パク・シン。
それが彼の名前。
そして彼は日本でも人気のある韓国の大スター。
日本へは取材できたのだが、あまりの人の多さに苛立ち取材を受ける場所へ向う途中に姿をくらました。
デパートに入ったのは良かったが韓流ファンであろう年配の女に見つかり逃げた。
そして出会ったのは目の大きな可愛らしい顔をした店員だった。
紳士服売り場で大きなあくびを手で隠していた彼女。
彼女に興味が沸いた。
追われていることもあって彼女の売り場の試着室へ隠れたのが経緯だ。
(まじかで見たのに彼女は俺を誰だかわらなかった)
それも彼女を気に入った理由。
(なんとなくふわっとした、素直な感じが可愛かったな)
彼女の顔を思い出して微笑む。
シンはホテルに戻り、ソファに身体を預けていた。
長い足は裸足のまま投げ出した状態。
身長187センチあるシンが寝そべると、4人掛けのソファは小さく見えた。
目を閉じて彼女の姿を思い出す。
(彼女の名前は……木下 瀬奈(セナ)……そうだ ネームプレートにそう書かれていた)
幼い頃から天才児とうたわれるシンのIQは高い。
見たものはほとんど記憶される。
台本も一回読めば記憶出来るのだ。
モデルから入ったこの世界だが、演技をするのは気に入っていた。
パク家の次男という立場は、かなりの自由が利く。
韓国きっての化粧品メーカーの会長の祖父を筆頭に、パク家は韓国でかなり有名な財閥だった。
父親は社長、兄のドンヒョクは副社長として後を継いでいる。
母は韓国の有名女優だった。
結婚した時点で女優を辞め、今では伝説的な女性だ。
華やかな一線から退き、彼女は時折、夫婦でパーティーに出るくらいだろうか。
52歳になった今でも母のユジンは美しい。
シンがモデルになったきっかけは祖父だった。
特に将来なにをやりたいと考えていなかったシンは、祖父の命令で自社のモデルを遊びのつもりでやってみた。
その時のシンは髪が肩まで長く、整ったきれいな顔で中性的な容姿だった。
シンは透明感のある美しい母親似だ。
韓国や日本でも有名な女優と自社のCMに出て一躍有名になったのだ。
それがシンが大スターになる一歩。ドラマの主役に抜擢され、熱狂的な人気が出て、老若男女シンを知らないものはいなくなる。
今では日本の韓流ブームも手伝って、シンはいつも注目される存在になった。