呪いのブレスレット59 | HAPPY DAY

HAPPY DAY

☆ベリーズ文庫(現代・ラブファンタジー・異世界レーベル)マカロン文庫・コミックベリーズ・マーマレード文庫・マーマレードコミックス・LUNA文庫・夢中文庫・ネット文庫星の砂にて執筆させていただいています。

「亜美」

「どうしたの?」

「まだ俺に話せない?」

翔平はあたしが話すのをずっと待っていてくれていた。

正直、ひかりのことを知っているのはあたしだけ。

心細いのは確かだ。

「……」

「俺じゃ頼りにならない?」

「頼りになるとか、ならないんじゃなくて……」

言ってしまおうか……。

その時、ピューッと冷たい風が身体に当たる。

真夏の夕方なのに、その風は異常に冷たく感じて、あたしの身体はブルッと震えた。

明るかった空は徐々に薄暗くなってきている。

腕時計を見ると、もう6時半を回っていた。

「翔平、あとで話すから帰ろう?」

「わかった。戻ろう」

あたしたちは元来た道を引き返す。

翔平と今日の練習の話などを話していると、ふと何かを感じて振り返ってみる。

「きゃっ!」

1メートルほど離れた後ろにぼんやり立つひかりの姿があった。
 

ボブカットの頭から顔の半分に血が流れ、少し首を傾けあたしを見ていた。

その顔はとても寂しそうに見える。

そう思った瞬間、口を大きく開けてニタリと笑った。

「亜美? なに驚いた顔をしているんだよ」

あたしが見ている方向に翔平は視線を向けるけれど、ひかりの姿は見えないらしい。

不気味に笑うひかりからやっとのことで翔平に視線を移す。

「翔平には見えないんだね」

「えっ? 何の――!? もしかして幽霊!?」

翔平が焦った顔になり、あたしは急いで首を振る。

「ち、違うよ」

怖がらせても良くないと思い、否定してからひかりを見るといなくなっていた。

「行こうっ」

翔平はあたしが否定したものの、歩きながらしつこく「幽霊だったんだろう?」「うへっ、こえぇな」なんて言っている。

なんとなく早歩きになって、すぐに合宿所の建物が見えてきた。

そこであたしは歩みをゆっくりにさせる。

「翔平、驚かないで聞いてね?」

「ん? あ、ああ……」

「さっき、ひかりがいたの」

あたしはしっかり翔平を見つめてひかりの名前を口にした。

「ええっ!? ひかりって吉村の事か?」

「うん。3年の女生徒2人、バイク少年の事故、あれはひかりがやったの」

「ちょ、ちょっと状況が読めないんだけど? 最初から話してくれるか?」

合宿までひかりは来ている。なにかが起こりそうで怖い。そのとき、あたしひとりで対処できるかわからない。だから、一番信頼できる翔平に話しておこうと決心したのだ。

あたしたちは立ち止まり、今までのことを早口に説明した。

話し終わると、翔平は「まじか……」ぼそっと呟いてそれから黙り込んでしまった。
 

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