【硝子の夜会|フランス王国】


王妃を描いた女。

エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン。


1755年。


マリー・アントワネットと

ヴィジェ=ルブランは、

同じ年に生まれました。


一人は皇女として生まれ、

やがてフランス王妃となる。


一人は絵筆を握り、

自らの才能で宮廷へたどり着く。


そして二人は、

鏡のこちら側と向こう側で出会います。


ヴィジェ=ルブランが描いたのは、

ただ美しい王妃ではありませんでした。


王妃が

「こう見られたい」と願った姿。


優雅に。

気品高く。

時には母として。


世間が「王妃」という巨大なイメージを

見つめていた時代に、


彼女は何度も、

その顔をすぐ近くから見ていました。


けれど革命が始まると、

二人の運命は大きく分かれます。


画家はフランスを離れ、

絵筆を持って国境を越えた。


王妃は、

フランスから逃げ切ることができなかった。


同じ年に生まれ、

同じヴェルサイユにいた二人。


けれど一人には、

「画家」という

王妃には持てなかった人生がありました。


ヴィジェ=ルブランは亡命後も

ヨーロッパ各地で肖像画家として活動を続けます。


そして1793年。


何度も描いた同い年の女性は、

断頭台へ消えていきました。


それでも。


彼女のキャンバスの中では、

マリー・アントワネットは

今も若いままです。


笑い、

花を持ち、

ドレスをまとい、

こちらを見つめている。


人は死ぬ。


宮殿も、

王冠も、

時代さえ失われる。


それでも、

描かれた顔は残る。


ヴィジェ=ルブランは

王妃の肖像を描いた女性であると同時に、


後世の私たちが思い浮かべる

「マリー・アントワネット」の姿を

作った一人でもありました。


鏡に映っていたのは、王妃。


その向こうを見つめていたのは、

同じ年に生まれた、一人の画家でした。


硝子の夜会|フランス王国

感情師 𝒀𝒖𝒌𝒊𝒌𝒐


※史実をもとに、人物の心情について考察した表現を含みます。


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