タイトル

値上がり、えげつない。──経費削減と戦う毎日

昨日まで1,234円だったものが、
今日になったら2,468円になっている。

見間違いかと思って、
見積書を二度見して、
電卓を叩いて、
それでも数字は変わらない。

「また上がっとるやん……」

食材も、油も、調味料も、消耗品も。
ひとつひとつの値上がりは小さく見えても、
毎日、毎週、毎月と積み重なれば、
現場にはずっしりと重くのしかかる。

けれど、本部から降りてくる言葉は、
いつだって同じ。

経費削減。

どこを、どれだけ、何のために削るのか。
光熱費なのか、人件費なのか、食材費なのか。
肝心な数字は示されないまま、
現場だけが電卓を握りしめて考え続ける。

安いものに替えれば、それで終わりではない。
味はどうか。
安全性はどうか。
作業量は増えないか。
高齢者が食べやすいか。
栄養は守れるか。

削っていいものと、
削ったらあかんものがある。

ただ金額を小さくするだけなら簡単でも、
食べる人の楽しみや、
働く人の負担まで小さくしてしまったら、
それは工夫ではなく、ただのしわ寄せになる。

それでも現場は、
今日も見積書を見比べ、
献立を組み替え、
在庫を数え、
無駄を探しながら、
守るべきものだけは守ろうとしている。

「値上がり、えげつない。」

そう叫びながらも、
知らんがな主任は逃げられない。

今日も電卓を叩き、
紙を丸め、
それでも次の一手を考える。

経費削減と戦う毎日は、
派手でも格好良くもない。

けれど、その地味な攻防の向こう側には、
誰かの一食と、
誰かの日常がある。

だから今日も、
知らんがな主任は見積書を睨む。

値上がりには驚く。
けれど、守るものまで値引きはしない。