産経新聞からです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/100ec37b047cd02f10cadacbe6803afa316cb823
走れ!動物専用救急車 外出せず往診、コロナ禍で新たな需要
1/17(日) 20:30配信
アニマルドクターカーの中で岩本獣医師が往診するネコのヒメちゃん=14日、中野区(飯嶋彩希撮影)
【いきもの語り】
ワゴン車の中で、獣医師の岩本まりさん(53)がネコに聴診器を当てる。名前はヒメで、13歳の高齢だ。
「もう足腰が立たなくなってしまった。目はまだ見えてるみたい」 そう話す飼い主の70代の女性が、不安そうにヒメをなでる。ヒメは診察台の上でかすかに震え、早い呼吸を繰り返した。鳴いたり、立ち上がったりすることはほとんどなく、岩本さんが注射を打っている間もじっとしている。
今月14日夜、女性が住む中野区。車は動物専用の救急車「アニマルドクターカー」で、車内には診察台に長椅子が2つ、機器や薬剤がそろい、小さな動物病院のようだ。夜間救急を日本で初めて開始した塩田動物病院(杉並区)の塩田眞院長(73)が約20年前に導入し、現在も毎夜走り続ける。
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塩田動物病院は日中の診療とは別に、午後8時~午前3時までの夜間救急を行っている。ドクターカーは東京23区を中心に、都心寄りの埼玉県や神奈川県にまで急行する。
電話は一晩で20件に及ぶこともある。
「チョコレートを食べてしまったが、病院に行った方がいいか」
「食後に動かなくなり、震えがある」
電話に出た獣医師らが緊急性の判断を行い、事故など手術が必要な場合は、ドクターカーで行くよりも迅速に対応できる近くの夜間病院へ行くことを促す。費用は1回2万7千~4万円程度で、飼い主は料金や症状を考慮して要請するかどうかを判断できる。ドクターカーは1台のみで、乗務する獣医師も1人。一晩で実際に診療ができるのは、5件程度が限界だ。
夜間に往診する習慣がなかった動物医療の現場は、塩田さんらの長年の献身により大きく変わった。ペットの夜間救急や24時間対応の病院が増えたのは、最近のことだという。
「夜間救急の病院が増えた現在は、ドクターカーの役目は終わった」と塩田さん。
ただ、事情があって通院が難しい飼い主もいる。
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冒頭のドクターカー。女性は一軒家で独り暮らしで、同居する家族はヒメだけだ。年末からヒメの容体は悪化し、年が明けてからは毎日ドクターカーによる継続往診を要請している。女性も昨年、病を患って通院するのが困難なためだ。「高齢のペットを見てくれる病院は少ないから、助かる」と女性は話す。
「ヒメちゃんは治療を嫌がっているかも分からない。でも最後の時間を1日、1分1秒でも一緒にいたいから、できる限りをしてあげたい」
塩田さんは現在、基本的には日中の診療を担当している。夜間救急スタッフの吉田直樹さん(43)によると、コロナ禍になってからドクターカーへの問い合わせが増えたという。外出せずに往診してもらえるためで、都心では車を持たない人も多く、大型のペットを運ぶのが困難など需要は残っている。助けを求める声がある限り、塩田さんらは今後もドクターカーを走らせるつもりだ。