日本経済新聞からです。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO22233490T11C17A0000000/?dg=1

 

「毛皮不使用」日本の化学に追い風 フェイク技術誇る

2017/10/13 17:25

 

 ファッション業界で動物の毛皮を製品に使わない動きが広がってきた。イタリアの高級ブランド「グッチ」のマルコ・ビッザーリ最高経営責任者(CEO)は11日、ロンドンで開かれた講演会で、来年から毛皮を使用しないと宣言。イタリアの「アルマーニ」や英国の「ステラ・マッカートニー」なども毛皮不使用を打ち出している。代替品として注目されるのが人工毛皮、いわゆる「フェイクファー」だが、実はこの分野、三菱ケミカルホールディングスやカネカなど日本の化学企業が高い技術力を誇っているのだ。

グッチは11日、毛皮の不使用を宣言した=ロイター

■ぬいぐるみから人工毛皮へ
 人工毛皮は一般的にアクリル繊維の「ハイパイル・ボア」とよぶ生地で作られる。輪になった繊維の先を刈り取ることでモコモコした質感を出した生地で、1990年代まではぬいぐるみの材料向けが主力用途だった。

 2000年代以降はアクリル繊維の主原料の価格が高くなったため、ぬいぐるみ向けは安価なポリエステル繊維の生地に取って代わられる。アクリル繊維の生地はその価格に見合う新領域を開拓しなければならず、それがフェイクファーだった。

 日本化学繊維協会の資料によると、12年時点のフェイクファー向けアクリル繊維の世界市場規模は約8万トンで、そのうち7割弱のシェアを日本企業が占めていた。現在は中国など海外勢に押されてシェアは低下しているもようだが、「高級ブランドに使われる品質要求基準が高い分野では引き続き日本企業の引き合いが高い」(化学大手の中堅幹部)という。

ステラ・マッカートニーの商品は、毛皮そのものに見える非毛皮素材を使っている

 三菱ケミカルでは、今春統合した三菱レイヨンで長年、アクリル繊維の生地「ファンクル」を手掛けてきた。ここ数年、欧州ブランドのアパレル向け販売が伸びており、「リアルを超える」を合言葉に技術開発にも力を入れている。繊維を断面の形をY型、UFO型、ゴーグル型などに変えることで、微妙で繊細な風合い・肌触りを実現できるようになってきたという。

 大手一角のカネカは「カネカロン」の名称でアクリル繊維の生地を展開している。人毛や獣毛のような肌触りと燃えにくいのが特徴。広報担当者は「ファッション業界全体で動物の毛皮の使用を取りやめる動きが広がっており、当社の事業にはプラスだ」と話す。また、近年はアフリカ諸国で女性が身につける付け毛の需要が高まっており、16年にはアフリカ初の営業拠点をガーナに設置。今年はマレーシアで新たな生産設備を稼働させ、販売を増やしている。

 東洋紡は子会社の日本エクスラン工業(大阪市)でアクリル繊維の生産を手がける。軽く染色しやすいといった特徴で、フェイクファー向けでは普及価格帯の製品に強い。ただ流行や気候で市況が変わりやすいことから、事業の安定に向けて医療用材料や土木資材など産業向けの用途も開拓中だ。

■フェイクがリアルを追い抜く日
 脱毛皮は、国内アパレルでも広がっている。女性に人気のあるブランドを展開するマッシュホールディングス(東京・千代田)が毛皮不使用を宣言してるほか、ファーストリテイリングのユニクロの商品もフェイクファーが基本だ。動物保護の観点が脱毛皮を進める第一の動機だが、最近はフェイクファーのファッション素材としての利点を認め、積極的にフェイクを使う動きもあり、化学各社にとっては持続的な拡大が期待できる有望市場になりつつある。

 本物の毛皮よりも高級感があるのに値段は手ごろ。染色や加工がしやすく、カラーやデザインのバリエーションが広がる――。こんなフェイクファーの評価が定着すれば、フェイク(偽)がリアル(本物)を追い抜く日がくるのかもしれない。日本の化学各社の「ものづくりの底力」の発揮しどころだ。

(石塚史人、秦野貫)

 

 

~転載以上~

 

 

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