こちらの続きです。

 

残酷な飼育で摘発、悪名高きライオン牧場の実態

 

 

ナショナルジオグラフィックからです。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200104-00010000-nknatiogeo-m_est

 

ライオンをあえて苦死させる戦慄の光景、南ア、ライオン牧場の闇

1/4(土) 7:20配信

 

ライオンをあえて苦死させる戦慄の光景、南ア、ライオン牧場の闇

輸出前に干されるライオンの骨。(PHOTOGRAPH BY BRENT STIRTON, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

 

 

 

特別レポート:南アフリカ、ライオン牧場が抱える深い闇(2)

 

「特別レポート:南アフリカ、ライオン牧場が抱える深い闇」の2回目。100頭以上のライオンがネグレクトされていることが調査で発覚し、あるライオン牧場が摘発された。牧場のその後と、南アフリカのライオン飼育産業に潜む問題を追う。

ギャラリー:痛ましい子ライオンも、ライオン牧場の深い闇 写真15点

 摘発されたライオン牧場「ピエニカ・ファーム」に招かれた私と写真家は、ライオンにエサをやる様子を見せてもらうため、管理人のグリーゼル氏と弁護士のピーンズ氏とともにトラックの荷台に乗った。

 一緒に積まれたニワトリやウシの肉を、従業員がライオンへ向かって投げ与えている。

 南アフリカの都市プレトリアでオールドチャペル動物クリニックを経営するピーター・カルドウェル氏は、鶏肉と牛肉だけではエサとしてはまるで足りないと話す。人間と同様、ライオンもバラエティに富んだ食べ物をとらなければならず、個体によって必要な栄養も変わる。野生のライオンは、様々な動物を捕食するし、たとえばレイヨウの肉を食べた翌日にはその心臓や内臓を食べるという具合に、様々な部位を食べるものだ。

 次に私たちは、20メートル四方の2つの囲いに案内された。中にはライオンが全部で26頭入っていた。ピエニカを「有名」にしてしまったライオンたちだそうだ。

 4月の調査の際に27頭の若いライオンが皮膚病に冒されていたのは確かだが、報告されたほどひどく苦しんでいたわけではないと、ピーンズ氏は主張する。調査が入った時、ライオンたちにはビタミン剤の他に、皮膚病の薬が与えられ、殺菌消毒スプレーもかけられて、その後はずっと医師の治療も受けているという。

 立ち入り調査の後、そのうちの1頭が死んだ。解剖はされていないが、ピーンズ氏は肝不全が原因とみている。残りのライオンの皮膚病は回復したという。

 生後18カ月から2歳のそのライオンたちは、人間に慣れているようだった。うなることも歯をむき出すこともなく、フェンスの反対側にいる私のところへやってきて、大きくなりすぎたネコのように悲しそうな鳴き声を立てた。体毛は短く、はげている部分もあったが、新しい毛が生えてきている。

 取材を終えてみて、ピーンズ氏が感想を聞いてきた。ライオンは虐待されていたか? 腹を空かせていたか? 病気を持っていたか?

 そして「全体的な状態は良好です」と言った。

 

冷凍庫から出てきた死体

 

 ところが、私たちの取材の3日後、NSPCAが再び調査に入ると、私たちの時とはまるで違うものを見た。調査責任者のダグラス・ウォルター氏は、ある従業員の自宅にあった冷凍庫で20体の若いライオンとトラの死骸を発見した。他にも、冷凍部屋に子ライオンの死骸1体が入れられ、倉庫には生きた子ライオン2頭が隠されていた。2頭は、前回の調査で保護された2頭の子ライオンと同じ症状を示していた。

 動物のエサが適切に保管されているか調べようと思って冷凍庫を開けたウォルター氏は、言葉を失ったという。

 生きていた2頭の子ライオンも、安楽死させるしかなかった。冷凍された死骸については、2体を解剖に回して、現在結果を待っている。

 ピーンズ氏は、冷凍庫に死骸が入っていたことをEメールで認めたが、やましい理由からではないと主張した。死産または出産直後に死んだ赤ちゃんライオンを、はく製にするため冷凍していたという。スタインマン氏のコレクションに加えるトロフィー(狩猟の戦利品)や装飾品を作るつもりだったそうだ。

 ライオンを繁殖させているピエニカ・ファームでは、趣味の狩猟ができる。ピーンズ氏によると、狩猟用ではないライオンは動物園へ売られたり輸出されたりする。近親交配を避けるため、別のブリーダーへ売られることもある。

 ライオンの所有、繁殖、販売、輸送、狩猟、安楽死には、環境省の州担当による許可が必要だが、許可証を発行する際に、当局は動物福祉や人道的に扱われているかどうかを調査することはない。

