肝試し準備
1階の大浴場の湯船に浸かっている時も、みのりたちは楽しそうに話しをしている。
けれど、あたしはそんな気になれずにひかりの事ばかり考えてしまう。
小杉と彼女は大丈夫なのだろうか。
ブレスレットを見るまではひかりの姿も見ていないし、大丈夫だろうと思っていたけれど。
夕食前に夕食後に行われる肝試しの用意がある。
肝試しの場所は合宿所から徒歩5分ほどのところの神社。
あまり手入れがされておらず、周りの雑草もうっそうと茂り昼間でも気味の悪い。
5分ほど歩く道はくねくねとした一本道で、そこからぼうぼうの雑草地へ外れなければ迷子になるなんて絶対ない。
鳥居をくぐり、賽銭箱の隣にお札を真似た紙を用意し、ペアで取ってくるというありきたりな肝試しだけれど、その前に怖い話をするからなんの仕掛けをしなくても十分怖い。
「俺と亜美で置いてくるよ」
そう言ったのは翔平。
その途端、みのりたちからからかいの声を浴びせられる。
「翔平、亜美と2人きりになりたいんでしょう」
「おっ! よくわかってるじゃん」
翔平はみのりの冷やかしにも全く動じていない。
あたしはと言えば、ちょっと恥ずかしくて困った顔で翔平を見た。
「はいはい。2人でいってらっしゃーい」
他の友人たちも笑いながら送り出す。
「亜美、行こうぜ」
「う、うん」
翔平は右手にお札、左手であたしの手を握り歩き出した。
合宿所を出て、神社へ向かう道。
18時過ぎの外はまだ明るく、神社へ行くのも怖くない。
あたしたちは舗装されていない一本道の大きな石などを退かしながら進む。
暗闇で転ばないようの配慮だ。
「今回はサッカー部もいるから、お札の枚数が多いな」
翔平は手にしたなんちゃってお札の紙を、バサバサ音をさせてて遊んでいる。
そうだっだ……小杉と彼女も参加するはず。
肝試しに参加して大丈夫かな……。
目の前に10段ほどの階段が見えてきた。
「あと少しだね」
翔平が先に階段を上り始め、あたしも後から付いて行く。
朱色が取れかけている鳥居が見えてきた。
鳥居の両脇には一対の狛犬。
古そうな狛犬2体は身体の一部がどこかしらかけており、あまり手入れされていない神社だと分かる。
鳥居をくぐり、神社の境内の前までやってきた。
「ここに置いておけばいいか?」
翔平はお賽銭箱の横に偽物のお札を置く。
「うん。風で飛ばされないように大きな石を置いた方がいいよね?」
あたしは足元を見回し、ちょうどいい感じの石を見つけると乗せた。
「確認しながら来たから結構時間がかかっちゃったね。早く帰らなきゃ」
歩きはじめると、右手首を翔平に掴まれる。
