その夜杏梨は自分の部屋で鏡の中の自分を見つめていた。
男の子みたい・・・。
でもそれは自分が望んだ事。
今日ゆきちゃんのオフィスで見た雑誌やタレントさんを見ると自分がすごく嫌になる。
男性恐怖症のわたしが唯一安心できるゆきちゃん。
だけどゆきちゃんの周りにはきれいな人ばかりいて・・・。
はぁーっとため息が出る。
髪の毛・・・伸ばそうかな・・・?
その時、部屋がノックされた。
「は、はいっ!」
鏡を置いてドアの方を振り返る。
「開けるよ?」
ドアが開いて雪哉は携帯電話を手にしていた。
「貴美香さんから電話だよ」
杏梨が立ち上がった所で携帯電話を渡された。
「ママ?」
『杏梨、元気でやっている?』
遠い外国に居るのにすぐ近くからの電話のようにはっきり聞こえた。
ママの声を聞いた瞬間、わたしはホームシックにかかったみたいに涙が出てきた。
「うん ママ心配しないで」
『自分の娘なんだからいつも心配しているわよ』
「わたしもママが心配だよ でも春樹おじさんがいるから安心してる」
鼻をすすらないように気をつけながら話す。
『ママも雪哉君がいてくれるから安心しているわ 何かあったら雪哉君に相談なさいね?』
「うん」
話をしている間に雪哉はいなくなっていた。
借りていた携帯電話を持ってリビングに行った。
「いない・・・部屋かな・・・」
杏梨は雪哉の部屋をノックした。
が、返事はない。
携帯電話を部屋に置いておこうとドアを開けた。
ゆきちゃんのお部屋に入るのは初めてだ・・・。
目に入ったのは部屋の中央にある大きなベッド。
テーブルに置こうとした時、奥のドアがカチャと開いた。
雪哉がバスローブ姿で現れたのだ。
「ゆ、ゆきちゃん 携帯ありがとう」
初めて見るバスローブ姿を意識してしまう。
続く