ル・スプートニク@六本木 | 温室メロンの備忘録

温室メロンの備忘録

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知人が誕生日を祝って下さるとのことで、今夜は六本木に。去年の忘年会でお邪魔した中華料理店「孫」もこの辺りだった。ミッドタウンと道路を挟んだ南側のエリア。

Le Sputnik


スプートニクは「旅の同行者」を意味するロシア語で、今はフランス語化しているのだそう。その意味合いと、他国語を自国語に取り入れられるフランス文化の柔軟性を思い名付けられたとのこと。


柔らかな照明の店内。コートを預け、テーブルまで案内頂く。今夜は半個室だった。


最近あまりアルコール類を飲まないのだが、今夜はペアリングでお願いする。ミネラルウォーターはスティルを。料理14種、ドリンク10種、果たして完食できるだろうか。まずはシャンパーニュから。



ピエルソン・キュヴィリエのプレステージェ、ブラン・ド・ノワールとのこと。キリリとしているがドライ過ぎず、フルーティーな甘みがある。前菜2皿をこちらで通して欲しいとのこと。



北海道ウニと茄子のペーストを、板のり状に加工した3枚のあおさで挟み込み、2層構造に仕上げた一品。茄子のチョイスが素晴らしい。



原木椎茸のタルト。刻んだ椎茸の上に椎茸のムース。アクセントに粒状の胡桃を。


前菜の二品ともに、それぞれが持つ特徴的な香りと甘みを堪能させてくれる。美味しい。シャンパーニュの仄かな甘みが、スムーズに連続して良いペアリングになっている。



水と塩とそら豆のスープ。オリーブオイルをアクセントに。複雑な旨み/甘みの前菜の後に、シンプルなそら豆の香りと旨みで鼻と舌をリセット。期待に胸が膨らむ。



運ばれて来たのは、醤油の搾りカスを板状に固めたもの。よく見ると魚が挟んである。数日間熟成させた氷見のブリだとのこと。



ルッコラと青リンゴを先ほどのブリで巻き、すり胡麻を振り掛けてある。右側のソースはブリの肝。エスプーマ状だが、内側に形の残った肝が入っている。まずはブリ単品で、次に肝ソースと合わせて。ブリの身がシャキシャキだ。


田中六十五 6513


今日はワインペアリングではないのだと安堵する。料理が多国籍化する中、ワインのみでのペアリングには限界があるだろう。


白糸酒造の山田錦65%精米シリーズの1つ。フルーティで爽やかな甘み。吟醸香。そろそろ吟醸や大吟醸含め、日本酒の分類定義を見直した方が良いのかもしれない。いずれにせよ魚の肝ソースには、軽く精米した米の日本酒が一番だ。



卵持ちのシマエビとエビを使った一皿。2種類のエビの食べ比べということか。右側のムースは白人参のソース。シマエビだろうか、驚くほどネットリと甘い。白人参のソースも甘いし、これまでの料理も全て甘みに特徴がある。コース全体の隠されたベーストーンなのかもしれない。



ドイツモーゼル、カール・ローウェン社のリッチ畑で獲れたリースリング。料理のアクセントである蜜柑の酸味と繋がることで、まるで水のように舌をリセットしてくれる。口内リセット系のペアリング。


おやき


おやきが運ばれてきた。中で調理して持ってきますとのことなので、有名店のおやきを使った料理なのかと勘違い。



単に半分に切ってのサーブ、自家製のおやきだった。信州サーモンを野沢菜、林檎を信州味噌で和えたもので包み、ほうれん草でラッピングしたものをおやきにしてある。


渾然一体、プラス香ばしい蕎麦粉の薄皮。眩暈がするほどの美味しさだ。食べ進めるうち、皮が蕎麦粉で味噌が発酵食品、これは信州式のガレットなのだと思い至る。


アレクサンドル・バン マドモワゼルM 18


ペアリングにはまさかのソーヴィニョン・ブラン?なのだが、オレンジワインかと見紛う濃い黄金色。ハーブの香りとスパイシーな口当たりで、おやきと上手くバランスが取れている。もちろん後味は爽快。


カンパーニュ


テーブルごとの進行に合わせ、ココットで1つずつ焼き上げているとのこと。軽い酸味としっとり感のあるカンパーニュ。



内側は見えないがアオリイカ。酢漬けしたカブの上には、広島産のディル、コリアンダー、エストラゴンがトッピング。カブとコリアンダーのソースをテーブルで後掛けして完成。実はハーブがメインで、イカやカブの食感やカブの酸味は脇役なのでは。



狐に稲穂のラベル。ハッピー太郎醸造所のどぶろく「something happy」のフレッシュハーブティーというライン。広島県梶谷農園のハーブミックスが使われているらしく、料理も同じく梶谷農園のハーブではと想像する。


ハーブのペアリングを楽しむセッションが終了。かなりエキサイティングな「旅の同行者」だ。



ブリオッシュの上に薄切りされたマッシュルーム。サイズからするとポートベローか。右側はアスパラガスのフランとうずらのポーチトエッグ。アスパラのエスプーマが掛けられている。


ペアリングはシャトーロスピタルのBack in HSSR 。メルロー80に、マルベックとカベルネフランが10%ずつ。キュヴェ名はビートルズの楽曲を連想させる。



ほうじ茶で蛸を柔らかく煮込んだ後に、昆布などフォンドボーに漬け置きし、仕上げに野菜やレモンで蒸し上げてある。



盛り付けは正直ショボいかな。だからこそ事前に手間暇かけてることを見せて下さったのだろう。ジャガイモのピューレと。



ペアリングはペリッセロのヌビオラ2018、バルバレスコと。ヌビオラが葡萄品種を連想させる。やはりタコには地中海のワインか。


パティ・アン・クルート


パテのパイ包み。中身はフォアグラ、マンゴー、名古屋コーチンの胸肉、ピスタチオ、蓋との境目にはコンソメジュレ。根セロリやピクルスと一緒に。



フォアグラにソーテルヌとはベタだなと思ったが、スパイシーかつ草の香りで、アタックの切れ味が良いのに驚く。その後は軽快な甘み。一風変わったソーテルヌで楽しい。クロ・ダディ2014、セミヨン90%。




仕込みから仕上げまでシェフが担当されるのだそう。フォアグラのテリーヌを土台に、様々な形のビーツのチュイールを薔薇の花に模ってゆくスペシャリティ。





思い切り良く崩してみた。



甘鯛の松笠焼き。ふきのとう、タラの芽など春を感じさせる天ぷらと。ピュリニー・モンラッシェ2020をペアリング。



エゾジカのステーキ。シンタマのうちシンシンをステーキ、トモサンカクは付け合わせに。あとマスカットのドライフルーツ?と紅あずま。やはり甘みへの拘りを感じる。



フォーリーのエンポリウム。コート・ロティのシラーだ。メイン2皿のペアリングは王道で。



カカオのソルベ。カカオバター、ラズベリーコンフィチュールと。右下のローストされたカカオは、手で潰してトッピングに。チョコの風味がより鮮烈に感じられる。



金柑のブリュレ、金柑のアイス、板状のメレンゲはセージの香り。セージが微妙だ。こうすると臭いが鼻に付いてしまう。デセールはもう少し考えられるのが良いのではと。



〆はチョコのファーブルトンと紅茶にて。



ホワイトチョコレートのキャンドルスタンドが徐々に溶け、内側のロウソクが顔を出している。あっと言う間の3時間半だった。