秋に紫色の花を咲かせる紫苑・・・




紫苑は源氏物語や枕草子に登場し、平安時代以前にはすでに日本に伝わっていたようです。




花言葉は「あなたを忘れない」「遠い人を想う」「追憶」などです。




10月に入り秋風が冷たく感じられる季節になると、なぜかしら物悲しくなります。




とっくの昔に終わったはずの恋をふとしたきっかけで思い出すのも秋の仕業なのでしょうか。




二度と開けまいと思っていた心の中の引き出しが開いた時、溢れ出る思い出は残酷なほど鮮明で、感触や匂いまでもが甦ります。




私はまだ若く、同じ鍵を持つことでお互いのすべてを知っている気になっていました。




くだらない嫉妬や喧嘩、若さゆえに傷つけ、傷ついたあの日々・・・。




追憶にふけって気づいたこと、それは・・・忘れたいのに忘れられないのではなく、忘れたくないだけ。




自分を見失うほどの恋愛をしたことが許せなくて封印してきたけれど、奪い合ってボロボロになるそんな恋もあの頃の私には必要だったのかもしれません。




「二十代の恋は幻想である。


三十代の恋は浮気である。


人は四十代に達して初めて真のプラトニックな恋愛を知る。」



とゲーテは言っています。




私が本当のプラトニックな恋を知るのはいつなのか・・・楽しみです(笑)












有明の月とは夜が明ける頃まで残っている月のことで暁月ともいいます。




「今来むといひしばかりに長月の有明の月の待ちいでつるかな」 素性法師




あなたが今すぐに来るというので、それを信じて秋の夜長を待ち続け、とうとう有明の月が見える時間になってしまいました




この頃は通ってくる男を女がひたすら待つ時代で当然、携帯電話もなく使いの者が文を運んでくるしか連絡方法はなかったでしょうから、来ない相手を待つ時間はそれはそれは長く感じられたはずです。




今なら・・・すぐ来ると言ったくせに何があったのか知らないけど携帯も繋がらない!結局ぶっちぎられて本当にムカつく男!って感じでしょうか(笑)




事故にでも遭ったのかしら・・・と心配しているうちはまだいいけれど、待つ女はいろんなことを考え出します。




私をほったらかしにしてでも逢いたい女が他にもいるのかと、猜疑心の塊が胸の中で渦巻いて怒りのメーターの針は振り切れんばかりです。




有明の月は儚く、日が昇ると同時に見えなくなってしまいます。




女心と秋の空・・・あんまり待たせ過ぎると貴方を想う女心はどこかに行っちゃいますよ・・・。









週末、一人でいつもの店のカウンターで飲んでいると常連さんにつかまり一緒に飲むことになった私・・・。




4人でボックス席へ移動したら、隣の席に今年の初めのブログ「真夜中のキス」の年下の彼がいた。




久しぶりに話してみたいけど、彼の隣には上司らしき男性が座っている。




隣り合うボックス席だけどベンチシートだから境目はなく、横を向けばいつでも話せるのに彼はこちらを向こうとはしない。




上司と飲んでるから仕方ないよね・・・そう思っていた時。




携帯にメールが届いていることに気がつき開いてみる・・・私の隣で知らん顔して飲んでる彼からだった。




それは年上の女をドキドキさせるには充分な言葉だった。




しばらく、至近距離で短いメールが行き交う・・・。




誰も気付いていないけど、そこには彼と私だけの空間が存在していてお互いの目を見ることも言葉を交わすこともなく会話している。




席に置かれた手の指が時々触れ、離れ、また触れる・・・。




「また飲みましょう。」 




最後のメールを送った彼は上司と席を立った。




偶然がくれたほんの短い間の出来事・・・たまにはこんなスリルな夜もいいのかもしれない。