『阿含経典①』増谷文雄 編訳 | 温室メロンの備忘録

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中村元氏の著書とは相性が悪く、全体像がしっかりと記述されていそうなものを購入↓



届いて初めて気づいたのだがかなり分厚い。660ページ。これが3巻もあるのか。一瞬引いたが、とりあえず読み始めてみる。


冒頭、①華厳時、②鹿苑時(阿含)、③方等時(諸大乗経)、④般若時、⑤法華・涅槃時の「五時の教版」における阿含経の位置付けに始まる。華厳経が難解過ぎたので、誰もが解るよう平易にしたのが阿含経であり、そのため特に日本では軽視されてきたのだそう。


続いて、阿含経は漢訳版7,000経(パーリ語版17,000経)超という膨大な経典群であり、加筆・増大した中から、釈尊のオリジナルに近いものを選別・抽出する作業が必要だとのこと。漢訳版とパーリ語原典を照らし合わせたり、各経典の構成や文脈を吟味したり。ロジカルかつ徹底した作業内容について、100ページ超にわたり説明がある。


その上で全ての経典を以下、


①存在の法則(縁起)に関する経典群

②人間の分析(五蘊)に関する経典群

③人間の感覚(六処)に関する経典群

④実践の方法(道)に関する経典群

⑤詩の入った経典群


のように再整理したとある。ちなみに第1巻には①と②が収録されているとのこと。様々な宗派の言葉を介さず、釈尊に近い原点思想を知りたかったのでとても良い感じ。


以下、備忘録。


①存在の法則(縁起)

存在には、A)造られしもの、B)あるもの、C)なるもの3種類があり、縁起は「縁って起こるもの」なのでCに相当する。なお、なるものに対応して消滅するものもある。人が十二支縁起を輪廻するのは、一切が無常であることを知らず、思い通りにならないと「苦」を感じるためである。そこから解脱する涅槃についての智は、ただ法についての智によって獲得できる。縁起の法を知り、その生起・滅尽を知り、滅するにいたる道を知ることが肝要である。


全てを第三者的にあるがまま受け入れられれば、一切の執着がなくなる。これが涅槃。何か特殊な能力を持てるわけではない。


※十二支縁起=無明(=無智)→行→識→名色→六処→触→受→愛→取→有→生→老死


②人間の分析(五蘊)

五蘊とは人間/生命の構成要素であり、物質的要素と精神的要素がある。前者は色(しき、=肉体)、後者は受・想・行・識(それぞれ感覚、表象/知覚、意思、意識を意味する)と4つに分解し、合わせて五蘊と呼ぶ。ただし単なる分解ではなく、人が世界/外界(界)を認識するプロセスへの分割で、フッサール現象学のアプローチに似ている。あと縁起では行識が先で、受想が後に来ているのが興味深い。五蘊を認識・生起させる、因としての行識の必要性。


五蘊もまた無常であり、苦であり、無我である。それを自分のものと誤解し、永続して欲しいと執着する心が苦の元凶、縁起を輪廻させる原動力である。


【追記】2024.8.29


先程第2巻が届いた。