東京都獣医師会からです。

オランダでのミンク農場におけるヒトへの感染の報告について触れられています。

https://www.tvma.or.jp/public/2020/03/post-66.html

 

飼い主さんに向けて(新型コロナウイルスQ&A)

 

東京都獣医師会からのお知らせ

(新型コロナウイルスについて)

公益社団法人東京都獣医師会から新型コロナウイルスに関して、Q&A形式でお伝えいたします。

 

 

◆2020年5月23日時点の情報

◆2020年4月24日時点の情報

◆2020年4月8日時点の情報

◆2020年3月28日時点の情報 

◆2020年3月16日時点の情報

◆2020年2月19日時点の情報

 

 

以下、5月23日の最新情報を転載いたします。

 

 

飼い主のみなさまへ
公益社団法人 東京都獣医師会 危機管理室 感染症対策セクション
 
 
Q1.新型コロナウイルスはペット(犬や猫)に感染しますか?
 
A.新型コロナウイルス感染症の流行が拡大して以降、様々な動物への感染が報告されていますが、現時 点では、世界的に起きている新型コロナウイルス感染症の流行はヒト-ヒト感染によると考えられ ています。
 
  本会が 5 月 14 日付発出した「新型コロナウイルス感染症とペットに関する情報について」でお知 らせしたとおり、これまで、一般的な飼育環境では、新型コロナウイルスに感染した飼い主から犬 や猫へ感染した事例が数例報告されている他、動物園では大型ネコ科の展示動物への感染も確認さ れています。
 
  前報との繰り返しになりますが、2020 年 4 月 8 日には、中国での Shi J 氏らによる感染実験に より、猫から猫への感染が確認され、5 月 13 日には Halfmann 氏らが 3 組、6 頭の猫間での新型 コロナウイルス感染について、論文を発表しました。
 
これらの実験により、猫は新型コロナウイルスに感染する可能性があり、実験環境など特殊な環境 下では、猫-猫感染も起こり得ることが示されています。
 
したがって、多頭飼育崩壊状態のような密度の濃い環境下などでは、ヒトがその環境に新型コロナ ウイルスを持ち込んだ場合、ヒトから猫に感染したのち、猫間での感染が起こる他、猫たちの排せ つ物などによる環境の汚染などが起こる可能性はあると考えられます。
 
これに対策するには、適切な飼育環境の維持に努めることが重要であり、適切な飼育環境下では、 このような猫間でのクラスターが起こる可能性は極めて低いと考えます。
 
その他には、ドイツ国立動物衛生研究所 FLI(Friedrich-Loeffler-Institut)や中国で行った動物実 験により、フェレットが新型コロナウイルスに感染することも確認されています。
 
「Novel Coronavirus SARS-CoV-2: Fruit bats and ferrets are susceptible, pigs and chickens are not」02/04/2020 Press Releases https://www.fli.de/en/press/press-releases/press-singleview/novel-coronavirus-sars-cov-2-fruit-bats-and-ferrets-aresusceptible-pigs-and-chickens-are-not/
 
 
  4 月 23 日には、オランダのミンク農場でのミンクへの感染が報告されましたが、フェレットとミ ンクはどちらもイタチ科に所属していることから、フェレットと同様に、ミンクにも新型コロナウ イルスが感染するのであろうと考えられています。      その後、5 月 19 日にはミンク農場の従業員の一人に感染者がでており、ウイルスを分析した結果、 ミンクからの感染による可能性が高い、ということが報告されました。
 
これらのことから、ウイルスはミンクからも排出されていることや、ミンク-ミンク間の感染が成 立していることが分かり、また、排出されたウイルスが、ミンク牧場という(劣悪な)特殊な環境 のミンクの飼育小屋内のほこりや空気中に存在したことが確認されています。
 
オランダの国立公衆衛生環境研究所(RIVM)によると、ミンクの飼育小屋の外で収集した空気やほ こりのサンプルにウイルスの痕跡が含まれていないことが判明したことと、ミンクの感染が確認さ れた二箇所の農場周辺 400mは立ち入り制限がされていますので、ウイルスがミンクからミンクの 飼育小屋の外の人間に伝染するリスクは非常に低いとコメントしています。 
 
