「ゆきちゃん、座って?」
自分の右横をポンポンと叩く。
観光スポットなので有名な橋はライトアップされており、辺りは明るい。
数組のカップルもベンチに座ったり、歩いていたりする。
雪哉は言われたとおり、隣に座った。
「・・・彩さん、大丈夫かな・・・」
峻が言った言葉が気になっていた。
ふわっと杏梨の肩に腕が回された。
トクン・・・。
優しく引き寄せられて心臓が暴れだす。
肩に触れる腕に体温が集中しているみたいで、そこだけがやけに熱かった。
「冷たいようだけど、心配しても仕方ないんだ」
「・・・ゆきちゃん」
「それよりも・・・俺の大事な子が沈んでいるのを見るのは嫌だな・・・いつもの杏梨に戻って?」
峻くんに会うまでは楽しそうだった杏梨の笑顔が消えてしまっている。
「・・・ダメだよ」
不器用だから気持ちをすぐに入れ替えることなんて出来ない・・・。
泣きそうだよ・・・。
「あっ!」
その時、以前、峻に言った言葉を思い出した。
わたしもあの時、酷い事を峻くんに言ったんだ・・・。
ゆきちゃんが好きだから、もう会わないって・・・。
思い出して更に落ち込む。
ゆきちゃんはそれから彩さんの話をしなかった。
ぼんやり海を見ていたら、いつの間にかわたしは眠ってしまった。
眠ってしまったことに気づいたのは翌日の朝だった。
ゆきちゃんのベッドで目が覚めて、「どうして・・・?」と考えると昨日の事を思い出した。
そうだ・・・、海を見ていて・・・わたし、寝ちゃったんだ。
「はぁ~」っと、ため息を吐いた時、ドアが開いて雪哉が顔を覗かせた。
「おはよう 起きてた?朝食が出来ているよ」
朝っぱらから爽やかな笑みを浮かべるゆきちゃん。
わたしは急いでベッドから降りた。
続く
のちほど、あと1話更新します
