南日本新聞からです。

 

 

なくならない猫の殺処分 「少しも苦しまないで」 動物愛護管理センターの職員は祈るように機械を動かす

配信

 

「この中に猫が入ったケージを入れて処分します」。鹿児島市動物愛護管理センター(田上町)を管理する市獣医公衆衛生協会の宮下善穗理事長が「成猫用処分機」を前に説明した。 

 

 麻酔入りの餌を準備し、ケージを処分機に設置するといった手順を踏みながら「少しでも苦しまないで、と祈るような気持ち」と明かす。職員は譲渡に向け人になれさせるための世話もしているだけに、精神的な負担は大きい。

 

  センターのほか、鹿児島県内3カ所の動物管理所で殺処分をする。主に人が飼えないほど攻撃性があったり、治る見込みのない病気になったりした猫が対象だ。 

 

 県内の猫の殺処分数(病気などの自然死を含む)は2010年度の約3000匹から19年度948匹と減り続けている。県は30年度までに自然死を除く殺処分数をゼロにする目標を掲げる。だが多頭飼育崩壊や野良猫の増えすぎなどで管理されない猫が産まれ続けると、達成するのは難しい。

 

 ■「理解不足」指摘も 

 

 「近所の猫が庭にふんをする」「無責任に餌やりしている人がいる」。殺処分が減る一方で苦情は絶えず、対策に乗り出す市町村も出てきた。

 

  薩摩川内市は19年3月、飼い方に関するガイドラインを策定。さつま町も本年度中の完成を目指す。志布志市は21年11月、飼い主がいない猫に不妊・去勢手術をする費用の一部を補助する制度の受け付けを始めた。

 

 このほか姶良、日置市などは公益財団法人「どうぶつ基金」(兵庫県)の支援を受け、手術している。県も本年度から離乳前の保護猫にミルクをやるボランティアを募るなどの事業を始めた。

 

  ただほとんどの自治体の取り組みは緒に就いたばかりで、道半ばといえる。猫問題に携わる関係者からは「職員の知識がなく、理解不足」との厳しい指摘も。飼い主が死亡した数十匹の猫を手術しないまま、外に放した職員がいたという。

 

 ■条例効果に期待

 

  かつて施設に多く収容されていた野良犬はほとんど見掛けなくなった。犬は狂犬病予防法で飼い犬の登録が義務づけられ、野良犬を捕獲できるためだ。猫の場合、飼い主を登録したり、野良猫を捕獲したりする仕組みがなく、自治体担当者は対応の難しさを訴える。 

 

 県内では、世界自然遺産に登録された奄美大島や徳之島の市町村で猫の適正飼育を定める条例制定が進む。これ以外に鹿児島市や姶良市が施行。南大隅町は昨年10月、ポイ捨て等禁止条例を改正し、みだりな給餌の禁止をうたう。町民保健課の西原舟太主事(31)は「指導の根拠となり、周知につながる」と話す。

 

 伊佐市は「猫の日」の22日に開会した市議会定例会で、飼い猫対策として、猫の不妊・去勢手術の実施など盛り込んだ条例案を提出。環境政策課の福田光一郎主査(42)は「猫による地域の生活環境問題を解決したい」と期待を込めた。