今年の日本産科婦人科学会の腫瘍(婦人科癌)分野では、子宮体がんに関するセッションをたくさん聴講しました。

 

一時期(パープ阻害薬が登場した前後)は卵巣がんをテーマにしたセッションが多かったんですが、今年は子宮体がん関連が目立っていました。

 

そんな中で私がすごーく気になったのは「子宮体がんにおけるセンチネルリンパ節生検の保険適応」。

 

日本では新しい薬や医療機器、治療法が健康保険の対象となるためには、承認申請→審査→承認→保険収載→診療報酬の決定といった一連のプロセスを経る必要があります。

 

こうした複雑で厳格な審査と法的な手順を経て、はじめて健康保険で治療ができるようになります。

 

と同時に日本では歯科をのぞいて混合診療が禁止されているので、いくら有効な治療法や機器であっても、健康保険の対象とならないかぎり、現実には、その治療法をふつうの医療機関は行うことができません。

 

だから、保険適応となることはすごく大事なんです。

 

センチネルリンパ節生検。。

 

婦人科がんでは耳慣れないけど、乳がん治療については2010年には保険適応済で、いまでは当たり前に行われている手術方法です。

 

 

このセンチネル生検が婦人科がんの手術にも導入されれば、リンパ節切除の規模が縮小できるので、ぐーんと身体への負担がへる。入院期間だって短くなる。

 

大規模なリンパ節切除しないですむようになるのだから、後遺症であるリンパ浮腫の発症リスクも軽減されます。

 

すでに子宮体がん、子宮頸がん、外陰がんについてはセンチネルリンパ節生検は技術的に確立していて、データ蓄積もじゅうぶんにある。

 

国際的にはごく当たり前に行われています。

 

エビデンスのある治療法として日本の診療ガイドラインにもはっきりと書かれている。

 

つまり「標準治療」なんです。

 

ところが健康保険の適応外なので、現実には婦人科癌の治療では行うことができないでいる。

 

私はずーっと「乳がんはできるのに、なぜ婦人科がんではセンチネルはダメなの?」とおもっていました。

 

でも、去年の婦人科腫瘍学会のセッションで「2024年度の診療報酬改定で記載され、保険適応となる見通し」と明言されていたので、楽しみにしていたんです。

 

「いよいよ婦人科がんもセンチネルの時代♪ これでリンパ浮腫になる人が減る。メデタイ、メデタイ」と思い込んでいました。

 

ところが実際には、審査段階で落とされてしまったそうなんです。

 

かろうじて外陰がんだけが通った、と。

 

つい会場で、「なんで通らなかったんですか?」と医師の先生たちに詰め寄ってしまいました。

 

すると、先生たちも「なんでなんだろうねえ」と。

 

ほんと、とっても不思議です。

 

 

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