 なぜ動物福祉が考慮されないのか環境省に問い合わせたところ、それはNSPCAと動物保護法を管轄する農業開発・土地改革省の担当だと言われた。農業開発・土地改革省に問い合わせると、今度はライオン狩りに関する問題なので、環境省に聞けと返された。環境省は、「現在動物福祉に関する規制義務はなく」、「ライオンの虐待は農業開発・土地改革省が管理する動物保護法が規制する分野だ」と、文書で説明している。

 

弱いライオン

 

 野生のライオンはかつてアフリカに広く分布していたが、今ではその分布域の94%で姿を消してしまった。大陸全体の個体数は、25年前と比較すると半分の2万5000頭以下にまで減少したとみられている。国際自然保護連合のレッドリストでは、絶滅の恐れがある危急種(vulnerable)に指定されている。

 米国で野生生物や野生生物由来の製品の輸出入を規制する魚類野生生物局は、2016年にライオンを絶滅危惧種法の保護動物に指定した。そのため、野生のライオンを仕留めたハンターがトロフィーを米国へ持ち込む際には、その狩猟によってライオンの種としての保全にどう貢献したかを証明するよう義務付けられた(輸入許可申請は個別に審査される)。

 同様の規則は、農場で仕留めた飼育ライオンにも適用されていたが、2016年に飼育ライオンの繁殖には保全効果がないと同局が判断したため、飼育ライオンのトロフィーの輸入は事実上禁じられた。

 保護団体ヒューメイン・ソサイエティによると、2005~2014年の間に南アフリカから米国へ輸出された4000個近くのライオントロフィーのうち、1539個が飼育ライオンのものだった。野生生物取引を監視する団体トラフィックの調査では、同時期に南アフリカで飼育ライオンのトロフィーを持ち帰った人の大半が米国人だったと報告されている。

「ライオンの福祉という点を評価するなら、米国の禁止措置は効果を上げていません」。英オックスフォード大学で野生生物取引を研究する南アフリカの活動家で経済学者のマイケル・ツサスロルフェス氏は言う。「牧場は貧しく、ライオンたちは満足にえさを与えられずに、安楽死させられることもあります」。トロフィーハンティングを制限すれば、ライオン牧場の経営者はライオンを飼育する目的がなくなるので、殺して骨を売ろうとする経営者も出てくるだろう。

 観光客向けやトロフィーハンティングのためのライオンは、健康で、よく世話をされているように見せなければならない。だが、骨を売るために繁殖するだけなら、「生きているときの見た目はどうでもいいのです。殺して袋に入れられれば同じことなのですから。骨の入った袋は、アジアへ輸出されます」と、保護活動家のイアン・ミックラー氏は言う。

 南アフリカは、ライオンやその他の大型ネコ科動物の体の部位を合法に輸出している数少ない国のひとつだ。輸出できるライオンの骨は、年間800頭分までと環境省によって決められていたが、2018年にそれが2倍近くの1500頭に引き上げられた。しかし、骨の取引に対する国際的な反発を受けて、後に800頭に戻された。

 家畜の食肉処理場は決められた方法で処理するよう義務付けられている。その一方で、飼育ライオンに関してはほとんど規制がないと、NSPCAのカレン・トレンドラー氏は指摘する。

 処理業者は一時的な殺処分場を作ってライオンを射殺し、死骸を処理して骨を乾燥させた後、処分場を畳んで別の牧場へ移動する。こうして次々に場所を変えるため、監視が難しくなる。「どこか1カ所にとどまっているなら、そこへ行って『これが基準だ』と言えるのですが、すべて地下に潜っているのです」

 トレンドラー氏によると、傷のない頭骨の方が高く売れるため、骨を目的に殺されるライオンには骨の損傷が少ない小口径の銃が使われる。ただ、これでは即死するとは限らない。

 NSPCA支部の上級調査官レイネット・マイヤー氏は昨年、フリーステイト州ブルームフォンテーンのワグンビージー農場で、2日間で26頭のライオンが処分されるのを目撃した。身動きが取れないほど狭い箱に閉じ込められたライオンは、耳を撃たれて殺された。眉間を狙えば即死するが、それでは頭骨の損傷が大きくなりすぎるためだ。ライオンたちは、長い時間をかけて苦しみながら死んでいったという。あたりには、血まみれの骨、皮をはいだ死骸、肉の塊、内臓が散乱していた。

 ライオンが死ぬまでの時間が「長すぎます」とマイヤー氏は言った。「見るに堪えませんでした」。マイヤー氏は、農場主のアンドレ・スタイン容疑者と管理人のヨハン・バン・ダイク容疑者の裁判で使う証拠を集めていた。

 2人は南アフリカの動物虐待に関する法律に違反したとして起訴されているが、裁判はまだ始まっていない。今は警察が捜査している段階で、目撃者が多数いるためなかなか進展がないと、マイヤー氏は語った。