本日読了した小説をご紹介します。
中山七里(なかやましちり)さん著作の
”護られなかった者たちへ” です。
とても読みやすい作品です。
登場人物が少なくて、ひとりひとりの人間描写や想いが良く伝わってきます。
感情移入して切なくなる場面もありますし、同情してどんどん読み進められました。
私の仕事は、介護保険を使っての福祉用具のレンタルや販売 がメインです。
高齢者の方々で、日常生活が自立できなくなってきた人が、いわゆるエンドユーザーですが、
そのまわりの方々(ご家族や担当ケアマネージャー、役所の担当部署の方々)とのやりとりも
とても多い仕事です。
20年もこの仕事をやってきて、3,000名以上の高齢者とその周りの方々と接してきて思うのは、
色々な方がいて、色々な環境があるという事です。
ここ最近多いのが、 生活保護の方がエンドユーザーのケース で、
エンドユーザーの中でも本当に色々な考え方や境遇の方を見させてもらっています。
エンドユーザーの方と同じだけの、まわりの方々 も見させてもらっているのですが、
この本を読み終わって、私自身反省しているのが、
生活保護を受けている方でも、
”気概を持ち続けている方がいる。”
“慎み深く、社会の一員として自分を俯瞰し続けられている”
そういう方が存在しているという意識が薄くなっている自分に気づかされたことです。
今までの私は、
生活保護の人は、ぐうたらで怠惰で、
にっちもさっちもいかなくなったのは自業自得。
つらいことや大変なことから逃げている、堕落した人々・・
が大半だと思っていました。
ただ、そうでない人達も多くいるという事をわからせてもらいましたし、
もっと悲惨なのは、切羽詰まって、やむなく生活保護を申請したにもかかわらずに
書類審査であっさり ”不受給通知” を突きつけられた方たちだという事を認識させられました。
お役所は年間予算があり、その中で生活保護の認定者の数も限られてくるという実情、
限られた枠の中で、うまく立ち回れた人が受給を受け(陰で舌を出している人もいる)、
要領よく書類を書けなかった本当の困窮者が除外される・・
護られなかった者たちが確実に存在していて、その人たちの末路は・・・
社会や制度、運用の矛盾や不合理を知らしめられた作品でしたし、
真犯人がやはり数少ない登場人物の中で確実に存在していて、
”こいつか~!”
‘’こいつがこいつだったのか~!‘’
というどんでん返しが待っていて、
心に残る作品でした。
映画化(ドラマ化?) もされていたようで、
映像化されるに値する作品だと、また納得しました。
ありがとうございました。