こちらの続きです。

 

残酷な飼育で摘発、悪名高きライオン牧場の実態

 

ライオンをあえて苦死させる戦慄の光景、南ア、ライオン牧場の闇

 

 

 

ナショナルジオグラフィックからです。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200105-00010000-nknatiogeo-m_est

 

1/5(日) 7:20配信    

ライオンを追い詰めるアジアのトラの骨人気、違法取引や密猟も助長

 

 

ライオンを追い詰めるアジアのトラの骨人気、違法取引や密猟も助長

保護された子ライオン、カルロスとイバナの理学療法を任されたジェシカ・バークハート氏。米ミネソタ大学に在籍する神経学の博士候補生だ。這っているのは子ライオンを怖がらせないため。(PHOTOGRAPH BY NICHOLE SOBECKI)

特別レポート:南アフリカ、ライオン牧場が抱える深い闇(3)

「特別レポート:南アフリカ、ライオン牧場が抱える深い闇」の最終回。当局によれば、ライオン受難の背景にはアジアのトラの骨人気が関連している。合法なライオンの骨取引が、全ての大型ネコ科動物を危険にさらしているという。

動画:ライオン牧場から保護された2頭の子ライオン、カルロスとイバナ

 ライオンの骨とトラの骨の違いを誰が見分けられる?

 10年以上前、ライオンも飼育している中国のトラ牧場を訪れた、野生生物取引を研究する活動家マイケル・ツサスロルフェス氏に、そう聞いてきた人がいるそうだ。

 この質問が、ライオンの骨が取引される理由を表している。

 野生のトラは、主に密猟や生息地の消失が原因で4000頭以下まで減少しているが、その骨はアジア、特に中国で珍重されている。虎骨(ここつ)酒は滋強剤として、また軟膏の虎骨膏は、リウマチや腰痛などに用いられる。

 1993年に、中国がトラの骨の使用を禁じると、それを機にライオンの骨の取引が始まった。「アジア人が南アフリカまで出かけてくるようになりました。そして、『ライオンを狩っているそうですが、骨はどうするつもりですか。何なら私たちが買い取りましょう』と持ち掛けたんです」

 ライオンの骨は、トラの骨の安い代替品として売られるが、時にはトラの骨と称して何も知らない客に高く売りつけられることもある。野生生物取引を監視する団体のトラフィックが、2018年に公開した報告書によると、トラの骨の方がライオンの骨よりも優れていると信じている人は多い。

 同じ年に出された南アフリカの動物保護団体EMS基金とバン・アニマル・トレーディングによる報告書では、輸出業者がライオンの骨の数を過少申告していると指摘されている。ライオン1頭分の骨の重さはおよそ9キロだが、1頭分と申告されていた輸出用のライオンの骨を10個選んで調査してみたところ、11~30キロもあったという。

ジャガーやヒョウの密猟も…

 ツサスロルフェス氏は、これに関しては単純な話かもしれないと話す。輸出業者は、腐敗しかけた肉がついたままの比較的新鮮な骨を輸出することがある。その場合、適切に乾燥させた骨よりも重くなる。

 だからと言って、密輸が全くないわけではない。ツサスロルフェス氏は、米国の輸入禁止措置がライオンの骨の違法取引を助長させてしまったのではないかと見ている。

 2019年に同氏が共同で行った調査で、牧場主にアンケートを取ったところ、一部の牧場はライオンの繁殖を減らしたりライオンを売り払ったりしたが、86の牧場主のうちの30%近くが、禁止措置のおかげで以前よりもライオンの安楽死を増やしたと回答した。また、30%が事業をライオンの骨の取引に切り替えたと答えた。

 60%以上の回答者が、輸出量を年間800頭までに制限されていることで経営が圧迫されると考え、その半分以上が、骨を売るために別の市場を探すだろうと答えている。別の市場とは、つまり違法取引だ。

 ピエニカ・ファームでは骨を売るためにライオンを飼育したり安楽死させているか尋ねたところ、ピーンズ氏は否定した。「骨? さあ、私の知る限りではないですね」。2018年の記録を見ると、ライオンの骨の輸出者リストのなかにスタインマン氏の名前はなかった。

