人類は古代から神や大自然に供物を捧げる事で作物の豊穣を祈り、あるいは天変地異などの災いを鎮めようとしてきた。
人がその供物、すなわち生贄となることもしばしばであり、文化人類学に於いて供儀として研究が為されてきた。
その中で、キリスト教がキリストを生贄とした供儀の宗教であり、未だに連綿として神父やシスター、教皇が静かなる生贄として供されている事が明らかとなった。
「こんな事はもう終わりにしなければならない」・・・カトリック系幼稚園で神父さんやシスターに物言えぬ憐憫の情を覚え、大学院で研究しながらヨハネ・パウロ二世の死に接してショックを受けながら僕は心に誓っていた。
だが、同時に僕自身にその力が無いことも痛感していた。
そんな最中ES細胞や山中伸弥教授らによるiPS細胞による再生生殖医学の著しい発達が僕の諦めかけた夢を希望に変えてくれた。
再生生殖医学の発達によってES細胞やiPS細胞を元として、閉経した女性の遺伝子からなる卵子を生成して体外受精し、子児を得ることに成功する。その医術によってキリスト教に於ける生贄の儀式に終焉を告げる事が出来るだろうと確信し、僕はその希望を自分の子供に託そうと心に決めている。