない。

自宅待機も解け、
定期検査の結果は夫婦揃って聞いた。

残念ながら再発しています。
正確には肺内の転移で、
ステージはⅣとなります。

呼吸器外科の先生はお気の毒だと言わんばかりの表情で説明を続ける。


5月には検査で何も出てないのに、

わずか数ヶ月でがん細胞が顔を出してきた。


今後は呼吸器内科の先生が担当する。
抗癌剤に関しては以前に相性をチェック済みで、
免疫チェックポイント阻害薬を使用する。

既に呼吸器内科の先生と連携できているので、この後呼吸器内科を受診して欲しい。


こうして夫の治療は今後全て呼吸器内科に移行した。


呼吸器内科で提案されたのは、

治験への参加だった。


免疫チェックポイント阻害剤で、

オプジーボとヤーボイを組み合わせる実験だった。


私たちはこの治験を救いだと思い、

夫は即断で決めた。


治験に関しては様々な副作用の説明があったが、

今まで抗癌剤の副作用で耐えられない経験がなかったのでさほど気にしなかった。

なんと言っても、

私たちはがんセンターに全てを委ねていた。

がんセンターは夫の命を救ってくれる救世主であり、

最後の砦のような存在だった。


少なくてもこの時点では。


この後夫の人生は坂道を転げ落ちるようなスピードで変わっていった。