第十三夜  回想編

「その子は鷹よ」

金長は、もう一度鷹を見た。

「鷹」

「そう」

小姫は何でもないことのように続けた。

「私の大切な相棒」

鷹は、ふん、と胸を張った。

金長はそんな鷹を見て、

「へえ」

とだけ言った。

「へえ、ってなんじゃ!」

鷹がまた噛みつく。

すると小姫が、うふふ、と笑った。

「鷹はね、あなたが気になって仕方ないの」

「違う!!」

鷹が即座に叫んだ。

「俺様は! よそもんが気に入らんだけや!」

「はいはい」

小姫はまるで相手にしていない。

鷹はなおも金長を睨みつけている。

けれど金長は、そんな鷹と小姫を交互に見た。

鷹が金長を睨む。

小姫が金長に話しかける。

また鷹が睨む。

金長の目が、じとっと細くなった。

「……」

そして。

口元が、にやりと上がった。

ハハァン。

なるほど。

そういうことか。

ガッテン承知。

「なんや、その顔!」

「別に」

「今、絶対なんか思ったやろ!」

「なんも?」

「その顔で言うな!」

金長はますますニヤついた。

鷹のライバル心。

その奥に何が隠れているのか。

どうやら金長には、早くも分かってしまったらしい。

「やかましわ! お前ら、なんや!」

鷹は羽をばたつかせると、今度は金長を指した。

「だいたい狸! お前、さっさと逃げる思いよったら、まだおりくさって!」

「おるわ。修行しに来たんやから」

「三日やぞ!」

「三日やな」

「なんで平然としとんねん!」

「知らんがな」

「こいつ……!」

また始まった。

小姫は二匹を見ながら、くすくす笑った。

そしてふと、懐かしそうに鷹を見る。

「あんた、そういや……」

「なんや」

「あの日も同じような顔してたなぁ」

鷹の動きが止まった。

「……何の話や」

「初めて会った日」

小姫の目が、少し遠くなる。

「あの日も私が何か言うたびに、そんなふうに睨みきかして」

「昔の話すんな!」

「ふふ。変わってないなぁと思って」

「やかましい!」

金長は二匹を見た。

小姫は楽しそうに笑い。

鷹は真っ赤になって怒っている。

けれど。

そのやり取りには、金長がまだ知らない時間があった。

二匹が出会い。

互いを知り。

今のように並ぶまでの時間が。

津田へ来て三日目。

金長は鷹の名前を知った。

そして同時に。

どうやらこの鷹には、

からかうと随分面白いところがあるらしいことも知った。