タクシーで白金台にある自宅へ向かっている途中、隣に座った姉貴に雪哉さんの話を聞かされていた。
もともと明るく良く話す姉貴だけど、お酒が入ったせいか饒舌(じょうぜつ)に雪哉さんの話に花を咲かせている。
30分も聞かされると適当に頷きながら眠気とたたかう始末。
「峻君ったら聞いてるの?」
「ん?あぁ」
閉じた目蓋の片方を開けて覗き込む姉を見る。
暗がりでも色白の肌に上気したピンク色の頬がきれいだと感じる。
って、なに姉貴ごときに考えているんだよ。
目と目が合うと彩がにっこり笑う。
「雪哉さんて私が今まで会った男性の中で一番素敵なのよね~ ううん 俳優さんでもっと顔の良い男性もいるけどなんか惹かれちゃうのよね~」
「はいはい 何回も言わないでいいよ」
うれしそうに話す姉を見て杏梨を思い出す。
杏梨の事を思いだすと自分の中も温かい何かに包み込まれる感覚。
可愛かったなアイツ。
化粧っけがないのにピンク色の唇。
目はネコみたいに大きく、驚く顔は我が家のネコのなつめみたいだったな。
「でも・・・雪哉さん、杏梨ちゃんの事がすごく気になるみたい」
「え?」
「妹が可愛いのね 私が峻を可愛いみたいに」
彩は雪哉が杏梨を気にかけるのは妹としてだと考えていた。
「俺が可愛い?」
「そうよ~ 峻は姉思いでカッコよくて可愛いわ~」
3歳しか違わないがもう1人いる姉より仲が良かった。
30歳になる姉は結婚して子供もいる。
「とにかく杏梨ちゃんと峻が仲良くなってうれしいわ」
にっこり笑いかけられた時、タクシーが自宅の前に停まった。
続く