 ライオンの骨市場についてはそれほどよく知られていないと、ツサスロルフェス氏は言う。もし南アフリカが輸出を禁じたとしても、アジアでの需要がなくなるわけではない。それどころか、野生ライオンの密猟が増えて、闇市場が繁盛するだけだ。「ただでさえ密猟が横行しているというのに、それを加速させたくはありません。この問題にはあまりに多くのことが関わっています。ここで失敗するわけにはいきません」

 ライオンの骨取引は需要を高めるだけであり、違法にすべきだとNSPCAのカレン・トレンドラー氏は主張する。ベトナムでライオンの骨を使った製品の需要が拡大しているという話もある。しかも、ライオンの骨とトラの骨はほとんど見分けがつかないため、合法なライオンの骨取引は野生のライオンとトラの両方の密猟につながっていると、トラフィックは指摘する。

 そればかりか、近年になってジャガーやヒョウの密猟までもが増加している。合法なライオンの骨取引が、すべての大型ネコ科動物を危険にさらしていると、トレンドラー氏は指摘する。トラとライオンの骨が区別できないなら、トラの骨とジャガー、ヒョウ、その他のネコ科動物の骨の違いを、誰が見分けられるだろうか?

「どこまで行ってもきりがありません」

 

子ライオンたちのその後

 4月にピエニカ・ファームで保護した2頭の子ライオンは、オールドチャペル動物クリニックに運ばれた。子ライオンは「ひどく、耐えがたい痛みで苦しんでいて、人間の赤ちゃんが泣いているような声をずっとあげていました」と、クリニックのピーター・カルドウェル氏は当時の様子を振り返る。

 1頭は脱水状態で熱を出しており、食欲もなく、死ぬ寸前だった。これまで見たネグレクトのなかで最悪のケースだった、とカルドウェル氏は言う。

 2頭はカルロスとイバナと名付けられた。彼らは母親から離されるのが早すぎたために、母乳に含まれている必須の栄養が不足したのだという。そのせいで、脳と脊髄に炎症が起きる脳髄膜炎を患っていた。すぐに手厚い治療を受け、だいぶ元気を取り戻したが、完全に健康を取り戻すことはないだろう。

 ピエニカ・ファームの弁護士であるピーンズ氏は、NSPCAが調査に入る前から、子ライオンたちはずっと獣医にかかっていたと言っている。その話を聞くと、カルドウェル氏は声を荒らげた。

「でたらめだ。絶対にでたらめだ」

 カルロスとイバナは現在、ケープタウンの郊外にある保護区にいる。彼らは一生そこで暮らすことになるだろう。飼育下で生まれ、体に障害を抱える動物を野生へ戻すことはできない。

 一方、そこまでひどい状態ではないと判断されて牧場に残されたメスの子ライオンは、私たちが取材に訪れた7月には生後6カ月になっていたが、立ち上がるのにも苦労し、足取りはふらつき、すぐにへたり込んでしまっていた。

 管理人のグリーゼル氏によると、数週間ほど前から突然こうなってしまったという。

 ピエニカ・ファームの動物を診ている獣医のひとりであるフリッツ・ラス氏に話を聞くと、NSPCAの調査が入るまで、牧場から診察の要請はなかったと言った。カルロスとイバナについては、「触れたこともありません」という。

 今は、牧場に残されたライオンたちのために全力を尽くしていると語る。

 その子ライオンはジャカランダと名付けられたが、カルロスとイバナと同じ神経系の感染症にかかっていた。原因はやはり必要な栄養素の不足か、遺伝的なものか、おそらくその両方だ。この3頭はきょうだいだ。

 ラス氏は、カルドウェル氏のクリニックのような最新設備がないため、どこまで手を尽くせるかわからないと嘆いている。

「夜も眠れないほどつらいです。私たちに、他に何ができるというのでしょうか。この問題には、根本から取り組まなければなりません」

 時々、深い闇に心が押しつぶされそうになることがあるという。

「何のためにこのかわいそうなライオンを助けて、健康にしてやるのですか。成長したら、誰かに撃ち殺されるだけだというのに。そのことはできるだけ考えないようにしているんですが」

 

 

~転載以上~

 

 

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(AFP=時事)