完璧だったタクシードライバーのクーさん
たった一度だけ
約束した時間に来なかった事があった
家族で空港に向かうため
クーさんに朝6時に
迎えに来てもらう予定だったけれども
まだ暗い中 外で待っても一向に来ない
クーさんが遅れるなんて珍しいなあと
電話をしてみたらまだ家にいて
朝ではなく夕方6時だと勘違いしていた
という
ありゃー💦 クーさんの家は遠いので
今から出てきてもらっても飛行機の時間に
間に合わなくなる どうしよう
そこですぐさまクーさんは
代わりのタクシーをすぐに向かわせるから
待っててと他のタクシーを探してくれ
10分もしないうちに別のタクシーが
やってきた🚕
…これがとんでもない2時間もの
恐怖ドライブの幕開けとなる
めちゃめちゃ調子のよさそうな
明るいドライバーさん
開口一番
「いやー、徹夜で走ってて
今も空港往復したばかり」
…
徹夜で走ってるのに
今からまた高速で空港へ。
大丈夫なのか?!
いやにテンション高くてなんか怪しい
そして見事に嫌な予感は的中し
高速に乗るとすぐに彼は蛇行運転を始めた
おいおいおいおい!!
寝とるやないかい!
「ソーリーソーリー」
いやソーリーじゃなくて!!大丈夫?!
危ないよ!!?
「OK OK」
全然OKじゃないし!
…というやり取りを
何回したかわからない程
高速道路をフラフラあっちへ行ったり
こっちへ行ったりする🚕
助手席に乗っている夫が何度も何度も
声をかけているけれど本当に危ない
そして私は後ろの席から
バックミラーに映る彼の目を凝視していた
すると彼の黒目がフワ〜っと上に
上がっていき
白目になった
ギャー
起きろーー!
こんなとこで死にたくない
まだやり残した事がたくさんある
後ろから必死に肩を叩くと
黒目が下りてきた
シラ〜っと何事もなかったかのように
平静を装って運転を続けるが
またしばらくすると白目になり
車がラインをはみ出し
これを何度も繰り返す
もう本当に勘弁してー!頼むから
と夫も私ももう泣きそうになり
夫が運転代わろうかと言い出した
彼を眠らせないように
長女と私は大声で会話し夫も横から
話しかけ続け
とにかく彼を眠りにいざなう
心地よい空間にならないよう騒ぎ続け
やっと彼は覚醒し
悪夢のような時間が終わり
高速を降り下道に入る事ができた
空港まであと20分
どうか無事に着きますように
ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間
赤信号なのに信号無視して
ファ〜っと交差点に入っていく
スリーピングドライバー
また寝とるー!
ちょいちょいちょいちょいっ!
そしてまた急ブレーキ💨
もうお願いですからー!!
と起きるよう必死に頼んだ
けれどもまたフラフラ運転が始まる
もう本当に嫌だ( ꈨຶ ˙̫̮ ꈨຶ )今すぐに降りたい
だけどあと少し
そこのカーブを左に曲がれば
空港が見えてくる
カーブを曲がれば…
カーブを…
曲がらんーーーっ!
道なりのカーブを曲がる気配が全くない
迷いのない直進 迫り来る壁
ギャーぶつかるーーっっ!
その時 危険を察知した夫が
助手席から手を伸ばしハンドルを左に切る
という
あり得ないシチュエーションで
衝突を回避する事ができ
我が家の命は保たれた
居眠りこきまろは目覚め
「ソーリーソーリー」
ソーリーじゃねえよ
熟睡やんけ
もう二度と乗らん
娘たちと私の3人だけの時だったらと思うと
ゾッとする
空港に着いても足に力が入らず
なかなか車を降りられないくらいの
恐怖を味わったのでした
だけども今からまた同じ道を
2時間運転して帰る居眠りタクシー
彼の帰り道が心配で お願いだから
とにかく一回そこら辺でよく寝てから
帰ってくれと
夫と私は懇願したのでした
それから数ヶ月後 クーさんが
「空港に送っていったドライバーの彼
覚えてる?」
覚えとるもなんも
しっかりトラウマの域じゃ
「彼ね、昨日事故起こしたんだよ」
なぬー
そして原因は居眠り運転だという
彼から送られてきたという写真を
見せてもらったら
ぐちゃぐちゃになった車をバックに
あのスリーピングドライバーが
にっこり笑ってピースしていた
はよ転職しろ
…人の笑顔の写真を見てイラッとしたのは
あれが生まれて初めてだった
改めてクーさんの安全運転に感謝する
恐怖の出来事なのでした🚕
読んでいただきありがとうございます