「New results from research into COVID-19 on mink farms」News item | 19-05-2020 https://www.government.nl/latest/news/2020/05/19/new-results-from-research-into-covid-19-on-mink-farms
 
オランダ政府広報によると、ペットが新型コロナウイルスに感染する可能性があることは知られて いますが、ペットからヒトに感染するリスクはこれまでと変わらず低く、国立公衆衛生環境研究所 (RIVM)が発信している新型コロナウイルスとペットに関連するアドバイスの内容に変更はないとし ています。
 
同様に、ドイツの国立動物衛生研究所(FLI)では、現在までに得られた情報やドイツ連邦共和国内 から家庭で適切に飼育されている状況下でのネコもフェレットも、新型コロナウイルス感染症を人 間に感染させるという報告は無いとしています。 その理由は、動物たちが人間に感染させるほどのウイルスの量や、感染経路などを持っていないか らだとされています。
 
しかし、既出の研究によると、感染源となることは可能だとされていますので、前述の通り、適切 な飼育環境を維持し、飼い主が感染した場合は可能な限りペット(特にネコとフェレット)との濃 厚接触を避けることとしています。
 
COVID-19: Recommendations for handling susceptible pet animals 15/05/2020 https://www.openagrar.de/servlets/MCRFileNodeServlet/openagrar_derivate_00029997/Empfehlung-Umgang-mit-em pfaenglichen-Haustieren_15-05-2020_en.pdf
 
 
オランダでのミンク農場におけるヒトへの感染の報告が発信された後のアメリカ疾病予防管理セン ター(Centers for Disease Control and Prevention)の情報アップデートにおいても、動物が 新型コロナウイルス感染症の拡大に重要な役割を果たすという証拠はなく、ヒトへの感染拡大に動 物が関与しているリスクは低いとしており、現時点では、本会を含め世界の多くの専門家は、伴侶 動物を日常的に検査する必要はなく、新型コロナウイルス感染症はヒトからヒトへ感染する病気で あり、ヒトからペットに感染した(ペットからウイルスが検出された)としても、さらにペットが ヒトに病気を移す可能性は低いだろうと考えています。
 
これまでの報告によると、万が一、飼い主からペットに感染した場合も、猫では2週間程度でウイ ルスが検出不可能なレベルに下がることが報告されていますので、新型コロナウイルス感染症に感 染した飼い主様のペットについても、検疫期間を設けることでウイルスは排出され、その後は通常 の生活に戻ることができます。
 
 
 今後もヒトとの接点があるペットやその他動物に関する様々な報告が行われることが予想されます が、冷静に情報を取捨選択し、落ち着いて対応くださいますようお願いいたします。
 
本会としては飼い主の方が新型コロナウイルスに感染しないことがペットを守るためにも大事であ り、適切な飼育環境を維持することが飼い主の責任であると考えております。
 
 
Q2.新型コロナウイルスはペットからヒトに感染しますか?
 
A.現時点では、ペットからヒトに感染した報告は無く、うつる可能性はほぼ無いと言えるでしょう
 
Q3.犬の散歩や運動ではどんなことに気をつければいいですか?
 
A.外出の自粛が求められている中ですが、犬の散歩や短時間の運動については続けていただいてかまわ ないでしょう。ただし、ヒトや犬が多数集まる公園などに連れていくのは避けるべきです。散歩や運 動は必ずリード(引綱)でつないで行ってください。人混みを避けたルートを選び、飼い主同士の立 ち話は避け、通行人や他の動物とは 1.8メートル程度の距離を保つようにしましょう。 ドッグランの利用はヒトや犬が集まる場所になりますので、できるだけ控えてください。 帰宅時には手洗いなどの感染対策を忘れないように励行してください。
 
 
Q4.犬や猫にも「コロナウイルス感染症」があると聞いたことがありますが、 それはヒトにうつりますか?
 
