朝、ゆずるの家へ行きクリスマスプレゼントを渡した後、香澄と待ち合わせをしてクリスマスで賑わっている街をウィンドーショッピングして楽しんだ。
「あ～ 足が疲れた～」
込み合っているカフェにようやく席を見つけ座った香澄は情けない声を上げた。
「うん 疲れたねっ」
杏梨はそんな香澄を見てにっこりした。
「疲れたっていうわりにはにこにこしているじゃん あっ！そうか～ 今日は雪哉さんとデートだったね？」
「うんっ 初めてのクリスマス・イブだから」
白い湯気がたっているホットココアを一口飲む。
ココアが寒さに震えていた身体に暖かさを取り戻す。
「恋人同士になってはじめてのクリスマス・イブっていうのが信じられないよ～ それに一緒に住んでいるんだし、なにも恋人同士のイベントなんて関係なく毎日があま～いイベントじゃないの？ あ～羨ましすぎるぅ 遼平さんは今日も明日も仕事なのに～ 雪哉さんがいなくなったおかげで更に忙しくなったんだよ～？」
香澄が羨ましさ半分、あきれたように笑う。
「ま、毎日があま～いイベントってなぁに？」
香澄の言葉にココアを噴出しそうになる。
「あ～ もうっ！想像させないでっ！あたしなんかまだキス止まりなんだよ？」
「そ、そうなんだ・・・・・・ぁ、あのね？お店にすっごくカッコ良くて技術もすごい人が入ったってゆきちゃんから聞いたよ？遼平さんから聞いていない？」
杏梨は話を変えた。
「ううん 聞いてないっ！どんな人っ？」
「香澄ちゃん、気になるの？」
身を乗り出して聞く香澄を茶化す。
「えっ？そんなことないよ？あたしは遼平さんを愛しているんだもん」
３０分ほどカフェで一休みしてから２人は別れた。
＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ＊
家に戻るとゆっくりバスタブに浸かった。
凍えるほど寒かった外ですっかり身体が冷え切っていたので、ジャスミンのオイルをたらしたお湯に浸かるのは気持ちが良く眠ってしまいそうになった。
わたしって幸せだな～ いろいろあったけれど今はすごく幸せ♪
雪哉の為に雪哉を思いながら杏梨は琴美から貰ったドレスに着替えた。
壁時計を見ると１８時２０分。
「いけないっ！遅刻しちゃう」
純白のカシミアのハーフコートを急いで着る。
ボレロと同じ素材のベロア地のパーティバックを手にして玄関を出た。
マンションの外に出ると駅に向かった。
今日は贅沢に電車ではなくタクシーだった。
少し待ってタクシーの後部座席に乗り込むとホッとする。
ここからなら１５分くらいで着くはず。
ふと窓の外を見ると白いものがちらついた。
「あっ！雪」
暖冬でホワイトクリスマスは無理だと思っていた杏梨は雪を見て嬉しくなった。
続く
杏梨と雪哉の恋 完結まであと少しです。
最後までお付き合いくださいませ
モモ