A.犬や猫にも固有のコロナウイルス感染症があります。 しかし犬猫のコロナウイルスは「種特異性」※が高いため、これまで犬猫で報告されている「コロナ ウイルス感染症」が、ヒトを含めた他の種の動物に感染したという報告はありません。 犬の場合は軽い下痢症状、猫の場合は伝染性腹膜炎を起こしますが、どちらもまれな病気です。 犬のコロナウイルス感染症が猫にうつったり、あるいは猫のコロナウイルス感染症が犬にうつった りするのは一般的ではありません。
 
ただし、私たちと動物との関わり方は時代とともに変化し、屋外で生活していた犬や猫が、同じ部 屋の中で暮らすようになり、動物との距離が非常に近くなっている今、ヒトと動物の共通感染症へ の対策として、口移しで食べ物を与えたり、同じ食器から食べたり、キスをするなどの非衛生的な 接触はしないよう心掛けることは大切です。 ※「種特異性」とは  形態あるいは機能のうえで、ある種は共通にもっているが、他の種には認められない特色。  
 
Q5.私は新型コロナウイルスに感染しました。ペット(犬猫)とどう接すればいいですか?
 
A.あなたが入院される場合は、ご家族など、他にペットの世話をしてくださる方がいらっしゃるようで したら、その方にお世話をお願いしてください。 ※ 2020.04.24「新型コロナウイルスに感染したヒトがかっているペットを預かるために知ってお きたいこと(Ver.2) 」参照
 
・自宅で療養される場合にはペットの体表にウイルスが付着しないようにするために、療養中の部屋 にペットを出入りさせないようにしてください。 また、汚染したマスクやリネン類にペットが接触しないように注意してください。
 
・ご自宅で世話することができないようでしたら、信頼できる方になるべく早くお預けする方が良い と考えます。
 
・ご家族が自宅でお世話する場合も、どなたかに預ける場合も、ペットの体表などを介して感染伝播 させないため、ペットはシャンプーすることが望ましいと考えます。
 
・シャンプーをする場合は、お湯が出る勢いを弱くして、毛に当たったお湯がご自身を含む周りに飛 び散らないよう工夫するといいでしょう。 ていねいにお湯で流したあと、シャンプーをしてください。 シャンプー後、ペットを拭いたタオルは一般的な家庭用洗剤で洗濯してください。
 
・世話する方にペットをお渡しする際には、キャリーバッグや首輪、リードなどは、0.05%に薄めた 次亜塩素酸ナトリウム液で拭いた後、塩素を拭き取るためにもう一度水拭きしてください。
 
・洗濯や消毒などの注意は以下をご参考下さい。 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000601721.pdf
 
・ペットとの別れが辛いからといっても我慢して、抱きしめたりしないよう注意してくださいね。
 
 
・他にお世話をしてくださる方がいらっしゃらず、ご自身が無症状・軽症である場合には、ご自身で お世話して頂きたいですが、ご自身から他の方に感染拡大しないように、またペットの体表などに 付着したウイルスが、他の方の感染源とならないよう注意が必要です。
 
 
Q6.飼っているペットが新型コロナウイルスに感染したのではないかと心配です。 どうすればいいですか?
 
A.ご自身が感染者でない限り、ペットへの感染を心配する必要性は少ないと考えられます。 もし、ペットへの感染が心配であるなら、人混みに連れて行かないようにし、できるだけ感染のリ スクを減らすよう注意して生活します。
 
新型コロナウイルスに感染していたヒトとペットが濃厚に接触したことが分かっていて、その後ペ ットの体調が悪くなった、という場合には、かかりつけの動物病院に電話をしてください。 ペットを動物病院に連れていく前には必ず事前に連絡を入れてください。
 
 
参考文献:OIE  Questions and Answers on the 2019 Coronavirus Disease (COVID-19) https://www.oie.int/en/scientific-expertise/specific-information-and- recommendations/questions-and-answers-on-2019novel-coronavirus/
 
 
 
この記事は 2020 年 5 月23 日時点の情報に基づいて作成しています。 今後、新しく得られた情報により、内容が更新されることがありますので、あらかじめご了承ください。 また、個別具体的な事象への判断を行うものではございません。
 
                  2020.05.23 公益社団法人東京都獣医師会 危機管理室感染症対策セクション